SNSは時代の藻屑になるのか?

私は世代的にSNSの黎明期に多感な時期を過ごした年代で、人間関係の構築にも仕事にも今では欠かせないツールになっています。

フリーランスという不安定な働き方が成り立っているのもSNSで個人の存在が発信できるからだし、これまで多くの大手メディアに取材を頂いたのもやはりSNSでのバズがきっかけでした。最近は特にSNSの活用が叫ばれていますし、自分自身もTwitterもFacebookも大好きで(ちなみにInstagramはうまく使えません)、通知が来るとつい反射的に覗きに行ってしまうのですが

とはいえ「ここにリソースを投入しすぎるのはなんか違うな……」と最近違和感を感じ始めてきました。

端的に言うと、「SNSをめちゃくちゃ頑張っても100年後に何も残らないのではないか」ということです。

SNSの情報はうたかたの存在、人類史の中でも現代は最も非生産的な時代?

独立間もない頃にライターとして東京大学総合研究博物館の西野嘉章館長に取材させて頂いたことがあるのですが、

「人類史のなかでも、SNSに時間や労力をそそぎ込む現代は特殊な時代」

「しかし後にこの時代を振り返ったら、なにも残っていないじゃないか、ということにもなりかねない」

というお話があったのがとても印象に残っています。

「SNSは、ユーザーがそれをうたかたのものとしてしか考えていない。だからこそ気楽に利用できるという側面をもっているが、本気でそれを残そうとする人もいない」と。

http://boundbaw.com/inter-scope/articles/4

http://boundbaw.com/inter-scope/articles/5

ネットワーキングばかり続けても意味がない

SNSはその名の通りソーシャル・ネットワーキング・サービス、多くの人に手紙を届けるツールのようなもの。素晴らしいものではありますが、社会に向けてネットワーキングや発信ばかりしていても何も生まれません(SNSでの発信が大きなムーブメントになりそれがきっかけに何かが起こることはありますが、結局は具体的に形にするプロセスこそが重要です)

もしも今も名作の残っている画家や彫刻家たちが生きる時代にSNSのようなものがあり、彼らがそこに没頭・熱中していたとしたら、現代に残るような名作は生まれていたのだろうか…と考えることがあります。

インスタントに承認欲求が満たせて簡単に支持者が得られるツールがあまりにも多くあると、「ナニクソ」と創作に没頭せずほどほどのところで満足してしまっていた人もいたのではないかと。

もしゴッホがフォロワーめちゃくちゃ増えて調子に乗って、当時の大衆にウケる商業的な作品ばっかり作っていたら、というパラレルワールドを想像するとやや面白いものがあります(誰か風刺画としてそういうマンガでも書いてほしいです)

また、なんだかんだで「モノ」のパワーと情報量は偉大で、時空間を超えても普遍的に伝わる美のようなものがあると美術館や博物館に行く度に感じます。これらの耐久性と強さは、ひととき消費される情報には持てないものです。

刹那的な情報だけが毎日膨大に生産されていますが、しかしそれを有用な形でアーカイブ・保存することは意外と現実的ではないと感じます。私は一応アーティストなので、作品が収集・保管・修復され、自分の死後に残る価値のあるものが生きているうちに作れなかったら作家としての敗北で、それは「時代の藻屑になった」ということだと認識しています(人によって考え方が違う部分かと思いますが)

自分の作品を広めるためにはSNSは必須、承認欲求を満たすツールとしても麻薬的、しかしそれに没頭しすぎて価値あるものが産めなければ本末転倒なので、時代の流れに飲まれて本質を見失わないようにいなければと思います。

時代の泡として消えないSNSの使い方のケース

とはいえ現実的に現代のクリエーターにとって情報発信をすることは必須のマナーのような側面もあります。また今の時代のクリエーターがSNSを上手く使って後世に残るものを生み出すことができるケースも非常に多くあり、例えば

・無名のクリエーターでもSNSの力で人気が出ることにより活躍が広がり、ヒト・モノ・カネが集まり、死後にも残るような大作を作れる

・世界中のどこかにいる自分の作品を好む層にリーチすることが容易になり、世界中に作品を伝播できる(そして最終的に伝統のある美術館に収蔵されるケースもある)

・SNSによって才能が明らかになり、出版され、それがアーカイブされるものになる

など、成功事例は枚挙に暇がありません。SNSは「今」に特化した刹那的なツールですが、それを瞬間的に使って拡散し、集まってきたリソースをもとに確実なものを作り上げる、という使い方が今の時代のクリエーターにとって良いのだろうなと認識しています。

孤独に自分の作品を仕上げる時間とSNSでネットワーキングする時間とのバランス感覚を持ち、人生の多くの時間と労力がうたかたの藻屑として風化しないようなSNSの使い方を心がけていきたいです。

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