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Mentallyの挑戦と失敗〜創業からの1年をふりかえる〜

僕がMentallyを創業したのは、今からちょうど1年前の今日、2021年10月11日のことでした。

それから約1年。今月頭に僕は断腸の思いで以下の文章を投稿しました。

創業からわずか1年足らずで、資金が枯渇し、チームの解散(従業員の解雇・パートナーの契約終了)・サービス終了を余儀なくされることになるとは、1年前の創業時は思ってもみませんでした。

正直、目を背けたくなるほどつらい結末ですが、しっかりと失敗に向き合うことなくして、次のチャレンジの成功はありえないと思い、創業1周年を迎えるこのタイミングで「Mentallyの挑戦と失敗」と題して振り返ってみることにしました。

「敗軍の将は兵を語らず」で、あれこれ何かを語る資格はありませんが、「自分自身のふりかえりのためのメモ」程度にご覧いただけると幸いです。

創業からサービス終了に至るまで

冒頭に書いた通り、株式会社Mentallyは2021年10月に創業しています。創業と同じタイミングでエンジェル投資家の方々から約3,000万円を出資いただき、エンジニアやプロダクトマネージャー(PdM)をはじめ主要メンバーの採用も順調に進み、今年2月にはサービスサイトをリリースします。

その後、β版の公開(5月下旬)を経て、7月5日には正式リリースまでこぎつけることができました。

Mentallyを法人化する前の昨年7月にリリースしていたWebメディアと、7月に正式リリースしたこころのオンライン相談アプリの2つがMentally社の主要事業でした。

正式リリース後、7月中旬から本格的に資金調達に向けた活動を開始し、8月上旬を迎える頃には数社のVCに投資委員会など最終検討フェーズまで上げていただき、出資確定まであと一歩というところまで持ち込むも、最終的には出資見送りに。

お盆明けから仕切り直して再度VCとのアポイントを片っ端から入れて巻き返しをはかり、またも数社最終検討フェーズまで進んだものの、出資に至ることはなく、9月末で資金が尽きることが決定的になりました。

資金が尽きる以上、雇用を維持することはもはや難しく、また組織は僕一人になってしまう以上、サービスとして提供し続けることが困難になり、mentallyは9月末でサービスを終了せざるを得ない状況に追い込まれたのです。 
Webメディアの方は新規の記事作成はストップしたものの、閉じることなく公開を継続しています)

サービスをリリースして以降、日経新聞ほか多数のメディアに取材いただくなど、想定していたよりも多くの反響がありました。また、サービスリリース後数週間〜1ヶ月以上経っても継続してアクティブにサービスを利用いただけていました。

サービスリリース時は最低限の機能のみ実装していましたが、ユーザー分析(N1分析〜ユーザーヒアリング)を元にコンスタントにユーザーから求められている新機能をリリースし、着実にユーザー体験は改善されていきました。CPO(プロダクトマネージャー)やCTO(エンジニア)を中心に、プロダクトチーム全員が一丸となって、PMF(Product-Market-Fit)に向けた分析・改善を進めることができていました。

また、Webメディアの方も超少数精鋭のチームながら、特集記事(取材記事)を含め毎月30〜40本の新着記事を公開し続けたことで累計記事本数は約500本に。また、メンタルヘルスという非常に難易度の高い領域にも関わらず右肩上がりで着実に読者数・ページビュー数を伸ばし続け、まだまだ発展途上ながら軌道に乗ってきました。

プロダクト(Webアプリ)もメディアも、収益化こそまだ「これから」という状態だったものの、兆しを感じられる段階まで持ってくることができました。ここまで来れたのはプロダクトチーム・メディアチームを筆頭に、バックオフィスを支えてくれたスタッフを含め、Mentally社のチームメンバー全員の尽力の賜物です。

