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地方復活の鍵はヴァーチャルな「場」の整備にある

ニューノーマルは対面での信頼関係の醸成を困難に

前回「対面体験は無くなることはないが、以前よりコスト高になり贅沢品となることは避けられない」という記事を書きました。政府も「Go Toキャンペーン」に多額の予算を計上し観光復活に躍起となっていますが、果たして対面=おもてなし型の観光がコロナ禍以前のように復活するのかという点には疑問が残ります。

例えば温泉地を訪問して、マスクやフェイスシールドで身を固めた従業員が客を出迎え、食事の前には消毒を徹底するといった「ニューノーマル(新常態)」を目の当たりにしたとき、以前のような観光地でのくつろぎはなかなか取り戻せないことを痛感するはずです。これは学校のような学びの場でも同様で、「学生たちが学校に戻ってくる」と期待して出迎えたものの、フィジカル・ディスタンシングを保ちながらのマスク、遮蔽板越しの交流が、Zoomなどのオンラインでのそれと比べて格段に品質が下がってしまうことに失望する関係者も少なくありません。表情や声といったコミュニケーションの手段が制約を受けてしまうと、言葉のみらならず感情の共有が難しくなり、観光や学びに欠かせない信頼関係の醸成が難しくなってしまうのです。特にその時、その場限りの交流の質が満足度を左右する観光においては致命的となります。

では解決策はないのか? わたしは映画やアニメなど物語の舞台を訪問するといったコンテンツツーリズムの構造とその変化に注目をしています。

ニューノーマル時代の「対面」を支えるオンラインでのコミュニケーション

以前の記事で北海道大学の山村高淑教授の「トライアングルモデル」を紹介しました。いわゆる聖地巡礼と呼ばれるようなファンの観光行動が起こっている地域では、地域とファン、製作者の3者が物語を核とした信頼関係に基づく関係が構築されているというのが、その基本構造です。

なぜ物語が介在すると、3者の関係は良好なものになる可能性が高まるのか? それはファンが物語に頂くグッドウィル(作品への愛)が、地域と交流する際の支えとなっているからです。例えばテレビアニメであれば現地で放送が行われていなかったり、そもそも観光に携わる人々はその作品の存在を知らないことも珍しくありません。しかも地域における交流の中心は圧倒的にオフライン・リアルな対面型のものです。SNSなどオンラインな場でバーチャルな「作品の魅力」を求めるファンとは異なる位相で両者は相まみえるわけですが、そこで幾多の困難を乗り越え作品の魅力が両者で共有されたとき、「コンテンツによる街おこし」すら可能になります。

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もちろん、バーチャルコミュニティとリアルコミュニティという「異文化交流」は必ずしも成功するとは限りません。「なんだか怪しい風体の若者が、カメラを持って街の中をウロウロしている」という警戒の段階から、物語という共通言語を両者が獲得できるかは、その担い手である製作者が適切なタイミングで仲介者・翻訳者として介在できるかにも掛かっています。

ところが、前述のとおり「対面」をコミュニケーションの主な手段におく地域のコミュニティは、ニューノーマルによって大きな制約を受けることになります。一期一会であり、しかも旬があっという間に過ぎてしまうコンテンツツーリズムの世界ではこれは大きな脅威です。研究者・関係者の間ではここのところ急速に「非接触観光」がキーワードになりつつありますが、単に接触を排除した観光のあり方を探るだけでは、地域とその地を訪れ作品からその地域のファンになる人々との関係を構築することは難しいのです。

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バーチャルコミュニティが地域やサービスの差別化要因に

地域における「対面」=オフラインでのコミュニケーションが制約を受けるなか、オンライン・バーチャルな場がファンとの最初の交点として用意されていることが重要となると筆者は考えています。前回も述べたように、これは何もVRのような「重たい」バーチャルリアリティ空間を構築せよ、という意味ではありません。例えば、コロナ禍のなか各地で急遽立ち上がった地域の飲食店のテイクアウト/デリバリー対応を一覧にしたようなホームページでさえ、その一端を担うことができると考えています。地域外からでも、その地域の活動や魅力が(従来の退屈な観光案内サイトではなく)、具体的で実用的なアプローチで紹介されていることが、ファンと地域の交流の起点となるからです。

もちろん、ただ単にその地の魅力を列挙するだけでは、他にも数多ある地域との差別化は難しいでしょう。比較検討されるオンラインという場では尚のこと独自の価値が問われることになります。そこで、「その地・その場所でしか体験できない価値」を説明する物語の果たす役割は大きく、製作者も従来以上に地域のバーチャルコミュニティの形成をコンテンツで支援することが期待されます。そうすることで引いてはツーリズムを通じたコンテンツの支持拡大にもつなげることが可能となるからです。バーチャルな場で物語コンテンツを仲介者として信頼関係の醸成を醸成するという段階を経て、ようやく(フィジカルディスタンスを保ちながら)地域のリアルなコミュニティとファンが接続されていく、という時代がこれからしばらく――新型コロナ禍の完全収束までは続いていくことになるでしょう。そしてその変化は、コストという観点から完全に元に戻るということはもはや無いと覚悟しておいたほうがよさそうです。もはやオンラインの方が、より本質的には「対面」的なのだと発想を切り替えるべきでもあると言えるでしょう。

これから数年は続く「コロナ共生時代」にあって、この構造の変化(バーチャル-リアルからバーチャル-バーチャルの接続へ)は観光・コンテンツツーリズムだけでなく、教育も含めたあらゆるサービス業での優勝劣敗の決定要因となっていくはずです。

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。





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note初心者です。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者として活動しています。詳しくはこちらで → http://atsushi-matsumoto.jp ※ヘッダー画像はうめ先生に描いて頂きました。

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