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アートシンキング再考 (1)

「デザインシンキング」再考に続き、今度は「アートシンキング(アート思考)」について、再考してみたい。といっても、「アートシンキング」は新しい概念のため、再考するほど時間は経過していないのだが。本稿では、「アートシンキング」の特徴と定義について考えてみたい。

アートシンキングの特徴

「アートシンキング」の特徴は、クリエイターのアイデア、感情などを表現することにある。表現者、創造者ありきであり、ターゲット消費者への「共感」を開発者に求める「デザインシンキング」と比較すると、問題解決に対するアプローチが真逆である。この点を説明しているのが、一橋大学の延岡教授の分類である。

「ロジカルシンキング」「デザインシンキング」「アートシンキング」を比較したとき、「ロジカルシンキング」も「デザインシンキング」も顧客の問題を明らかにするところから出発する。そういう意味で、マーケットインの思考法だと言える。一方で、「アートシンキング」は、創造者の信念、哲学が出発点にあり、顧客の問題解決が出発点にはない。したがって、プロダクトアウトの思考法だと言える。

「アートシンキング」は「デザインシンキング」の進化形ではない

巷では、新たな概念が出るたびに、旧概念を継承したもの、超えたものと言われることが多い。「アートシンキング」も同様で、「アートシンキングは、ロジカルシンキング、デザインシンキングの進化形」とか「アートシンキングはデザインシンキングを超える」などと言われることがある。全くの間違いだ

「アートシンキング」はプロダクトアウト。「ロジカルシンキング」「デザインシンキング」はマーケットイン。両者は、全く相反する対立したアプローチで、最終的には顧客に価値を提供しようとする思考法なのである。

もっともこれは珍しいことではない。消費者志向(マーケットイン)のサントリー、花王、P&Gに対し、創造者思考(プロダクトアウト)のApple、ラーメン二郎など、全く相反したアプローチで世の中に価値を提供する企業はいくらでもある。

アートシンキングの定義

このように考えると、「アートシンキング」は以下のように定義できる。

創造者の信念、哲学にこだわり抜き、

そのこだわりぬいたものを価値として創造し、表現し、

それに共鳴するターゲット顧客が感動する思考プロセスである

創造者が作り上げるものが誰もを共鳴させることは不可能なので、「アートシンキング」は特定のターゲット顧客を大いに満足させる、ポーターの基本戦略の中で「差別化」を機能させるために、非常に重要な思考法だと言えるだろう。

本稿では、「アートシンキング」の特徴と定義について検討してきた。次の稿では、「アートシンキング」と「デザインシンキング」を比較し、その違いを改めて検討していきたい。


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名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー
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