ここまで来たら、後はしっかりと資金調達を成功させて次のステージ(PMF)に向けてさらなるステップアップを目指すのみーー。

そう考えていたのもつかの間、あえなく資金調達に失敗してしまい、次のステージを目指すことは叶いませんでした。

資金調達に失敗したシンプルな理由

「順風満帆」とは言えないまでも、着実に一つ一つ歩みを進めて来ることができたので、7月の正式リリース後、それなりの自信をもって資金調達活動をスタートしました。

VCのキャピタリストの方々にピッチ&ディスカッションをする中で、それなりの手応えを感じることもできていました。

ところが、投資委員会など最終的な投資検討フェーズになると、想定していたよりもずっと厳しい現実に直面することになります。

ちなみに、前回(創業時)はエンジェルラウンド(プレシード)で、今回はシード〜プレシリーズAでの資金調達でした。資金調達ラウンドの定義は諸説ありますが、例えば以下のように分類されています。

出典:「スタートアップの資金調達相場を語る」
出典:スタートアップのステージとは?|Creww

資金調達を開始した7月中旬〜8月頃のMentally社は、以下のステータスでした。

・プロダクトリリースの直後で、プロダクトの検証段階に入ったところ
・フルタイムの従業員3名+週20時間コミットしてくれているパートナー(業務委託)が数名というチーム体制
・トラクションはある程度発生しているものの本格的な収益化はこれから
・調達予定金額は5,000万円〜1億円の間(Post-Valuationは3〜5億円程度の想定)

こうして書くと、Mentally社はシードラウンド〜プレシリーズAの資金調達を実施できる要件ある程度は満たしている、と言えそうですし、当時の僕はそれなりの自信をもって資金調達に臨みました。

が、これが大きな間違い(勘違い)だったのです。

上記はあくまでそれぞれのラウンドにおけるスタートアップの成長段階の目安であり、その要件を満たしていれば必ず出資を受けられるわけではありません。言うまでもなく、当たり前のことなのですが、渦中の僕は「要件を満たしているのだから、問題なく調達できるはずだ」と楽観視してしまっていたのです。

そしてこの勘違いは、致命的な過ちを生みます。

今回、7月から9月にかけて資金調達活動をしていましたが、この期間に資金調達が成功する前提で事業計画を引いてしまっていたのです。冷静に考えれば、資金調達がうまくいかない可能性が高いにあるにもかかわらず。

スタートアップには、失敗がつきものです。だからこそ、創業して1つ目のサービスがうまくいかなかった場合にピボットできる余地を残しておくことや、エクイティでの資金調達がうまくいかなかった場合のプランBを持っておくなど、リスクヘッジを図るのは経営者として当然のことです。

それにもかかわらずなぜ…と、当時の自分を全力でツッコみたいですが、「マネタイズ(収益化)はまだまだこれからだけれど、プロダクトは無事にリリースできたし、ユーザーもついてきている。しっかりと検証サイクルが回せるチーム体制ができているし、今回資金調達を成功させて燃料補給をして、1〜2年以内にPMFまで持っていくぞ!」と、自分が進んでいる方向性を何の疑いもなく過信・盲信して突き進んでしまっていたのです。あまりにも愚かですね。

いよいよこれから!というタイミングで燃料切れを起こし、「夢半ば」どころか序盤中の序盤で航海を断念せざるを得ないことになり、メンバー全員に対して本当に悔しく、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

Mentallyの仮説と挫折

自信をもって資金調達活動に臨んだはずが、終わってみれば完敗でした。
最終的なお見送り理由はそれぞれのVCによって異なりますが、ざっくりまとめると以下の理由に集約されます。

①そもそも、日本国内でメンタルヘルスケア領域のスタートアップで成功事例が少なく(toCサービスは特に)上場できるレベルまでスケールするイメージが湧かない
②メンタルヘルスケア市場はたしかに社会的意義もあり、今後の伸びしろが期待できるが、mentallyのアプローチもユニークで可能性を感じるが、このアプローチでマーケットが創れるファクトがまだ乏しい(サービスをリリースしたばかりでマネタイズもこれからなので)

たしかに、メンタルヘルスケアの市場は世界で50兆円に上るとされ、欧米を中心にメンタルヘルスケア領域でユニコーンに成長しているスタートアップがいくつも出てきている一方で、日本ではまだそういった状態には至っていません。

では、何があれば日本のメンタルヘルスケア市場は健全かつ適切に拡大できるのか?メンタル不調やうつ状態を改善・治療・予防するために効果的なサービスを利用する人が増えるのか?

