
金融庁の地銀予測からみる地方創生と地元企業の活性化
少し前のニュースになるが、4月11日に金融庁が地方銀行の採算に関する報告書を発表した。その結果は、地方に住む者にとって楽観できるものではなく、23県が一行であっても存続が厳しいというものであった。数年前から地方銀行の課題は指摘されてきたが、はっきりと「このままでは立ち行かないぞ」と断言されてしまうと冷や汗ものだ。
それでは地方銀行が生き残り、地方経済が活性化するためには何をしなくてはならないのだろうか。そのヒントを探るために、地方銀行の予測と地元有力企業の関係性を見ていこう。
残念ながら手元に2012年の古いデータしかなかったのだが、公開されている単体売上高の大きな3社の合計を縦軸として、金融庁で予測された地方銀行存続の3類型(青、白、赤)に道府県をわけてグラフを作成した。また、地方都市の重要な収益源である1次産業の産出額を企業売上高計の上に付け足している(緑棒、上位20道府県のみ)。
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この結果をみてみると、3500~4000億円が生き残りにかけてのボーダーであることがわかる。いくつかの例外があるものの、縦軸が3500億円を下回ると地方銀行の存続が難しくなると推察される。
また、4000億円を超えていて一行でも存続が厳しいとされている県が5つある。このことは地元の経済力が近接する都市圏に吸収されている可能性がある。また、群馬と栃木の売上高の多くはヤマダ電機(1兆9717億)とコジマ(4376億)によって占められているが、これらの企業の主要株主に地元の金融機関が入っていないことも要因の1つだろう。香川県と富山県に至っては、売上高の多くを電力会社が占めており、電力会社依存では地元経済が強まらないと考えられる。
また、たとえ地元企業の売上高が低くとも鹿児島県や福島県、山形県、熊本県、岩手県の5県は、1次産業の産出額が大きいことで、地元経済をけん引することができている。しかし、宮崎県のように1次産業の比重が大きすぎるのも問題のようである。
つまり、電力会社や近接する大都市圏の経済力に依存するのではなく、1次産業か地元の優良企業を育てることで4000億円以上の売上高を目指す必要があるだろう。既存の成長企業を探し出し地方自治体として伸ばしていくのか、もしくは若き起業家を育成して地方発メガベンチャーやユニコーン企業を狙うのか、戦略的な取り組みが地方創生に求められている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29264320R10C18A4I00000/