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アルバイト人材の付加価値を高める未来店舗の輪郭

 日本でもセルフレジを中心とした無人店舗への関心が集まる中、マクドナルドは4月10日から、静岡県内の75店舗で「未来型店舗」の運用を実験的に開始している。この新業態では、店内に設置された電子メニューボードや、スマートフォンのアプリからモバイルオーダーができることに加えて、来店客のテーブルまで注文したバーガーを店員が運んで接客をする、テーブルデリバリーのサービスを行うのが特徴である。

マクドナルドでは、北米、欧州、アジアの市場において、今後の2年間で四半期毎に1000店のペースでセルフオーダーができるキオスク端末の設置を進めている。この端末では、顧客自身が注文したい商品を自由に選べるため、店員に口頭で注文するよりも客単価が高くなることが実証されている。また、同様のセルフオーダーは、顧客のスマホアプリからも行えるようにする予定だ。

マクドナルドは、キオスク端末とスマホアプリの2系統で店舗の自動化を進める一方で、これまでは行っていなかった、テーブルデリバリーや、本格的なドリップコーヒーなどに店員のリソースを使おうとしている。セルフサービス化できる部分はマシンやアプリに任せて、店員には付加価値の高いサービスを担当させることで、店全体の収益を高めていこうとする戦略である。

巷では、店舗の自動化、セルフサービス化は、人間の仕事を奪うのではないか?という心配もされているが、省力化だけを目的とした無人店舗への移行は上手くいかないとみられている。そもそも、セルフサービス端末の導入には高額の設備投資と定期的なメンテナンス費用がかかるため、アルバイトの人件費と相殺したコスト削減効果はそれほど大きくない。

顧客自身にメニューを注文してもらうのは、自分の好きな料理の組み合わせやトッピングを自由に選択してもらうことで、店側が用意したセットメニューよりも、注文単価が上昇するためである。また、注文対応にかかる時間も短縮できるため、ランチや夕方に来店が集中するピークタイムの回転率を高められるメリットもある。

その一方で、最新の設備やモバイルアプリの利用に躊躇する消費者もいるため、彼らに対する接客サポートを丁寧に行うことで、来店客数と客単価を伸ばしていこうとする経営スタイルは、マクドナルドの例に限らず、飲食チェーンが目指す未来店舗の方向性になっていくのかもしれない。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。詳細は公式サイトをご覧ください。セルフレジやセルフオーダー端末を導入した自動店舗の動向については「JNEWS LETTER 2018.12.19号」で詳しく特集しています。

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