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部下の働き方が「役員の評価と連動」する時代の到来か

部下が休まないと役員の報酬が下がります

パナソニック・ホールディングス傘下のパナソニック・コネクトが面白い制度を4月から導入するとして話題になっている。社員に休暇を取らせないと、役員の報酬が下がるというものだ。

日経の記事を要約すると、「コネクターズ・チャレンジ・ホリデー」制度は、通常休暇とは別に取れる5日連続の休暇が対象となり、役員の業務評価と連動させることで休暇を取りやすい環境づくりを進め、取得率を高める狙いがあるという。

以前と比べて休みがとりやすくなった日本社会だが、それでも会社ごとの差が大きい。厚生労働省の『令和3年就労条件総合調査』によると、労働者1人平均年次有給休暇の取得状況は56.6%だ。この割合は企業規模と業種によってばらつきがあることがわかっている。
全体傾向として、企業規模が大きくなるほど有給休暇の取得率は上がる。そして、業種としては電気・ガスなどのインフラ系、情報通信業系、鉱業系の有給休暇の取得率が高い。反対に、宿泊・飲食サービス業、教育・学習支援サービス業、卸売・小売業の取得率は低い。
パナソニック・コネクトは、この区分で行くと「大企業」かつ「情報通信業」であるため、休暇が取りやすい区分に当てはまる。それでも、社員の休暇の取得状況に対して課題意識を持っている。

役員報酬と連動させて本気度を示す

パナソニック・コネクトの取り組みのユニークなところは、役員報酬と連動させているところだ。会社の業績が役員報酬に影響を与えることは珍しくないが、従業員の働き方が役員報酬を左右するというところに同社の本気度がうかがい知れる。

人材に関する内容が役員報酬に連動させるというと、フランス政府のダイバーシティ推進が思い出される。フランスでは思うように進捗しない管理職や経営者層の女性比率を進めるために、一定の水準を満たすことが出来ない上場企業の役員報酬を認めないという施策をとったことがある。

日本では一括りにされがちな北米と欧州の企業だが、経営に関しては大きな文化的な違いがある。(欧州内でも違いはあるが)その中でも、組織体制の違いとして大きなものが、政府からの介入度合いがある。英・仏・独は、政府や労働組合からの影響力が強く、企業経営における重要な意思決定を左右することがよくある。昨年、VWのディース前CEOが労働組合と監査役会との確執から退任になったのは記憶に新しい。経営者の進退と役員報酬は、政府や株主が経営者に意向を伝えたいときに使われることがある。

日本では、欧州ほどドラスティックに政府や労働組合が経営に介入することがないため、役員報酬に口を出すことはほとんどない。しかし、組織を変えようと本気で思った時に、外発的にしろ、内発的にしろ役員報酬によって意を示すという手段は有効だ。

特に、日本企業は働き方と組織改革で国際的な競争力を失う場面が多い。例えば、グローバル規模での人材のやり取りが増えているが、日本の特殊な組織体制と雇用慣行、働き方の慣習が、海外の人材から日本で働くことの魅力を削いでいる。また、テクノロジーの発展のスピードが早く、従来の日本企業の意思決定スピードでは対処しきれない場面も多い。

変化が求められ、経営陣が従業員のその必要性を強く認めて欲しいとき、役員報酬と連動させることは、経営陣の本気度を従業員に示すことに繋がる。パナソニック・コネクトの発揮したリーダーシップは変革の意思を示す素晴らしいビジネスケースとなるだろう。

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