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米大統領選についてFacebookで起きていること

8月28日。午前中にはトランプ大統領が異例のホワイトハウスからの大統領指名受託演説が行われ、午後には安倍首相が辞任するというニュースが流れ、大きな時代の変化を感じる一日でした。

共和党党大会期間中の4日間、毎日政治ショーのようなイベントが開催され、トランプ大統領によるバイデン陣営を攻撃する熱狂的なスピーチの様子を見るにつけ、分断化がますます広がるのではないか、という懸念を強く感じる体験でした。

そんな中、気になったのがこちらの記事です。

『もしフェイスブックが本当の「静かな多数派」だったら?(What if Facebook is the Real 'Silent Majority'?)』と題した記事の中では、フェイスブック上で人気のある投稿を、フェイスブック社傘下の分析ツールCrowdtangle(クラウドタングル)を利用して調査したところ、フォックスニュースや右派、保守派のメディア、インフルエンサーの投稿が上位を占めている、ということが指摘されています。

現時点ではバイデン陣営が大きくリードしているものの、知り合いにトランプ支持であることを明らかにしたくない「隠れトランプ支持者」が数多く存在する可能性も指摘されてます。フェイスブック上で実際にどのような投稿を見て、いいねをし、シェアをするか、という行為の集積は、実際に有権者の考えを知る1つの手がかりになる、と語っています。

記事の著者であるケビン・ローズ氏はニューヨーク・タイムズのテクノロジー・コラムニストで、以前からテクノロジーが社会に及ぼすインパクトについての深堀りした記事を執筆しています。YouTubeを見続けることで独自のアルゴリズムに導かれ、結果ラディカルな思想を持ったり、陰謀論に"洗脳"されてしまう事象を追ったポッドキャストシリーズ『ラビット・ホール』も今春配信したことで個人的にも注目していた人物です。

ローズ氏はここ最近は毎朝クラウドタングルを利用してフェイスブックの中で人気のある投稿をまとめ、専用に作成したツイッターのアカウントで人気投稿アカウントのトップ10を公開しています。トランプ支持者が多く視聴しているFoxニュースの番組、「Fox & Friends」の他に、Ben Shapiro(ベン・シャピロ)という人物の名前が1位、3位、4位に入ってます。シャピロ氏は右翼系メディア「ブライトバート」の元編集者で、デイリーワイヤー(DailyWire)という保守系のメディアサイトの共同設立者、「The Ben Shapiro Show」 のトークショー・ホスト、政治コメンテーター、弁護士として、フェイスブック上で現在絶大な影響力を持っている人物です。

記事の中でも紹介されていますが、ベン・シャピロ氏のフェイスブックページ(いいね数は595万人)は直近30日間の間に5,600万ものやりとり(いいね、コメント、シェアなどの合計)があり、ボリュームとしてはABCニュース、NBCニュース、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、NPRの合計を凌ぐほど、とのことです。

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実際、7月にはFacebook上で最もエンゲージメントが高いニュースサイトとして、ベン・シャピロ氏が共同設立したdailywire(デイリーワイヤー) が、CNNやFoxニュース、ニューヨーク・タイムズを凌いでいることがSNS分析サービスのNewsWhip社によるデータから明らかになっています。
*Daily Wire, Conservative media surge on Facebook as Americans turn from pandemic to protests | 2020/8/26 NewsWeek  

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ちなみに最近のトランプ大統領とバイデン候補のフェイスブックのインタラクション(やりとり)の比較もクラウドタングルを利用することで閲覧が可能です。フェイスブックのいいね数はそれぞれトランプ大統領(2,896万人)、バイデン候補(251万人)と10倍以上の開きがありますが、投稿の反応に関しても9対1程度の開きがあることが分かります。

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米国ニュースサイトのAxios(アクシオス)の共同設立者であるJim VandeHei(ジム・ベンダハイ)氏と先日トランプ大統領と単独インタビューをした政治記者の Jonathan Swan(ジョナサン・スワン)氏が連名で書いた『トランプ氏はどのようにして再度の驚きをもたらすか』という8/26付けの記事も、大統領選の行方はまだ結果が分からず、4年前と同じことが繰り返される可能性があることを指摘しています。

また、フィナンシャル・タイムズのチーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーターであるギデオン・ラックマン氏も8/25付のコラムで同じ懸念を紹介しています。

4年前の大統領選を振り返った際、マイクロターゲティング広告、フェイクニュースサイトの暗躍、ケンブリッジ・アナリティカによる個人データの流出など、フェイスブックを舞台にして次々問題が生じ、あれだけ話題になっていたにも関わらず、フェイスブックの中での選挙動向はメディアを通じて伝わってないように感じます。広告の出稿状況の可視化を可能にするアド・ライブラリーの登場などを含め、4年前の教訓を活かす形で、より健全な選挙が行われることを期待しています。その為にも、フェイスブックの中で起きていることも含め、多面的に大統領選の動向も注視していきたいと思います。
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