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売上4倍、ドイツの気になるマンガ出版社に色々聞いてきました=「altraverse」

ドイツの新興マンガ出版社altraverseのヨアキム・カプス代表によると、今年のドイツのマンガ市場は前年から拡大しました。

という話しをこの秋に開催されたマンガファンが集まるリアルイベント「DoKomi」(デュッセルドルフ)で聞きました。

今回は、ドイツのマンガ市場や新興マンガ出版社の「altraverse」についてお伝えします。(写真は筆者にとってはひさしぶりの対面インタビューとなった「altraverse」ヨアキム・カプス氏)

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カプス氏によると、ドイツのマンガ市場は前年比で10%拡大したそうです。背景にあるのはコロナ禍によるいわゆる「巣ごもり需要」だと思われます。

日本でもテレビやプリンター販売の好調は「巣ごもり需要」にあると報じられています。

ドイツに話しを戻しましょう。

ドイツの書籍販売業界団体(Börsenverein des Deutschen Buchhandels)は、今年上半期の書籍売上における分野別の成長率を発表しています。その発表によると、マンガやコミックスが含まれるカテゴリー「児童・青年図書」は前年同期比で3.6%拡大しました。旅行書の30%減を筆頭に軒並み10%程度減少している中で「児童・青年図書」は唯一成長したカテゴリーとその存在が際立っています。

それでは「altraverse」はどうかというと、前年比400%増と驚きの数字を明かしてくれました。

といっても、同社は2017年夏に設立されたマンガ出版社です。今年になって既刊と新刊タイトルがようやく充実し売上増に貢献したとも考えられます。

カプス氏によると経営の多角化も成長に貢献しているとか。具体的には、同社が扱うマンガタイトルのグッズを製作・販売する他、ドイツのマンガ家発掘にも注力しています。

特にグッズの製作・販売といった経営戦略は、筆者の知る限り従来のドイツのマンガ出版社にはなかったものです。

筆者は過去にもこのマンガ出版社「altraverse」を取り上げたことがあります。

この白泉社からの投資を取り上げた投稿は2019年2月に書いたもの。実はその後の展開がまったく発表されていません。

この件についてもカプス氏に聞いてみました。

筆者としては白泉社の作品がドイツで集中展開されるのかと期待していたわけです。カプス氏によると、白泉社とはデジタル分野での協業を調整しておりあくまで対等な関係とのこと。つまり、「altraverse」がドイツで白泉社のマンガタイトルを積極展開したり、逆に白泉社が日本でドイツ発のマンガを販売したりといった話しではないようです。しかし、いずれにせよ協業による何かしらのシナジー効果が今後現れてくるようなそんな予感はしました。

今回は(も)ドイツの事例をお届けしました。筆者があらためて強調したいのは、日本のコンテンツがグローバルに展開するためには各国のローカルな情報の大切さです。ドイツに限らず進出先の現地情報は十分に集まっているのか、拙稿が何かしらの気付きを与えるきっかけになればと思います。


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