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自宅環境で異なるサラリーマン在宅勤務の格差実態

 コロナ禍で外出自粛が求められる米国でも、在宅勤務ができる労働者は全体の3割程度とみられ、残り7割の人は感染のリスクを抱きながらも、従来通りの通勤をしているのが実情である。これは、職種によっては在宅勤務が難しいこともあるが、同じ会社の中でも、リモート組と通勤組に分かれているケースが多く、雇用格差の新たな火種になりつつある。

米国で2017~2018年にかけて在宅勤務の就業者に支払われた賃金を集計したデータ(米国労働統計局)によると、在宅勤務を実現している者の割合は、賃金水準で上位25%の層が、下位25%の層と比較して6倍以上高い。学歴別にみても、高卒者よりも大卒者のほうが、在宅勤務ができる割合は7倍以上高く、非正社員の在宅勤務率は非正社員よりも低い。

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これらのデータに基づくと、サラリーマンとして在宅勤務の権利を得るには、大卒で正社員として大企業に勤め、上位25%のグループに入る必要がある。

また、米国では各世帯によってインターネット回線の環境にも格差がある。シンクタンク、Pew Research Centerのレポートによると、年収が75,000ドル以上の世帯では90%が、25メガビット/秒以上のダウンロード速度がある高速回線を持つのに対して、年収30,000ドル未満の世帯では、56%となっている。

現在では、米国民(成人)の81%がネットにアクセスできるスマートフォンを所有しているが、自宅の高速ネット回線については普及率が73%と、スマートフォンよりも下がる。また、所得と学歴レベルの低い世帯ほど「スマートフォンのみ」でネットにアクセスする割合は高くなり、この傾向はデスクトップやノートPCの所有率とも相関している。

PCと高速ネット回線の環境を持たない世帯では、仕事に関する情報収集能力に劣ることを、同レポートでは指摘しており、それが在宅勤務の職を得られるか否かの格差にも繋がってくる。PCと高速ネット回線の所有状況は、年齢層よりも、学歴や所得層によって差が開いている。

10年程前からスマートフォンの普及率は上昇して、モバイルファーストのネット環境へと時代は変化しているが、所得との関係でみると「スマートフォンしかネットのアクセス環境が無い世帯」は、現代では貧困層の特徴になっている。リモートワークの時代には、再び自宅のPC環境を充実させることに注目が集まるだろう。

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ただし、在宅勤務の必要性に迫られて、自宅用のPCを購入したり、高速ネット回線を導入したからといって、誰もが高年収を稼げるわけではない。リモートワークの成功者は、仕事に必要な自宅環境の整備を「先行投資」と考えており、他人よりも早く、充実した環境を整えることで、情報収集やスキルアップの能力を高めている。

彼らが次に注力しているのは「ホームオフィスへの投資」で、家庭のノイズに邪魔されることなく、仕事ができる仕事専用の個室を持つことが、コロナ後のリモートワーカーにとっての必須環境となりつつある。

家でテレワークするため防音室の設置を検討する人も増えている。防音設備メーカーの幸昭(静岡県富士市)は個人や工務店からの問い合わせが4月は前年同月比で2割増、5月はほぼ倍増した。自宅では「生活騒音が気になって集中できない」と、新築やリフォームを機に検討する人が多い。同社の防音室は自宅で楽器を練習したい人などに販売。防音ドアのほか屋根や天井に吸音材をつけるため、4畳半の部屋で工事費を含め100万円程度かかる。(日経新聞 2020/6/1)

米国でも、通勤型から週5日のフルリモートワークに移行したいサラリーマンの中で、自宅のホームオフィス・リフォームが流行り始めている。約13平米(およそ8畳)の個室を作り、電気工事、エアコンの設置、デスクやチェアなども揃えると、リフォームの平均予算は28,000ドル(約300万円)と言われている。これを、リモートワークの先行投資額として高いとみるか、安いとみるかは、人ぞれぞれだが、在宅勤務で相応の年収を稼ぐことを目標にするのであれば、数年で元を取れる計算になる。

サラリーマンといえども、在宅勤務のワークスタイルを築くには、自己負担による設備投資が必要になり、会社からすべての環境を支給されて、労力のみを提供してきた従来の働き方とは、発想転換をしていく必要がありそうだ。

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