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アマゾンと創業者ジェフ・ベゾス氏の光と影を描く新刊本『Amazon Unbound』

アマゾン・ドット・コムの創業者であるジェフ・ベゾスCEOが、同社の27年目の設立記念日にあたる来週7月5日に退任することが報じられてます。今年2月に次期CEOに指名されたクラウド部門(AWS)トップのアンディ・ジャシー氏が同日付でCEOに昇格し、ベゾス氏は取締役執行会長(エグゼクティブ・チェアマン)に就任予定であること、また、7月20日には自身が率いる宇宙開発ベンチャーの米ブルーオリジン開発のロケットによる初の有人宇宙飛行に参加することもあり、7月はベゾス氏、そしてポスト・ベゾス時代のアマゾンの今後にも注目が集まりそうです。

そんなタイミングで興味を持ったこともあり、アマゾンとベゾス氏の過去約10年の軌跡を丁寧な取材に基づいて記録し5月上旬に出版された書籍、『Amazon Unbound:Jeff Bezos and the Invention of a Global Empire』を先日読んでみました。

「Unbound」は「Unblind」( ほどく、解放する、釈放する)の過去形で、抄訳すると『アマゾンを解きほぐす:ジェフ・ベゾスと世界帝国の発明』という意味のタイトルです。本書は日本でも2014年1月に邦訳書が発売された『ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者』の著者であり、ブルームバーグ・ニュースのシニア・エグゼクティブ・エディターのブラッド・ストーン氏による前作の続編となる一冊です。

500ページ近いボリュームのある厚い本ではありますが、アマゾンが提供している電子書籍リーダーのKindle(キンドル)を利用することで、本文を読みながら分かりにくい単語には自動的に注釈付きで(Word Wise機能)読むことができました。分かりにくい文章やパラグラフに遭遇した時にはハイライトすることで自動的にグーグル翻訳で全文翻訳も可能になってます。また、長文を読むのに疲れた時にはこちらもアマゾンが提供している音声コンテンツ配信サービスであるAudible (オーディブル)を利用することで、臨場感あるナレーター(一部は著者本人)による読み上げで引っ張っていってくれました(スピードを遅くしたり、早くして視聴することも可能です)。

いずれきっと日本語版での出版もされるとは思いますが、アマゾンの今を知ることで世界で起きているビジネス、社会、働き方、法規制の現在、そして今後の未来を感じられる内容でした。また、類まれなる先見性とリーダーシップでアマゾンの時価総額を800億ドル(2010年12月31日)から1.74兆ドル(2021年6月30日)までに成長させ、個人的にも過去4年連続で世界一の富豪になったベゾス氏(約2000億ドル)の頭の中を伺い知ることができます。この間従業員数も2010年の33,700人から、食品スーパーのホールフーズの買収、倉庫や配送のスタッフの急増を受け、現在の約130万人に成長させ、世界で5番目に従業員に多い企業にまでなっていることには本当に驚かされます。

本書の内容は多岐に渡りますが、2010年上旬の早い段階からスマートスピーカーの「アマゾン・エコー」や「無人コンビニ」と言われる「アマゾン・ゴー」の開発をベゾス氏自身がビジョンを掲げ牽引している様子、インドでのeコマース市場攻略(インド政府(地元中小ビジネス)やウォルマートとの対立)、アマゾン・スタジオ、アマゾン・プライム・ビデオへの巨額投資、ホールフーズの買収、1日で荷物を届けられるようなラストワンマイルの物流配送網構築、そしてワシントン・ポスト紙の買収、広告ビジネスの近年の急成長など、目まぐるしいビジネス帝国の構築の様子が生々しく描かれています。

後半では留まるところを知らないアマゾン帝国の拡張に対し、自社が手掛けるプライベートブランド製品を優遇しているなどの理由で反トラスト法強化の必要性が指摘され、巨大IT企業に対する規制強化の機運が高まる様子など、成長がもたらした負の側面が次々に描かれます。フルフィルメントセンター(配送拠点)や配送ドライバーの労働条件に対する批判、組合化の動き、本社(HQ2)移転の候補地選びのどたばた劇などの詳細が同時並行で描かれています。また、ベゾス氏個人の「変節」に関しても、ハリウッドセレブとの交流、タブロイド紙のスキャンダルで明らかになったガールフレンドとの交際、マッケンジー元夫人との離婚、富裕層に有利な税制を利用して税金をほぼ払っていないベゾス氏個人の納税状況なども明らかにされます。

宇宙開発に関してもイーロン・マスク氏が率いるスペースXに対して事業規模、開発スピードなどにおいて遅れをとっていることで生じるライバル心、慈善活動に十分に貢献してないとして高まる批判なども詳細に描かれてます。

こうした背景を俯瞰的に眺めてみると、今この時期でベゾス氏がCEOの職を退任することを決断したことも頷けます。今後ますます強まる規制強化や労使協議などの課題の矢面には後任を任されたアンディ・ジェシー氏ら幹部が取り組み、長い時間をかけて解決にむけた議論がされることが予想されます。ただ、未来を先取りしたビジョンを掲げ、強力なリーダーシップで次々と新しいビジネスを生み出してきたベゾス氏が不在になることで、アマゾンが今後今までと同じような躍進を続けられるかどうか、多くの人が注目の眼差しで見つめています。

ベゾス氏の個人資産2000億ドルは日本円にして約22兆円。退任後のベゾス氏の宇宙開発、気候変動対策に1.1兆円を拠出し設立した「ベゾス・アース・ファンド」などの慈善活動、ワシントン・ポストオーナーなどの新たな活躍にも期待が高まります。

参照動画コンテンツ:2020年2月に放映されたPBS  Frontlineによるドキュメンタリー番組『Amazon Empire: The Rise and Reign of Jeff Bezos 』

Photo by Nicolas J Leclercq on Unsplash

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