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災害により一刻も早い実現が期待される今年度補正予算

今回の被害を受けて、政府は自然災害の復旧作業に対応すべく、10月4日に開会となった臨時国会中に経済対策をまとめることが期待されます。特に経済対策の規模については、今回の豪雨や台風の復旧・復興に対して、大型の補正予算が組まれることが予想されます。

補正予算の規模を決めるうえで目安となる直近の2018年のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば+0.23%とプラスとなっていますが、より各国のインフレ率と関係が深いIMFのGDPギャップ率を見ると、依然として▲0.46%のデフレギャップが残存しています。IMFのGDPギャップを解消するのに必要な規模の経済対策を前提とすれば、2.5兆円程度の追加の経済対策規模になります。

ただし、国交省によれば、昨年の全国の水害被害額を約1.35兆円と試算しており、発生年度に打ち出された補正予算の規模は3.6兆円となっています。今年の被害総額がそれを上回る可能性があることからすると、すでに国土強靭化関係3か年緊急対策として今年度予算で1.3兆円強の予算を計上していますが、それに加えて5兆円規模の復興予算が期待されます。

メニューは、豪雨対応以外にも、台風被害や地震関連対応に加え、被災地の耐久財買い替え対策等も含まれる可能性がありますが、国土強靭化関連の歳出も追加される可能性があるでしょう。実際、民主党政権により事業が一旦中止となった後に建設事業再開となった八ッ場ダムは、今月1日に試験湛水が開始されたばかりでしたが、今回の台風19号により満水になり、被害の軽減に貢献しました。

建設技能労働者の過不足率は2014年度以降急速に不足率が縮小して以降は安定しているため、東日本大震災からアベノミクスの初期段階に比べれば、GDPの押し上げ効果は顕在化しやすい可能性があります。今後は東京五輪の建設特需の反動減が懸念されますが、この反動減の部分を今年度補正予算における景気対策によって緩和することが期待されます。

経済成長率と鉱工業生産の関係に基づけば、今年7-9月期の経済成長率が1年ぶりにマイナス成長となる可能性もありますし、2年ぶりに賃上げ率が低下に転じたこともあり、今年の実質賃金は前年比マイナスの可能性が高いです。

金融政策面から見ても、イールドカーブ・コントロールにより、安倍政権始まって以来、最も機動的な財政政策の効果が出やすい時期といえるでしょう。災害復旧・復興やインフラ投資に限らず、教育や科学技術振興、防衛関連や貧困対策等のメニューを上手く取捨選択したワイズスペンディングが必要な時期に来ていると思います。

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