良い模倣がマーケティング近視眼を予防する
今日は、マーケティング領域における「模倣」の可能性について書いていきます。
学ぶの語源は「真似ぶ」だと言われています。
この真似ぶ=模倣することの意味について考えていきます。
テーマ
①一流になるためには「良い模倣」ができるようになろう!
②良い模倣をするためのプロセスとは何か?
③マーケティングの世界における良い模倣とは?
模倣は一流になるためのトレーニング
まず、模倣とは何かを考えていきます。
例えば、能の世界では、有名な守・破・離という考え方があります。
①守:お手本や基本を忠実に守る
②破:お手本に自分なりの工夫を加える
③離:全く新しい自分独自のものをつくる
これは、独自のアイデアも模倣からはじまるということを教えてくれる法則です。
能の世界以外でも、模倣は一流になるためのトレーニングとして根付いています。
画家や作曲家などは、師匠の作品を模写します。
コピーライターやデザイナーなども、優れた作品を模写します。
スポーツの世界でも、例えば野球選手を志す人であればイチローの打撃フォームや走り方を模倣します。
どんな分野でも、良い手本を模倣することはトレーニングとして根付いているわけです。
つまり、全ての学びは模倣から始まります。
ビジネスの世界では、模倣はネガティブに受け取られることもあるかもしれません。
しかし、模倣することは、全ての学びの基本であり、もっと広く考えると、仕事で成果を上げるために必要なことだと考えています。
もう少し、模倣するとは何かを深掘りしていきましょう。
良い模倣の3プロセス発見→観察→考察
自分なりに「模倣」を分解すると、この3つのプロセスになると考えています。
①発見:お手本になるものを見つける
②観察:お手本の背景や構造を理解する
③考察:自分なりの意見を付け加える
良い模倣をしてください!と言われても、何をすれば良いのかわかりません。
模倣する=①発見→②観察→③考察の3ステップと考えるとわかりやすく、良い模倣をできる人が増えるのではないかと考えています。
理解しておきたいこと
・良いお手本を選べていなければ模倣はできません。
・何も考えずに対象を見ているだけだと模倣しても応用できません。
・自分なりの意見がなければ、単なる猿真似で終わってしまいます。
良い模倣とは?を考える上で、模倣と猿真似とは違うことを理解しておきましょう。
・模倣対象の背景や構造を理解する
・模倣対象に自分なりの意見を付け加える
・抽象化して応用可能な状態にする
このレベルまで模倣すると、仕事に応用できるインプットになるのではないでしょうか?
元陸上選手であり、引退後もビジネス領域で活躍されている為末さんが、模倣について面白いことを書かれています。
見えないものを模倣できるようになると、動きを抽象化して捉えそれに体を乗せることができるようになります。おそらくは中国拳法の五獣拳などは、動物の動きや性質を抽象化したものを体現するということではないかと思います。現象のみを追いかける模倣は、決してオリジナルを超えることはできません。現象の奥にあるものを抽象化して模倣できる感覚が生まれると、世の中全ての物事が動いている様が(私にとっては)走りに見えるようになりました。
“模倣”という行為の奥深さ
対象を深く理解すること、自分の感覚と向き合うこと、この2つを往復しながら自分の身体感覚や思考を磨いていくことが大切なのだと思います。
良い模倣をするためには、仕組みや原理を理解することが大前提として重要なわけです。
マーケティングトレースと模倣の3ステップ
ここからマーケティングにおける「良い模倣」について考えていきます。
マーケティングトレースは、マーケターの筋トレと名付け、良い模倣をすることをテーマとしています。
※マーケティングトレースについては紹介動画を作成しているので、こちらをご参照ください。
先ほどの、①発見→②観察→③考察の3ステップをマーケティングトレースに当てはめて考えてみましょう。
①発見:日常生活やニュースからお手本になるような事例を見つける
②観察:事例をフレームワーク活用しながら観察・分析する
③考察:自分なりの意見をを付け加え、仕事に応用できる可能性を探る
図解するとこのようなイメージです。
この3プロセスからなる模倣のトレーニングを継続すると、脳に戦略成功パターンが蓄積し、戦略立案力、企画力を大きく伸ばすことができると考えています。
例えば、お菓子のスタートアップBAKEの成功理由をトレースして、成功要因を理解しておけると、自分のマーケティングの仕事において応用をすることができます。
BAKEのマーケティングトレース動画についてはこちらです。
良い模倣はマーケティング近視眼も予防する
セオドア・レビット教授が使ったマーケティング近視眼という言葉。
事例として有名なのは、鉄道業界の衰退を表したものです。
鉄道会社
「当時自動車や航空機などの進展によって衰退へと追いやられた鉄道会社は、人や物を目的地に運ぶことと捉えず、車両を動かすことを自らの使命と定義したことが衰退の要因である。」
Wikipediaより引用
意識的に自分の外に出て学ぶ=真似ぶトレーニングを繰り返すことが、このマーケティング近視眼を予防することに繋がると考えています。
普段のマーケティング業務は、広告運用やSNSなどのチャネル最適化の仕事に偏りがちです。
目の前のタスクや成果に追われてしまい、視野が狭くなってしまっているという悩みを抱えられている方は、ぜひ「模倣」を通じて視野を広げる、戦略脳を鍛えてみてください。
模倣は、マーケティング近視眼思考を予防する意味でも有効的だと考えています。
インプットが、自分の会社と競合のことだけになると、市場を見る視野がどんどん狭くなってしまいます。
まとめ
アイザック・ニュートンは「巨人の肩の上に立つ」という名言を残しています。先人の積み重ねた発見に基づいて新しい発見をすることを説いた名言ですね。
マーケティングの世界においても、先人の積み重ねたことを模倣することが、自分たちの仕事を進化させる上で重要だと考えています。
ポイント
①模倣を発見→観察→考察の3ステップで捉える
②模倣の繰り返しが独自の発想につながる
③模倣は車輪の再発明を防ぎ、近視眼的思考を予防してくれる
最後に、ドトールの創業者である鳥羽氏の言葉をお借りして記事を閉めようと思います。
「優れた人物、優れたものがあったら、恥じることなく大いに見倣って勉強すべき」
「徹底してその人に見倣い、研究し、模倣する。その過程で個人の能力は相当高まるだろう。そして、その高まった能力によって個人のオリジナリティというものが生み出されることになると思う」
既にある成功モデルは積極的に使うこと。
ぜひ、模倣をポジティブに捉えて、自分の思考の幅を広げていきましょう。
この思考の幅を広げるトレーニングとして、マーケティングトレースを活用して頂けたら嬉しいです!
最後まで読んで頂きありがとうございました!