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キャッシュレス決済で育てる子どもの金銭感覚

 日本でもキャッシュレス社会を根付かせるには、現金よりも電子決済を利用したほうが、“便利で得になる”という具体的なメリットを示していくことが重要になる。たとえば、親が子どもに小遣いを与える方法として、現金をプリペイド式のカードやアプリに変えることは、子どもの金銭感覚を養うのに役立つことが実証されてきている。

キャッシュレス化が進む欧州では、小学生でも親から渡されたカードを使うようになっており、子ども向けの決済サービスが新たな金融ビジネスとして成長してきている。

英国の「Gohenry」は、親子で共有できるプリペイドカードとモバイルアプリのサービスで、親が設定したアカウント口座から子どもが持つプリペイドカードに定期的な小遣いをチャージすることができる。このカードは、Visa系列の実店舗、オンラインショップ、アプリストアなどで広く利用することができる。

小遣いのチャージは、「毎週土曜日の朝8時」というように週1回スケジュールを決めて、一度の買い物で利用できる上限も設定できるため、小遣いを1日で使い果たしてしまうような浪費癖の解消に役立つ。また、親が買い物履歴をチェックして、無駄遣いをしている場所を特定すれば、その店でのカード利用を不可とすることもできる。逆に、子どもが外出中に残高不足で困っている場合は、親のモバイルアプリから臨時のチャージをすることも可能だ。

さらに、GoHenry最大の特徴は、子どもに節約や貯蓄の金銭感覚を教えられる機能が設けられていることである。ゲームソフトや新型のiPhoneなど、子どもが欲しいものを目標設定しておくと、毎週の小遣いを節約して貯められた残高が、通常の買い物口座とは別枠でプールされるようになっている。また、それだけでは足りない資金を補うために、親が「部屋の掃除」や「ペットの世話」などのタスクを設定して、子がそれを実行すると、臨時収入が稼げる機能も用意されている。

Gohenryの利用体系は、子どもに発行するカード1枚につき、2.99ポンド(約430円)の月額会費と、親が小遣いをチャージする度に、0.5ポンド(約70円)の手数料がかかるが、現金で小遣いを与えるよりもメリットが大きいため、英国では小遣いのキャッシュレス化が急速に進んでいる。

Gohenry自体は、2012年に創業した金融系のFintech企業だが、自社で決済業務を行っているわけではなく、8~18歳の子どもを対象とした利用制限付きのプリペイドカードとモバイルアプリの運用をすることで、利用者から月額会費を課金するビジネスモデルになっている。

子どもの頃からデジタルマネーを使い慣れた世代が、やがて大人になった時には、いまの現金世代とは異なる金銭感覚で買い物やビジネスを動かしていくようになるのかもしれない。そんな将来を見据えて、欧州では、銀行、クレジットカード会社、Fintech企業が相まみえる形で、子ども向けキャッシュレス決済の開発と普及に力を入れ始めている。

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JNEWS編集長(井指 賢)

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