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新日本プロレスと同じくブシロード傘下となった女子プロレス団体スターダムのロッシー小川代表に学ぶスポーツビジネス戦略!:日経電子版ストーリー『プロレス経営学』連載バックステージ

連載では語りきれなかった話を日経COMEMOで公開!

10/7(月)〜10/11(金)に日経電子版にて、プロレスをビジネスの観点から分析する『プロレス経営学』を掲載。構成上泣く泣く割愛してしまったエピソードをプロレスにちなみ「バックステージコメント」として日経COMEMOで紹介いたします!

10月17日の発表で、12月1日付で新日本プロレスと同じくブシロード傘下となることが発表され、話題沸騰中の女子プロレス団体スターダム。そのビジネス戦略を代表であるロッシー小川さんに伺いました!(インタビューは買収発表前の2019.9.11に行いました)

ロッシーさんは専属カメラマンとして全日本女子プロレスに入社、クラッシュギャルズのマネージャーとして女子プロの黄金時代を作った1人。2011年には女子プロ団体「スターダム」を旗揚げし、急成長させています。同団体は米WWEに移籍した宝城カイリ(現:カイリ・セイン)選手、紫雷イオ選手を輩出するなど、世界的にも注目を集めています。

関連するブシロードの発表はこちらです
■当社連結子会社による女子プロレス事業の譲受に関するお知らせ
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/bycars/

■当社連結子会社の商号変更に関するお知らせ
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/bycart/

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--------以下インタビュー本文--------

Q.プロレス団体の男女別、男女混合の文化差について

日本は女子と男子が別、米国は男女が混合です。世界的にみても日本だけが男女別でやっているとも言えます。(日本プロレス開祖の)力道山氏が相撲界出身で、相撲は男子と女子を混ぜるような発想がないという歴史的背景があるかもしれません。

しかし、今後は日本の大きな団体も男女一緒にやる可能性はあると思います。新日本プロレスのMGS(マディソンスクエアガーデン)大会は米国の団体・ROHの主催なので、女子の試合が組まれましたが、結果として新日本プロレスの選手とスターダムの女子選手が同じ興行の同じリングに上がるという実績を作れました※。それによってファンの交流も起きるし、今後に影響していくと思います。

※新日本プロレスのNYのMSGで行った大会では、ROHのベルト保有者だったスターダム所属の岩谷麻優選手が登場した。

Q.グローバル戦略と現在位置について

今年の春にNYで現地興行を行いました。ツイッター発信とWEB販売だけでチケットは完売(700枚程)して、手応えを感じました。ただ海外興行は1000人以上の会場でやらないと採算は取れませんし、まだそれを回せるほどのスタッフが足りていません。

レギュラー展開しようと思ったらもっと母体を大きくしないといけないと思います。今海外にいるマニア向けにやり続けてもスケールしないし、そこに注力しても仕方ないと思います。今はまず国内で盤石な基盤を築きたいと思っています。

本格的にグローバル展開をしようとすると片手間ではできないです。本腰をいれて現地法人を作るなどしてやらないといけないでしょう。次の世代の人が、女子プロレスも新日本プロレスのように、世界と日本を同時にやるようになっていくと信じています。自分はその道を作るのが役目だと思っています。

Q.独自路線とWWEへの意識について

主力選手がWWEへ行くなどして減ってしまったときに他団体との交流ではなく、海外の選手を何名か独自に呼んできて育てることにしました。

今年のWWEの最大の興行でのメインイベントは女子選手同士の試合でした。たまたまWWEで最も知名度と人気がある選手が女子だったためメインイベントを務めただけであって、女子がようやくメインになったという雰囲気は違うと少し思っています。

とはいえ、どんな理由であっても女子選手が脚光を浴びたことは事実であるため、チャンスは巡ってきているとは思っています。WWEの女子は団体の一部だが、スターダムは女子しかいない。そこの違いは強みになっていくとは思っています。

Q.海外で日本(スターダム出身)のレスラーが刺さる理由

スターダムからは宝城カイリ選手、紫雷イオ選手がWWEへ移籍した。日本では後楽園ホール(キャパ2000人)クラスの団体だが、世界的に注目を集めている。なぜか。

試合に気迫に満ちた戦いの要素があるからでははないでしょうか。

スターダムの選手はしっかりとした技術力やタフさがあり、海外でも活躍できる強みになっていると思います。そしてその強みを育んだのが、日本にしかない道場文化だと思います。

Q.デジタル戦略(動画配信サービス)について

動画配信サービス「スターダムワールド」の7割はグローバルのユーザーです(ほとんどが北米)

