スクリーンショット_2019-12-31_9

より大きな新規事業を生み出す「摂合」

コラボレーションと摂合の違い

「摂合」という言葉は、辞書にありません。2019年4月1日にオープンしたMistletoe of Tokyo (MoT)のコンセプトづくりに深く関わる中で生まれた造語です。Mistletoeは180を超えるベンチャーの活動を支援し、世界を良くするムーブメントを生み出すためのコレクティブインパクトコミュニティです。僕は、Mistletoeにコンテクストデザイナーとして関わっています。それぞれのベンチャーは、未来を描き、その実現のために活動しています。その活動を、弓を引きしぼり、放たれる矢のイメージで捉えてみます。

摂合

図の左側のように、本質的価値を深く深く探求することで、弓を引きしぼる力が増していきます。その力に比例して、未来を追求する力が増し、遠くの未来まで跳躍することができます。より力強さをもって未来を追求するために、それぞれのベンチャーは、それぞれに探求を深めています。

右図のように、ふたつのベンチャーが、それぞれの具体の活動の重なる領域で連携することでコラボレーションが生まれます。個別の動きでは生まれなかった、新たな探求と追求が生まれる可能性があります。しかし、重なり領域によって生み出されるそれは、個別にもとめるものほどの深みを生み出すことは難しいかもしれません。

中央図は、抽象度を上げ、ふたつのベンチャーの探求を結びつける文脈をつくる状況を表しています。それは新たな視座となり、世界の見え方に変化を生みます。そして、互いの価値基準が結びつくことで、単体で探求した価値基準から垂直に放たれる未来ではなく、斜め上の未来へと進むことができるようになります。この斜め上のベクトルにこそ、在りたい未来の実現を阻む様々な壁を突破する力があるのだと思います。

世界観とゴールデンサークル

カンブリアナイトでは世界観と、それに基づく世界設定が大切だと話しています。世界観・世界設定・具体の活動は、そのままゴールデンサークルのWHY・HOW・WHATにあたります。具体の活動レベルでの組み合わせを考えると、大喜利的に盛り上がることがあります。僕はこんなことができる。あなたはこんなことができる。一緒にやったら、こんな新しいことができそうだね! 面白そう!! そんな風に、盛り上がることがあります。しかし、そもそもの価値観が違っていたら、3年、5年、10年と、共に活動することは難しいでしょう。

世界観を共有することで生まれる関係性

新たな事業を生み出し、市場をつくり、未来を積み上げていくには、時間がかかります。壁にぶつかったときに、それを壊したり、乗り越えたり、回避したりするために、手に手を取って進む必要があります。そうした営みの中で、具体的な活動内容が変化していくことがあります。価値観を共有していれば、具体の活動が多少変わったとしても、活動目的そのものにブレが生まれないため、進むことができます。しかし、具体活動の連携によって動いている場合、その具体活動の変化は、連携する意味を失わせる場合があります。

時間軸に応じた関係性

短期的に新たな市場をつくるには、具体活動を連携させるコラボレーションが即効性をもって価値を生み出してくれそうです。一方で、価値観を連携させ、新たな視座をつくる摂合は、直近の連携は形にならないかもしれませんが、文脈レベルで連携することで、より大きなムーブメントを生み出すことができるのだと思うのです。この摂合のような動きは、コンテクストデザインであり、活動そのものの意味や意義を何倍にも高めてくれます。これは、個人でも集団でも同じことが言えます。複業として新たな活動をする上でも、企業連携により新たな活動をする上でも、この世界観を軸に、生み出す世界を設定し、その上で具体的に何をするかを考えていくという順序こそが大切だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?