
睡眠のマネジメント 〜一人ひとりにあった休息のリズムをみつけよう
お疲れさまです。uni'que若宮です。
今日は睡眠と休息のリズムについて書きたいと思います。
睡眠時間が短いと生産性や利益率が低い?
日経でこんな記事が出ていました。
日本の睡眠不足が国力をむしばんでいる。社員の睡眠時間の多寡で、企業の利益率に2ポイントの差が生じるという研究結果が出た。睡眠時間が米欧中など主要国平均より1時間近く短いことや、睡眠の「質」の低さがパワハラやミスの温床との指摘もある。睡眠不足を個人の問題と捉えず、欧米のように社会全体の課題として解決する必要がある。
「働きすぎ」や「生産性の低さ」が指摘される日本ですが、睡眠時間も国際比較すると1時間弱短いようです。そして労働生産性も一人あたり8万ドルと他の国より1段低くなっています(↓の一番上のグラフ)

そして↑の上から2番目のグラフでは睡眠時間と「利益率」が相関するというデータが示されています。
ちなみに棒グラフに「1分位」〜「5分位」までありますが、これは睡眠時間と言っても「いっぷんくらい」と読むのではなく統計的な分け方で「いちぶんい」「にぶんい」というグルーピングですのでご注意ください。長くて5分しか寝てなかったらさすがにブラックすぎますw
「相関」というだけでは、睡眠時間が長いから利益率が上がるのか、利益率がいい企業だから(ちゃんと休みが取れて)睡眠時間が取れているのか、因果的にどちらも有り得そうですが、一応記事の元ネタを調べてみたところ、
慶応大学・山本勲さんの『従業員の睡眠と企業の関係性 〜健康経営とウェルビーイングの追求〜』という研究がありました。
企業の異質性(時間不変の固有効果)を除去した後でも、 睡眠時間は利益率を⾼める効果を持つ︓睡眠時間が上位20% の企業は下位20%の企業よりもROSが1.8〜2.0程度⾼い ※ 好業績企業ほど睡眠時間が常に⻑い、という逆因果は排除
企業の異質性(時間不変の固有効果)を除去すると、睡眠の質指標は1年後の利益率を⾼める効果を持つ ※ 好業績企業ほど睡眠の質が常に⻑い、という逆因果は排除
ということで、「逆因果」を除いて分析をした上で、睡眠時間が長いと利益率が高まる、1年後の利益率向上に効いてくる、ということのようです。
働き方改革は睡眠時間に効く?
また、同レポートによると、「睡眠時間」や「睡眠の質」に寄与する要素として、
■ポジティブに効く要素
・在宅勤務
・仕事の⽬的・役割 の明確性
・企業の正社員⼥性⽐率
・有給休暇⽇数
などが挙げられています。一方ネガティブな要素としては
■ネガティブに効く要素
・企業の平均労働時間
・残業時間
・通勤時間
働く環境のウェルビーイングさが睡眠に大きく影響しているようです。(昭和型の環境ほど睡眠の時間が少なく質が低い)
とくに、「残業時間は睡眠時間を有意に短くする影響を持つ」とあり、(当たり前ですが)残業時間は睡眠時間に直接的に効いています。
このデータでは「利益率」しか上がっていませんから、もしかしたら残業が減らすと売上が減るということもあるかもしれません。売上が下がったり変わらなくても残業削減で人件費コストを圧縮できれば利益率が上がるからです。
残業を減らしたいけど、そうすると売上が下がる、あるいはそうすると給与がさがる、という理由で長時間働くことが常態化しているケースもあるかもしれません。しかし少なくとも、売上を伸ばすためにゴリ押しで働いてその結果利益率が下がっていく、というのは健全な状態ではありません。組織は徐々に疲弊し、変革する余力がない惰性的な状態に陥りますし、短期的に成果が出たとしてもメンタル面での不調や退職が増えれば結果としてHRコストが高くなってしまいます。組織の健全度を測る指標としても「睡眠時間」をKPIとしてみておくことはアリかもしれません。
睡眠を取る工夫をしてみよう
もちろん、睡眠が一律何時間ならよい、といえるかというと、個人差はありますし、個人の中でも時期によってなどのメリハリはあるでしょう。
大事なのは、その人にあったリズムで睡眠や休息が取れることではと思っています。
先程のレポートで、睡眠の質向上要因として「在宅勤務」があがっていましたが、在宅の場合、自分のタイミングで休息や睡眠を取ることができます。
僕個人でいうと、お昼を食べた後に睡眠を取れるのが理想で、昼寝ができるかどうかで午後のパフォーマンスに大きな影響があります。(オフィスではなかなか昼寝ができる場所がないのですよね…)
ただ、これもダラダラと寝過ごしてしまうとパフォーマンスが低下します。最適な時間(僕だと20分くらい)だけ寝てスッキリ起きると午後にパフォーマンスのピークを持っていけるのです。
勿論在宅とはいっても、たとえば乳幼児子育て中だったりするといつでも自分のリズムで休めるというわけではないかもしれません。ただ、それでも通勤を決まった時間にしたり休憩がしづらいオフィスの環境にいるよりは自由度が上がりますし、夫婦や家族で交代するなどのサポートもみんなが出勤しているよりは受けやすくなるでしょう。
また、在宅だと組織内コミュニケーションが低下したり、対面でのディスカッションの方が濃密にできる、ということもあるでしょうからこの辺りも上手く組み合わせていくとよいでしょう。在宅が万能ではありませんが、「その選択肢を持てている」ということが重要なのではと思います。
僕個人の感覚で言えばとりわけ、企画や資料作成など個人でのアウトプットにおいては適切な睡眠と休息が取れる在宅勤務のほうがパフォーマンスが上がる感じがあります。
いずれにしても大事なのは自分にあった睡眠や休息のリズムをみつけることです。
ピーター・ドラッカーは名著『マネジメント』にこんなふうに書いています。
人は機械ではないし、機械のように働きもしない。 一つの動作しかさせられないと著しく疲労する。 心理的な退屈だけでなく、生理的な疲労がある。 乳酸がたまり、視力が落ちる。反応が遅くムラになる。単一の作業よりも、いくつかの作業を組み合わせたほうがよく働ける。
それだけでなく、人は同じスピードとリズムで働くことに適さない。スピードとリズムを変えるとき、よく働ける。 しかも、あらゆる人にとって共通のスピード、あるべきリズムというものはない。
スピード、リズム、持続力は、人によって違う。 幼児についての研究でも、スピード、リズム、 持続のパターンは、指紋のように違うことが明らかになっている。
仕事は均一に設計しなければならないが、労働には多様性を持たせなければならない。スピード、リズム、 持続時間を変える余地を残しておかなければならない。仕事の手順も頻繁に変えなければならない。仕事にとって優れたインダストリアル・エンジニアリングであっても、人にとっては最悪のヒューマン・エンジニアリングとなる。
これまでのオフィスはこうした個体差への対応はあまりなく、組織に働き方を合わせてみんな一律の環境になりがちでした。しかしこれからは個人の働くリズムに組織が合わせていくことも重要です。
組織のウェルビーイングやサステナビリティ、中長期利益の観点からも、睡眠や休息のリズムのマネジメントがこれからのマネージャーのスキルとして重要になってくるのではないでしょうか。まずは家族やチームで、休息リズムについて話し合ってみることから始めるのもいいかもしれません。