上記に対するMentallyの仮説はこうでした。

・現状、医療機関の受診やカウンセリングを受けることに対する心理的・経済的なハードルが非常に高く、多くの方が一人で抱え込んでしまい、結果的に症状を悪化させてしまう。
・「医療機関の受診やカウンセリングを受ける」ことが精神的にハードルが高いのであれば、まずは同じ悩みを抱え、乗り越えた経験を持つ方に話を聞いてもらう、経験談を聞く(ピアサポート)という選択肢があれば、一人で抱え込む人が減り、医療機関の受診やカウンセリングをはじめ、メンタル不調やうつ状態を改善・治療・予防するために効果的なサービスを利用する人が増え、結果的に日本でメンタルヘルスケア市場を健全に拡大できるのではないか?
mentallyのパンフレットより

こうした仮説のもと、オンラインで同じ悩みを乗り越えた経験を持つメンターに相談できるWebアプリmentallyを開発・リリースしました。

mentallyのサービスを着想した当初は、ピアサポートのアプローチの場合、プロのカウンセラーによるカウンセリング等と比較するとどうしても単価が安くなってしまい、ビジネスとしては成立しないのではないか?という懸念がありました。

そんな中、とある知人が紹介してくれたのが中国の「壹心理」というサービスでした。

壹心理では、通常のオンラインカウンセリングに加えて「傾聴(悩み相談)」というメニューがあり、リーズナブルな価格で経験者の人に話しを聞いてもらうことができます。この「傾聴」がまさにmentallyのピアサポートの位置づけになっていたのです。

さらに重要なのは「傾聴」は壹心理のユーザーの裾野を広げることに貢献しているということです。

中国は日本同様、欧米と比較してまだまだ心理カウンセリングが普及しておらず、「カウンセリングに興味はあるものの、まだ受けたことはない」「興味はあるものの金銭的にハードルが高く、利用には至っていない」という人がまだまだ多いようです。

その点、壹心理は「傾聴」という選択肢を設けることで、サービス利用のハードルを下げることに成功しています。実際に壹心理のユーザーの多くは、まずは数回(1〜3回程度)「傾聴」を利用し、経験者との対話や実体験の共有を通じてカウンセリングの有用性を実感し、カウンセリングの申し込みに至っているのです。

壹心理は直近2019年にシリーズBで資金調達をしているまだまだ発展途上のスタートアップですが、2200万人のユーザー(うち280万人が有料課金ユーザー)を抱え、年商20〜30億円程度に成長しています。

この壹心理のケースを知ったことによって「mentallyのアプローチでも、その後の事業展開次第では十分IPOを狙えるかもしれない」と考え、クローズドα版の検証(後述します)結果も踏まえて、Mentallyを法人化して資金調達を行うことを決意したのです。

その後「ピアサポートのアプローチによってメンタル不調を解決するアクションのハードルを下げ、カウンセリングの裾野を広げることで、メンタルヘルスケア市場のパイ全体を拡大する」というmentallyの仮説のままプロダクト開発をスタートして、7月にリリースするも、たった1〜2ヶ月で「仮説を証明するファクトを出す」ところまでたどり着くことはできず、挫折を迎えることになります。

フライング・擬陽性のまま突き進んでしまった1年間

なぜ、mentallyは挫折を迎えることになったのか。どうすれば良かったのか。何度も何度も、繰り返し反芻したこの問いに対して、今もなお心の底から納得できる結論は出ていませんが、今回の失敗を振り返るにあたって、以下の書籍を中心に読み返しました。

  • 起業の失敗大全

  • 起業家はどこで選択を誤るのか?

  • 起業の科学

中でも『起業の失敗大全』に記述されていたことがあまりにも思いあたるフシだらけでした。

リーン・スタートアップの手法は10年ほど前から広く理解され、起業家たちに受け入れられています。実験と反復を行うことで魅力的な機会を特定し、ピボット(方向転換)することができるはずです。しかし、自称リーン・スタートアップの中には、市場を見つけることができなかった死骸が散見されます。何が欠けていたのでしょうか?

