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プロファシリテーターが語る「会議4分類」~今すぐできる会議デザイン術~

 Potage代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。ファシリテーター、あるいはプログラムのプロデューサーとして、コミュニティの組織開発というプログラムを、色んな企業さん、人事部の方に提供しております。

 さてさてそのようなプログラムを提供する中で大事な要素が「心理的安全性づくり」でして、このCOMEMOでも幾度となく取り上げています。

 その「心理的安全性のあり・なし」を語るときに職場において最も身近なシチュエーションが「会議」です。様々な会社さんでヒアリングすると、やはり「会社の会議の心理的安全性が上がらない」という声はとても多いのが実情です。

この記事は大手の企業も会議の心理的安全性を上げるために様々な工夫をしていますという例です

 人事の方や現場の方にお話を伺うと「声の大きい人が仕切り出す」「そして他の人が周りに忖度して意見が言いづらい」などなどの状況が起きていて、結果、会議の場の心理的不安がどんどん増しているというのです。

 そういうわけでコミュニティづくりのノウハウを活かした「コミュニケーションづくり」のプログラムの需要は増していて、いろいろな企業で実践しています。その中では「これからのマネージャーのコミュニケーションはいわゆる対話型ですよ。ファシリテーター型ですよ」と申し上げているのですが、このような話をすると、少なくないマネージメントの方が「けど…」と口火を切って、だいたいこのような反応をされます。

 「部下、同僚の話をよく聞きなさい、というのはよくわかりました。対話は大事、それはその通りです。けど、そういう風に業務を進めていると、決められるものも決められないですよね」

 中にはちょっと意地悪な言い方でそのようなことをおっしゃるマネージャーの方もいらっしゃいます。その言葉には、次のような暗黙のメッセージが垣間見えます。

 「対話とかいちいちやっていたらスピードをあげてやらなければならない我々のような仕事ではそんな時間はございません、ちゃっちゃかやって、ちゃっちゃか決めないといけないし、回っていきません、対話なんてやってられません」

 そんなときにぼくは、マネージャーの方に、このような問いかけをすることにしています。

 「〇〇さん、おっしゃっていることはよくわかります。では伺いたいのですが、そもそも会議って4種類あるのはご存知ですか?これの使い分けできているでしょうか?」

 そう問いかけると最初は戸惑われ、そして一通り説明すると、みなさん、発言される前よりは納得感ある表情で「なるほど」とリアクションされるのです。

当原稿の下書きになったVoicyもぜひどうぞ

会議は「コミュニケーション」であるという大前提

 「4種類の会議」についてお話する前に、前提としておさえて頂きたいことがあります。それは会議は「meeting」して終わり(会って終わり)ではなくて、そこに「コミュ二ケーション」が存在していないと意味がないということです。あらゆる会議はコミュニケーションである。まずこれをおさえる必要があります。その前提が抜け落ちると、心理的安全性の高いチームなどつくることはできません。

 世の中を見渡すと、コミュニケーションのない会議はそれなりの数存在します。誰かが一方的にしゃべりまくってしまっている一方通行の会議です。それは、はっきりいえば、会議としては「論外」です。

 そして、解像度高く分類すると、このコミュニケーションには4つの種類があるのです。

1:聴くコミュニケーション

 1つ目は「聴くコミュニケーション」です。1on1がその代表格です。

 1on1を行う目的は何でしょうか?多くのマネージャーの方は「部下の悩み相談ですかね?」と答えます。それはそれで要素の1つですが、もっと根本的に大事にしたいことがあります。それは「部下の話をとにかく聴くこと」です。

 ぼくは1on1においては「聴く7 : 問い2 : フィードバック1」の比率を意識しましょうとプログラムでお伝えしています。いちばん大事なのは「答える」ことではなくて「聴くコミュニケーション」なのです。そこで何かを決める必要は必ずしもありません。決めるのは1on1の相手なので、彼や彼女にゆだねればいいのです。

 だから1on1で対話づくりを大事にしましょうという話をするときに「決まるものも決まらない」という反論を持ち出すのは筋違いということになります。決めるための場ではないですから。

