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実質生涯年収を意識した教育投資と職業選択の価値観

 子供のいる世帯の家計で大きな割合を占めるのが教育費だが、その負担は年々重くなっている。日本の大学授業料は、昭和50年代と比較して国立は約15倍、私立は約4倍に高騰している。

大学の授業料が高い理由は、優秀な教員を揃えて、研究や実験に必要な設備を充実させるには多額の資金がかかること。一方で、少子化により学生の数は減少しているため、そのコストを昔よりも少人数で分担しなくてはいけないためである。 しかも、財政の困窮により、国から大学に支給される補助金は削減されていく方向にある。

そのため、親の収入によって高校卒業後の進路に差が生じている傾向は顕著で、高年収の世帯ほど大学進学率は高くなる。

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米国ではさらに教育費の高騰が深刻で、大学の授業料は年間3~5万ドル(360~600万円)という水準で、エリート大学ほど高い授業料が設定されている。そのため、学生は奨学金の他にも、ローンを組みながら学費を工面しているのが普通だ。

それでも大学進学を目指す者が減らないのは、高い学歴が有るのと無いのとでは生涯に稼げる総収入に大きな差が生じるためだが、具体的な大学選びの指標として、ビジネスの世界で活用されてきた「投資利益率(ROI:Return On Investment)」が重視されるようになっている。この数値は「College ROI」と呼ばれ、各大学卒業者の教育投資効果が分析されるようになってきている。

【College ROIによる米国大学ランキング】

ジョージタウン大学のエデュケーション&ワークフォースセンター(CEW)では、米国内にある4年制大学とコミュニティカレッジ(2年制の短期大学)の4,500校を調査して、卒業後40年間でみた教育投資効果のランキングを発表している。

この分析方法には、大学卒業後の40年間で稼げる収入の総額から、大学時代の学費、書籍代、生活費などを合算した「教育原価」を差し引いた「Net Present Value (正味現在価値:NPV)」という指標を算定した上での比較がされている。

○大学の正味現在価値(NPV)=卒業後の生涯年収-教育にかかった総費用

それによると、米私立大学の学士号は、国立大学よりも収益リターン率(ROI)が高い。また、職業訓練を目的とした2年制のコミュニティカレッジは、卒業後の10年間では高いリターン率を得られるものの、卒業後40年間のトータルでみると、4年制大学のほうが生涯年収は高くなっている。

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偏差値が高い大学ほど、卒業後には高年収を稼げる、そのために高い学費を払う、という思い込みは、必ずしも正しいわけではない。上図のランキングでは上位3校が薬剤師養成の大学となっているが、医学部はランキングに入っていない点は注目に値する。

また、スタンフォードやハーバードなどのエリート大学も、生涯年収から教育原価を差し引いた正味現在価値(NPV)でみると、突出して高い収益リターンを得ているわけではない。

進学する大学や、職業を選ぶ価値観は、年収が高い・低いだけで決まるわけではないが、教育に経済的なリターンを求めるのであれば、40年先まで成長していく見込みのある分野を狙うことが、高い生涯パフォーマンスを獲得するための条件になる。

しかし、どんな仕事でも数十年にわたり高年収を維持できる保証はないし、お金のために、好きではない(嫌いな)仕事を続けていくことは、決して幸福なことではない。 豊かな人生を送るには、情熱を注げられるものを早い段階から見つけることが重要で、「自分の好きな道」で努力を継続することが、生涯の収入源と幸福感を得るための布石となるだろう。

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