『スーパーインテリジェンス』 の脅威は来るか?

http://bookrev.info/2018/02/1079

本日(2/14土)日経新聞に、AIの脅威論を哲学者の立場から説く、ニック・ボストロム氏の『スーパーインテリジェンス』(日本経済新聞社)に関し、東大の松尾先生が的確な書評を書かれていた。本書の特徴として、おもわず「ムキになって」人工知能研究者が反論したくなるような論点が先回りして議論されている点などが指摘されていた。

実は、先週ドバイで開催された「アラブ版ダボス会議」ともいうべき、ワールドガバメントサミットに招待され、私は「人工知能と人の幸せ」に関する講演を行ったが、著者のニック・ボストロム教授の「スーパーインテリジェンス」に関する見解も直接聞くことができた。

実は、ちょっと拍子抜けしたところがある。というのも、哲学者らしく抜けのない論理でAI脅威論を徹底してぶち上げるのかと思いきや、そうでなかった。

例えば「AIは規制すべきか」という質問に対し、発言の主旨は「規制すべきでない。AIが脅威になる可能性がある一方で、人類が直面する他の大きな沢山の脅威の解決を助ける効果が期待できる。しかし、前に進めてみないと何が起きるか分からない。ここで規制すべき理由はない」というものであった。

なんだ、私と同じ考えじゃないか。直接会ってみると、日本語版で700ページを超える大著の著者の結論はわりとバランスのある常識的なものだった(本を読んだ印象とはちょっとちがう)。

本書の特徴をさらに私が加えるとすると、「人工知能」と「哲学」という異なる分野をまたがる議論を的確なタイミングで前に進めた点につきると思う。これまでも、人工知能は哲学や生物学など単なる計算機や情報分野を超えて議論されることはあった。しかし、そもそも、2013年ごろまでは、人工知能は、実用化がなかなかうまくいかない冬の時代であり、技術の本命も明らかでなかったため、一般の人には意味のある議論はしようがなかった。2014年ごろに今回の人工知能ブームが起きるタイミングに丁度本書の準備が整っていたのは(著者によれば、その1年半前には本書は既に書かれていたとのことである)、著者が世の中の流れを的確に捉え、最高のタイミングで準備を始め、かつこの分野をまたがる議論に挑戦した点は本書を世界的な名声にした大きな要因であろう。

私にとっては、本書から得られる最も大きな洞察は、本稿の題名からははずれるが、(よくいわれることではあるが)「タイミングがすべて」である。

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