2:知るコミュニケーション

 2つ目は「知るコミュニケーション」。メンバーの考えていること、見聞きしていること、価値観を知るためのコミュニケーションです。

 典型例は「飲み会」です。お酒などを飲みながら、日頃感じていることを発散したり、日頃抱えている自分の価値観をお伝えしたり、お酒の勢いを借りながら自分自身のバックグラウンドを語る。この「飲みにケーション」と呼ばれるコミュニケーションは古来より機能していて、コロナ以前は職場の関係づくりに大きく貢献していました。

「知るコミュニケーション」はつまり「価値観を知るためのコミュニケーション」です。別に飲み会でやる必要はないのですが、このコミュニケーションが存在しないと、心理的安全性の高い組織はつくれません。

 相互理解を深める上で大事な要素に、個々人が持っている価値観=「価値基準」と個々人が見聞きしてきた情報=「インプット」の2つがあります。この2つが擦り合わないとお互いの考えている判断のすり合わせができませんし、すり合わせる中で徐々に組織の「心理的安全性」は育まれていきます。それぞれのメンバーが何を基準にして物事を判断しているかを共有していかないことには、いいチームは生まれないのです。

3:生むコミュニケーション

 3つ目は「生むコミュニケーション」。新しいアイデアを生み出すコラボレーションのことです。

 例えば、なかなか事業のアイデアが浮かばなかったり、仕事でつまっているときに多くの方が行う「ブレインストーミング」はこの「生むコミュニケーション」に該当します。いわゆる「Yes, and…」という言葉に代表される、発散型のコミュニケーションです。

 「生むコミュニケーション」においては、みんなでアイディアを出しまくるために、相手のいうことを否定せず、批評せず、非難せず、とにかく肯定的に受け入れ続けることで、それぞれのアイディアの数をどんどん出していくというのが大事になります。

 また、ぼくは様々なイベントで、有識者や、あるジャンルのスペシャリストと対談形式やパネルトークでお話をすることが多いのですが、そういう対話も「生むコミュニケーション」の一種です。このような有識者との対話のゴールは、お互いに刺激を与え合うことで、それぞれにとっての新しい発想に導いていくことであり、双発的な新しいアイディアを生むためのコミュニケーションの典型なのです。

4:決めるコミュニケーション

 そして、最後4つめにようやくやってくるのが「決めるコミュニケーション」なのです。先ほど、マネージャーの方が言っていた「決めるための会議」がこれに当たります。

 いろいろな相手の話を聞き、お互いのバックグラウンドも知り、アイディアを生むための発散もし、その上で最後の仕上げとしてやることが「まとめ」「決める」「収束」するためのコミュニケーションです。組織づくりにおいては、「決める」ことは、最後の仕上げなのです。

コミュニケーションのポートフォリオをつくろう

 チームを運営するこれからのマネージャーは、この4つのコミュニケーションを上手に使い分け、うまいこと配分していきながら、組織のコミュニケーションを設計していく必要があるというのがぼくの考え方です。

 大事なのは「この会議はどのコミュニケーションを中心で進めるのか」をまず意識して臨むことです。「聴くコミュニケーション」の会なのか「生むコミュニケーション」の会なのか、それによって運営はまったく変わってきます。

 すべての会議体において「決めるコミュニケーション」を持ち込む必要はありません。「この場では決めなくていい」というスタンスでアイディアを発散させる場があっていいし、お互いの価値観を知るためだけの場があってもいいし、聴くためだけの1on1の場があってもいい。4つのコミュニケーションを念頭に置いた上で、コミュニケーションのポートフォリオとでも言うべき、それぞれのバランスを意識した会議体の設定が必要になるのです。

 今はどのコミュニケーションをやって、別の場所でどのコミュニケーションを設定するのかを考えたり、与えられた時間枠の中でこの4つのコミュニケーションを網羅するのか、どれからのコミュニケーションに特化するのか、しっかりと考えつつ、つながりづくりをデザインしていくことがとても大事です。

 それがうまく設計できて、丁寧に進行できれば、大概の会議はうまくいきます。明確に目的にそったコミュニケーションを設計してファシリテーションしていけば、おのずといい対話が生まれますし、それがファシリテーターの腕の見せ所でもあるのです。

 どれだけ、これら「4つのコミュニケーション」を意識でいているのか、そもそも会議は「コミュニケーション」だとちゃんと認識できているのか、そこをしっかり確認して臨むことが、会議を生きた場にするために、とても重要なのではないかと考えています。

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※編集協力 横田真弓(THE MODERATORS & FACILITATORS受講生)

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