失敗のケーススタディを深く掘り下げていくうちに、リーン・スタートアップの手法は期待どおりの効果をもたらしていない、という結論に達しました。リーン・スタートアップが悪いのではなく、それを採用していると言う多くの起業家が、実際にはその一部しか採用していなかったのです。

具体的には、彼らはMVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる、顧客からのフィードバックを得られる最もシンプルなプロダクトを発表し、それに基づいて繰り返し開発を行っていました。しかし、エンジニアリングを開始する前に顧客のニーズを調査することを怠ったために、彼らは貴重な時間と資金を的外れなMVPのために浪費していました。これがフライングです。

スタートアップの初期の顧客からの良い反応に基づいて市場の需要を過度に楽観視すると、起業家は間違った機会を追求し、その過程で手元の資金を使い果たしてしまうことになります。リーン・スタートアップの達人たちは、自分たちのソリューション(顧客の問題を解決するプロダクト)に対する需要の強さを示す「偽りのシグナル」に注意するよう警告しています。 しかし、起業家には見たいものを見てしまう傾向があります。擬陽性とは、一部のアーリーアダプターの熱狂に魅せられた起業家が、その需要の強さをメインストリーム市場に誤って反映させ、アクセルを踏み込んでしまうことです。

フライングと擬陽性のパターンは、どちらもスタートアップを間違った道に進ませてしまい、失敗の確率を高めます。しかし、この2つのパターンは、まったく異なる失敗から生じます。フライングの失敗では、先行調査を怠ったがゆえに、顧客のニーズを満たせないプロダクトを作ってしまいます。擬陽性の失敗では、アーリーアダプターに焦点を当てすぎて、メインストリームの顧客に十分に焦点を当てなかったために、間違った顧客のニーズを満たすプロダクトを作ってしまうのです。
出典:起業の失敗大全/トム・アイゼンマン

Mentallyにおいても、ユーザーインタビューをはじめとする定性調査を行いニーズを確認した上で、ノーコードでWebアプリを構築できるツールbubbleを活用してコストを最小限に抑えてMVPを開発し、昨年7月にα版としてリリースしました。

約50名ほどのテストユーザーにα版を利用してもらい、構築・計測・学習サイクルを回して仮説検証を行った上で「ニーズあり」と判断して、Mentallyの創業および資金調達を行い、本格的にプロダクト開発を進める意思決定をしたのです。

一見、スピード感を重視しつつも適切なプロセスに則って事業開発を進められているように見えますし、当時の自分もそう思っていました。

が、いま思えば当時のやり方はリーンスタートアップの手法やプロセスになぞって検証を進めていたものの、客観的・批判的な姿勢をもって適切に仮説検証を行うことができていなかったように思えます。
(プロダクトチームが、ということではなく代表である僕自身が、です)

事業開発における最大の敵の一つが「確証バイアス」です。確証バイアスとは、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集め、否定する情報を無視または集めようとしないという認知バイアスを指します。

つまり「mentallyのアプローチであれば、日本のメンタルヘルスケア市場を拡大する突破口を開けるはず!」という仮説を盲信するあまり、ユーザーインタビューやMVPによる仮説検証プロセスにおいても、無意識のうちに都合の良い情報ばかりに目を向け、都合の悪い情報には目を背け、検証レベルがまだ浅い状態で「ニーズあり」と判断してしまったのです。

『起業の失敗大全』から引用した文章に「起業家には見たいものを見てしまう傾向があります」とありますが、「見たいものを見てしまう」どころか「見たいものしか見ない」状態になり、フライングをした上に、さらに擬陽性(「偽りのシグナル」からニーズありと判断してしまった)にハマるという、ある意味教科書どおりのアンチパターンに陥ってしまっていました。

ちなみに、本書が発売してすぐの4月頭、書籍を購入して読んでいました。その当時は「盲信モード」だったので、「こういうケースもあるんだな。自分も気をつけないようにしないと」と、ある種他人事のように捉えていた記憶があります。盲信モードは本当に恐ろしいです。

