新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

コロナ第2波――長期戦となるイベントのDXとその実践

リアルイベントよりも成功する事例も

2月末に「イベントをDX(デジタル・トランスフォーメーション)しませんか」という趣旨の記事を書きました。

当時は年度末ということもあり「そこまで思い切らなくとも」という反発もあったのですが、一旦は収まったかに見えた新型コロナ(COVID-19)感染拡大にいま再び第2波の懸念が高まるなか、いよいよイベントのDXは緊急対応から、イベントの一つの形態として定着に向かいつつあるようにも思えます。

上記の記事では「リアルイベントの16倍の集客力」という魅力的なタイトルが目につきます。時間や場所の制約がなく、多くのイベントでリアルイベントよりも参加費を抑えたことで、これまで以上の成果を上げる例も生まれています。

一方で気軽に参加できるということは、気軽に離脱もできるということも意味しており、これまでのリアルイベントで行われていた「講演や展示でモチベーションを高めた上で、対面での商談でクロージング」といった手法も用いることができません。ゴール、すなわちイベントのアウトプット・アウトカムをどこに置くかという設計が非常に重要になってくると言えるでしょう。

オンラインだから乗り越えられた制約

いま私は、新潟県北部にある大学で「阿賀北ノベルジャム」というイベントの準備を学生達と進めています。これは、これまで関東で合宿方式で行ってきた短期間での小説創作イベントを、今度は地方で開催しこの地(新潟県北部を流れる阿賀野川周辺)を舞台にした作品を生み出す形を取ることで、地域振興にも繋げていこうというものです。

もともとは、これまでと同様に実際に現地に全国から参加者に集まってもらい、合宿での創作や各地の取材を行ってもらう想定でした。地域外の人々や、現地の若者にもなかなか共有が難しい地域の魅力を「物語」の力を借りて発信するという取り組みは、しかし一方で「3密」を凝縮したような企画で、濃厚接触不可避という内容です。

画像1

上の写真は2018年に八王子で行ったノベルジャムの模様(Photo by 川島彩水(Ayami Kawashima))です。4月~5月の緊急事態宣言、STAY HOMEの拡がりを受けて「もうこれは実施は無理かな」と諦めかけていた時期もありました。

しかし、そこに発想の転換をもたらしてくれたのは、大学でのオンライン講義とそこに参加した学生達の反応でした。特にこれまで対面授業への参加や発言に消極的であった(恐らく内省的な)学生がオンライン講義にはきちんと参加し、しっかりとしたレポートを提出することに驚かされました。

わたしの周囲だけでなく、全国のオンライン講義を実施した学校で同様の手応えを得た先生方は少なく無いはずです。小説や挿絵など創作を行う学生は対面の交流を苦手としていたり、内省的な特徴を持つことが多いのですがオンラインであれば、はじめてチームを組むような人とも上手くやり取りができるのではないかと考えたのです。

またもう1つは物理的な制約を乗り越えることができる点です。これもオンライン講義で遠隔地からゲスト講師を招聘することが圧倒的にスムーズに行なえた経験が起点となりました。

関東など都市部から新潟県の北部まで足を運んでもらおうとすると移動だけでどうしても半日はかかります。その上で、二泊三日のような合宿日程を組んでも取材と創作の両方をこなすのは非常に厳しいと頭を抱えていました。イベントをDX化し、期間を3ヶ月とすることで、この地で暮らすメンバーがその魅力や特徴を遠隔地にいるメンバーと共有しながら時間を掛けて創作をするという設計が初めて可能となりました。

アウトプット・アウトカムをどう実現するか

現在準備を進めている「阿賀北ノベルジャム」を題材に、イベントのDXが良いことづくめのように書きましたが、やはり前述のようにコミット度合いという意味では、リアルにその場に集まる熱量がそのまま再現されるとは考えにくいのも事実です。

アカデミックな世界でも、研究発表を行う学会のDX(オンライン開催)が当たり前になりつつあります。オンライン講義でツールへの習熟が進んでいることもあり、発表そのものは問題なく行われているのですが、その後の懇親会が上手くいかないという悩みがわたしのところにも寄せられるようになっています。研究発表が終わった後に立食形式で行われる懇親会は、研究者同士の交流を図る場であり、優れた発表を行った/聞いた人と話せるという一種の興奮が、コミュニティを活性化させその凝集性(一体感)を高めているのです。ところが、Zoomのような会議ツールと異なり、オンラインで懇親会を再現するツールはまだ一般的にはなっていません。

筆者はPVを貼ったRemoも実際に使ってみたのですが、懇親会(立食パーティ)でよくある「近くの人が話しているキーワードが急に耳に入ってきて、その会話の輪に加わる」「他の人と話したくなったときに飲み物や食事を採りにいくタイミングでそこから離脱する」といったリアルならではの動きが取れなくて懇親会における成果(研究発表というアウトプットから生まれるアウトカム)をこれでは得られないなと感じました。そもそも同時に話すとZoomでも互いの声が聞き取れなくなりますので、こういったある種のカオスをそのままオンラインで再現するのであれば仮想空間(VR)に場を移す必要があると考えています。

とはいえ、ここまで一足飛びにDXすると適応出来る人と出来ない人に分断されてしまいます。当面はFacebookなど従来のテキストベースのSNSにその機能の一部を担わせるなど、アウトカムのレベルを少し妥協していく他ないかなと考えています。(誰もがニュータイプにはなれないし、それを強要すると小惑星が落ちます)

「阿賀北ノベルジャム」でもあくまでコロナが収束したら、という条件付きですが優勝チームは新潟にお招きするといったことも検討中です。しかし、それよりもイベント開催期間中にオンラインで創作に真剣に取り組み、時に誤解や衝突も伴いながら作品を完成させる体験そのものが、地方と都市部の参加者の交流を濃密なものにするはずです。以前の記事で、地方にもこれからはヴァーチャルな「場」が必要だと述べましたが、このイベントがその1つのモデルを示せればと考えています。(このあたりもテーマとしたオンラインイベントを開催しますので、ご関心ある方はご参照ください)

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。





この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
18
note初心者です。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者として活動しています。詳しくはこちらで → http://atsushi-matsumoto.jp ※ヘッダー画像はうめ先生に描いて頂きました。

こちらでもピックアップされています

日経COMEMO
日経COMEMO
  • 7636本

日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

コメント (1)
NovelJam2019'グランプリ部門圧勝の我々は作家の一人は完全オンライン参加でしたよ。Chatworkが作業のメインプラットフォームでした。オンラインでのチーム運営のプロが中心にいたという要素はありますが、少なくともオンラインだからリアルに勝てないということは無いですね。

https://www.facebook.com/Noveljamkosmos/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。