必要となる企業への資本注入
既に新型コロナ・ウイルスの景気や消費に及ぼす影響は甚大となっています。
直近4月分の内閣府「景気ウォッチャー調査」を見ると、家計動向関連の現状判断指数(季節調整値)が7.5%ポイントとなり、それまで過去最悪だった前月の12.6%ポイントをさらに下回っています。
背景には、経済活動の自粛によって個人消費の原動力となる収入が減っていること以上に、緊急事態宣言発動により外出が抑制されたことがあります。
このため、5月以降に緊急事態宣言が解除されたことからすれば、過去最低水準を脱する可能性が高いでしょう。
実際、家計動向関連の現状判断指数(原数値)を分野別にみると、最悪なのが臨時休業を余儀なくされた「百貨店」の1.0%ポイントであり、続いて夜間営業停止を余儀なくされた「飲食関連」の1.2%ポイント、「旅行・交通関連」の1.4%ポイント、「衣料品専門店」の2.6%ポイントと続きます。
つまり、現在の消費の落ち込みは、経済活動の制限により収入が減ることもさることながら、休業や営業停止などにより支出に深刻な影響が及んでいることがわかります。
ただ、逆に考えれば、ウィルス感染の落ち着きや特効薬の普及、さらにはワクチンの実用化などにより経済活動の抑制が徐々に緩和されさえすれば、消費の戻りも期待できます。
このため、早ければ今年の夏場頃から徐々に経済活動抑制の緩和に伴い個人消費も持ち直しが期待されています。
しかし、経済活動抑制の完全な解除には2022年までかかるというような見方もあり、アフターコロナを展望すれば個人消費の構造変化を余儀なくされる可能性もあるでしょう。
こうして長期に渡って経済活動が止まると、多くの企業が資本不足に陥る事態になります。
既に米国では、事業会社への資本注入等の政策が機能していることからすれば、日本においても特に資本調達の厳しい中小企業や大企業に対する支援制度が必要といえるでしょう。
中でも中小企業向けには、地銀を通じた資本注入が現実的と言われています。
具体的には、メインバンク等を通じた公的機関の優先株引き受けや劣後ローンの買い取り等が考えられています。
公的機関が関与すれば、資本力が弱い地銀でも企業を支援しやすくなり、優先株や劣後ローンを活用すれば、公的機関や地銀がその企業の経営権を直接握ることが避けられます。
経営権を握られずに経営責任が問われなければ、自己資本が毀損した中小企業でも資本注入を受け入れやすくなるでしょう。
特に、新型コロナ・ウイルス感染症対策として、政府は民間金融機関による最長5年間返済を据え置く実質無利子融資を盛り込んでいますが、それだけでは立ち行かない企業を対象に、返済の優先順位が低い「永久劣後ローン」の実施を求める向きもあります。
こうした中、日本政府も経営難に陥った中小企業に資本注入する仕組みを作るようです。
金融機関のローン債権を政府と日銀の共同出資により設立する買取機構が買い上げるような提案もありますので、ぜひ検討してもらいたいものです。