アメリカ人は文化とし動画課金に慣れている点が大きいと思います。日本でも、そのうち慣れてきて普及していくとは思っています。

しかし、海外のファンを捕まえる(根付かせる)ためには、動画配信で見てもらうのはきっかけで、現地で興行をしないと根付かないとは思っています。

Q.海外のプロレスファンの反応について

海外のファンは純粋にプロレスを楽しんでいる印象があります。イギリスでは歌を歌ったりして自由に盛り上げてくれます。

海外ファンの熱量は高く、NYでの大会もスターダムのファンだらけでした。非常に受け入れられた空気を感じましたし、選手だけでなくスタッフに対してもリスペクトも感じられました。海外での生活の大変さを無視すれば、やりがいも高いし、楽しいと思います。

Q.マーケティング/プロモーション戦略について

TV番組(テラスハウス、カラオケ★バトル)や台湾の現地映画に選手が出演します。選手たちがプロレス以外の様々な機会で露出をしていく場面が増えればと思っています。かつて宝城カイリ選手は「世界ふしぎ発見!」に自分に応募して出演を果たしたりもしています。

プロレス以外の露出を増やすことで、プロレスを知るきっかけを増やしてもらう、行きつくところはプロレスですが、それ以外のところをやらないと新しいお客様を呼べないと思います。

動画配信サービスへの導線としてYouTubeにも最近力を入れています。海外興行もプロモーションの意味合いが、まだまだ強いです。

また、アニメ・ゲームなどとのコラボレーションも行い、プロレスファン以外の目に触れる機会を増やしています。今後は女性ファンをもっと増やしていきたいです。

2018年に、スターダムはTVアニメ『邪神ちゃんドロップキック』とコラボ企画を実施をしている。

Q.選手の育て方

スターダム立ち上げ時には大手団体や他団体でのキャリアを積んだ選手はおろか、プロレスの経験者もほとんどいなかった

2010年に立ち上げた時に入門してくれた選手たちは、若くて細い子がたくさんでした※。そこで一人を立たせるのではなく、グループとして輝くAKB48方式を参考にしました。

見た目だけでなく、プロレスが上手くないとファンは納得しません。そのため、それぞれの選手にあった、それぞれの育成方法でプロレス技術を磨いています。スターダムには、学生から社会人まで様々なバックボーンがある選手が所属しています。そのため、選手によってプロレスに使う時間も、練習できる環境も違うので目標もその選手の状況にあったものを設定し、無理なく成長できるように心がけています。

選手の自主性も重んじています。例えば、Twitterでの発信などは選手に任せていますし、グッズも選手たちが自ら考えています。入場曲も自分たちに選んでもらうなどセルフプロデュース術を身に着けてもらっています。

Q.女子プロレスの魅力とスターのプロデュース術

女子プロレスは、新しさが魅力だと思っています。お金を払ってでも見たいと思える新しいスターをどんどん輩出することが魅力に繋がると考えています。

そのため、若いうちにスターにさせたいという思いがあります。他のスポーツでは新人がいきなり活躍するのは当たり前にあると思います。若い選手でも一気にスターに引き上げ、そのあとはその注目に本人が対応できるかどうかだと思います。

注目をされるとプレッシャーも高めるため精神面のケアも心がけています。シンプルですが、会場で声をかけたり、食事中に相談を受けたりします。

Q.今後のスターダムの方針

スターダムの運営を趣味でやっているわけでないので、収益化に拘っていきたいです。「プロレスというコンテンツで、どういう利益を上げていくことができるか」ということをずっと考えています。主力選手が抜けた時は、他団体の選手を呼ばなくて外国人選手を呼ぶことで独自の世界を作り上げたのもその結果です。

今後もスターダムは目の前の興行も大事にしながら、しっかりと未来のビジョンを持ってそこに向かって進むようにしたいです。

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--------インタビュー本文、以上--------

プロレス界の未来を見据えているロッシー小川氏

2019.9.11時点のインタビューであり買収発表の約1ヶ月前でしたが、今読み解くと新日本プロレスと同じくブシロード傘下に入った理由がわかる内容のインタビューでした。

ロッシー小川氏は、「女子プロレス」「日本でのプロレス」という範囲ではなくプロレス界全体を見渡してアクションを起こしている印象でした。同時に「もう自分は年だから」「自分がもっと若ければ」としきりにご自身の年齢を気にしているようでした。

「男女混合」「グローバル」という新時代に突入しようとしているプロレス界の台風の目のような存在とも言えるかもしれません。

そのように今最もビジネス的にも熱いジャンルともいえるプロレスのビジネス戦略が学べる日経電子版連載『プロレス経営学』はコチラ⇣(WWEや新日本プロレスのインタビューも掲載)