ダイバーシティのバージョンアップを

 ネコの能力は人間の2、3歳に相当するという。失礼な話だ。「人間の能力はネコの2、3か月くらいだ」と彼ら(ネコ)は語っているかもしれない。実際に人間はネコの言葉をほとんど理解できないし、ネコのように相手のちょっとした仕草から魂胆を見抜くこともできない。要するに、自分たちの尺度に当てはめれば相手は自分より劣るように見えるのだ。

 ダイバーシティ&インクルージョンの推進が叫ばれているが、女性の登用一つ取りあげても遅々として進まない。ILO(国際労働機関)によると管理職に占める女性の比率は、わが国の場合まだ12%(2018年度)に過ぎない。政府は2020年度に30%という目標を掲げてきたが、到達は絶対不可能な情勢だ。

 雇用にしても昇進にしても、男女差別が許されないのは当然の話である。いっぽうで、現在のシステムのなかにおいて平等化を図るだけでよいかという疑問はぬぐえない。企業の組織にしても人事制度にしても、歴史的にみると男性が中心になって考え、男性の視点から設計されたものである。そこで競争すれば、自ずと男性が有利になる可能性が高い。

 生物学や発達心理学などの研究によれば、男女の間に差があることを示す多くのデータがある(スーザン・ピンカー『なぜ女は昇進を拒むのか』早川書房、2009年 など)。だとしたら男性の視点で設計された制度のなかで平等を図ろうとしても、女性が完全に追いつくことは難しい。もしかすると、それが「ガラスの天井」の正体かもしれない。そして、かりに数字の面で対等になったとしても、女性は満足できるだろうか。

 現在のシステムのなかにおいて男女の平等、機会均等を追求することはいうまでもなく大切である。同時に、それと並行して女性の視点から、女性の価値観や特性に合うような組織や社会のシステムを設計し、取り入れていく努力も望まれる。

 同じことは性別以外の属性についても当てはまる。現在のシステムで平等や機会均等を図るのを「ダイバーシティ1.0」とするなら、「ダイバシティ2.0」は実質的な不平等が生じないよう、システムづくりに多様な視点を取り入れることではなかろうか。「ダイバーシティ1.0」だけでは限界があるということをうったえたい。

 

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「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。

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同志社大学教授。専門は組織論。個人を重視する組織・社会づくりが研究テーマ。 新刊『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書、2019/2)のほか、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『なぜ日本企業は勝てなくなったのか』(新潮選書)、『個人尊重の組織論』(中公新書)など著書は30冊余。
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