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料理芸術の鑑賞対象(ハード-食器)

これまで料理芸術の鑑賞対象として、建築物の外観や内観を取り上げ、その鑑賞法を検討してきた。本稿では、実際にコースが進んでいく中で、料理そのもの以外のところで、食器の鑑賞の仕方について検討したい。

料理芸術としての陶芸

食器は、多くの場合、陶器である。陶芸は人類の最も古いテクノロジーおよび芸術形式のうちの1つであり、その歴史は古く、日本では縄文時代初期の縄文土器に由来する。世界を見渡すとさらに古く、チェコのグラヴェット文化であり紀元前29000年とされる。メソポタミア文明の先史文化であるウバイド期に轆轤が発明され、陶芸の量産が始まった。陶芸で作られたものは、陶芸「作品」と呼ばれるように、作成者=陶芸家の主張、意思が反映されたものであり、芸術の対象である。

蓋の機能的価値、情緒的価値

「Joël Robuchon」の看板メニューのひとつが、キャビアインペリアルである。私が頂いたとき、サーヴされるとガラス製の蓋がついていた。

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蓋の機能的価値としては、温度変化を緩やかにする。料理された食材の香りを閉じ込めるなどの「機能」が考えられる。一方で、この造形の豊かさに情緒的価値を、私は感じた。単に保温するためなのであれば、鍋蓋でも構わないはずだ。しかし、ガラスの蓋にすることで、料理を可視化し、蓋を開ける期待値を向上させる。そして、蓋を開ける以前にどのような香りがするのかを想起させ、客の嗅覚を鋭敏にさせる。更に、非常に大きなガラスの蓋を用意することで、豊かさと料理の上の空間の特別感を表現する。非常に考えられたプレゼンテーションである。

この蓋を開けると、キャビアインペリアルが登場する。

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キャビアの下には松葉ガニが敷き詰められている。ジュレは雲丹。フランスと日本の融合を感じられる作品で、それぞれの素材が対立することなく、皿の中での一体感、融和を感じることができる。そこにあるメッセージは「異文化の融合」「西洋的視点での日本の解釈」だろう。といったように、料理を通して料理人のメッセージを解釈する行為は、正に料理芸術の鑑賞行為と言える。

これまで「Joël Robuchon」をケースとして、建築芸術の外観、内観の鑑賞法を検討してきた。そして、コースがスタートし、陶芸芸術の鑑賞法を検討してきた。実際に料理を楽しむ、鑑賞するまでに、我々は料理以外の多くの芸術を鑑賞し、楽しむことができる。次稿以降では、付帯物(環境)のソフト面について、楽しみ方を検討していきたい。

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牧田 幸裕 名古屋商科大学ビジネススクール 教授

名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー

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日経が推す各業界キーオピニオンリーダーたちの知見をシェアします。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 はじめての方へ→ https://bit.ly/2DZV0XM 【...
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