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村上春樹が発見した「空気を読む」の英訳とは?

先日、村上春樹さんのラジオを聴いていると、ようやく「空気を読む」にピッタリの英語訳を発見したと喜んでいた。

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僕の素朴な疑問。これはつい最近になって解消された僕の疑問です。「空気が読めない」って言いますよね。でもそれを英語に訳すとどうなるのかなと、ずっと考えていたんです。いろんな辞書を引いてもなかなかそれらしきものが出てきません。でも、このあいだニューヨーク・タイムズ日曜版を読んでいたら、それにぴったりの訳語がみつかって、積年の疑問がすっと消えました。「空気を読む」は、英語だと「read the room」って言うんです。部屋を読む=空気を読む、雰囲気が似てますよね。ほとんどの辞書には出ていませんので、英語に興味のある方はぜひチェックしておいてください。「空気を読み損なう」はfail to read the roomです。村上の英語講座でした。

ラジオ「村上RADIO」(東京FM)より
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たしかに普段、ミーティングルームで一緒にいる人たちの雰囲気や状況を推し計っている自分がいることを考えると、「部屋を読む(read the room)」という行為はスッと腹に落ちる。

手前味噌にはなるが、鎌倉にオープンしたコワーキングスペースが、国際的な空間デザインのアワード「FRAME AWARD 2019」の「コワーキングスペース・オブ・ザ・イヤー」部門の最優秀候補としてノミネートされた。世界中でコワーキングスペースが毎日のように立ち上がっていることを考えても、日本を代表するオフィス空間として選出されたことがとても名誉なことである。そして、この場所はまさに「空気を読むためのデザイン」が施された空間だ。

築90年に近い日本家屋を改装したオフィスには現在20組ぐらいが入居する。業務への集中と入居者同士の交流を自らで設計できるようにエリアを配し、「緊張と緩和」がこのオフィスのコンセプトにもなっている。入居者それぞれが空気を読みながら、自分の居心地のよい場所を探し、そこで気ままに働くことができるのがこの場所の特徴だ。畳に上がる和室の室はガラス張りになっているので、誰がどんなメンバーでミーティングしていることも一目瞭然だし、デスクが置かれている執務エリアもソファが置かれているリビングエリアも仕切り壁がないので、誰がいま何をしているのかを一瞬で把握することができる。壁に閉ざされた空間は、トイレとメディテーションルームぐらいだ。間仕切りがなくても、距離がある種の壁となってくれている。それぞれが空気を読むので、ルールを作らずとも、入居者間で自然とマナーも生まれてくる。

日本人は”空気を読む”のが得意だとされて、同調圧力も生み出しやすいお国柄だ。最近では「忖度」という言葉となってその姿を現した。みんながこう言ってるんだから、あの人がああ言ってるだから、と”みんな””あの人”という共同幻想に取り憑かれてしまう。世の中の空気というものについつい支配されてしまう。

だが一方で、”空気を読む”こと自体、人が身につけた能力の一つではある。空気の正体を考察した『「空気」の研究』(山本七平・著/文藝春秋)では、空気の正体についてこう書かれている。
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非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ「判断の基準」であり、それに抵抗する者を異端として、「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力をもつ超能力であることは明らかである。
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なるほど。超能力とはうまく言ったものである。日本人は「空気を読む」超能力をもった民族なのかもしれない。

今回、国際的な舞台で”空気を読むデザイン”にスポットライトが当たったことは、僕らがこれからのオフィスや社会を作っていく上でも自信につながる。その超能力をうまく活用して、世界に蔓延する”Yes or No”の二項対立、分断化される空気をなんとかできないものだろうか。Read the room。Make the room。必要なのは"Yes & No"だ。しばらく”部屋”から世界を変えていく試みを続けていこうと思う。

北条SANCI(ほうじょうさんち)@神奈川県鎌倉市(住所非公開)


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横石 崇(Tokyo Work Design Week...

&Co.代表取締役。国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表。「六本木未来大学」講師を務めるなど年間100以上の講演やセミナーを実施。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」支配人。著書に「これからの僕らの働き方 」(早川書房)

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