・mentally(ピアサポート型のオンライン相談サービス)は、「ある程度の金額のお金を払ってでも利用したい」と思えるほど強いニーズがあるのか?
・実際にお金を払って相談するユーザーはどの程度いるのか?
・お金を払って利用するユーザーは、一度のみならず継続的に有料で利用するのか?
・ユーザー一人あたりがmentallyにもたらす売上・利益(LTV)はどの程度なのか?
・アーリーアダプターのみならず、メインストリームにまで拡大できるのか?
・(壹心理のように)ピアサポートのみならず、プロによるカウンセリングへのアップセルは行われるのか?行われるとして、何割程度の割合でアップセルを見込めるのか?

ユーザーヒアリングからMVP開発までの段階で、ここまで踏み込んで検証できていれば、フライングしたり擬陽性に騙されることなく、盲信ではない客観性のある形で自信をもって法人化・資金調達・プロダクト開発を進めることができていたはずです。
(その場合はスピードが犠牲になり、法人化・資金調達・プロダクト開発のフェーズに移行するまでにさらに半年〜一年の期間を要していたかもしれませんが、少なくとも創業から一年足らず、リリースからわずか2ヶ月半でサービスを終了するという事態は防げたかもしれません)

「集中と選択」をすべきだった

また、もう一つの過ちが、まだPMF(Product-Market-Fit)達成前のシード段階で、キャッシュバーンレートをできる限り最小限に抑えるべき段階にもかかわらず、WebアプリとWebメディアの2事業を同時に展開してしまったことです。

もちろん、WebアプリとWebメディアの両輪でやっていくと決めたのには、それなりの理由があります。それは、海外ではVerywell Mindのようなメンタルヘルスに特化したメガメディアがいくつもあるにもかかわらず、日本ではまだそれにあたるポジションを確立したメディアはなくチャンスがあるということ。また、Webメディアは立ち上げてから軌道に乗る(SEOを含め)までに非常に時間がかかるため「WebアプリのPMFが見えてきて、集客に予算が回せるようになってからメディアを立ち上げるのでは遅すぎる」と考えたことから、Webアプリに先がけて昨年4月頃から立ち上げの準備を進め、昨年7月にWebメディアを先行してリリースしたのです。

今でもこの決断そのものに問題があったとは思っていませんし、後悔もしていません。ただ、やり方に問題がありました。

・WebメディアとWebアプリの同時立ち上げによってリソースが分散した
だけならまだしも、
・フライング(見切り発車)と擬陽性によって、「開発スピードを上げる」ことを名目に拙速に人員を増やしてしまった
・一発で資金調達が成功することありきで9月末でキャッシュアウトするスピードでバーンレートを上げることを許容してしまった
といった過ちがかけ合わさったことで、このような悲惨なバッドエンドを招いてしまったのです。あまりに自分が愚かすぎて、書きながらどんどん悲しくなってきます。

・PMFを達成するまでは、単一事業(Webメディア or Webアプリ)に集中してリソースの分散を避ける
・WebメディアとWebアプリを同時並行で進めるにしても「まずはWebメディアを収益化まで持っていき、その裏で最小限のコストでWebアプリの仮説検証を行う」など

優先順位をつけた上でリソース配分を行っていれば、この夏に資金調達を行わずとも、もう半年〜一年は事業を継続することが出来、仮説検証のレベルを高めた上でシード〜プレシリーズAの資金調達に臨むことができていたかもしれません。

Mentallyの今後について

長くなりましたが、以上がMentallyの挑戦から失敗に至るまでの経緯と要因です。最後にMentallyの今後について少しだけ触れたいと思います。

冒頭に書いた通り、僕の至らなさゆえ、mentallyは9月末にサービスを終了し、10月をもって従業員を含めたスタッフ全員がMentally社を去ってしまいます。が、株式会社Mentallyを清算・倒産させるわけではありません。

もちろん、一時期はMentallyを清算して完全に撤退することを真剣に検討しましたが、真剣に考えれば考えるほど、「なんであのとき、挑戦を諦めてしまったんだろう?」と、将来後悔している自分が想像できてしまい、ゼロから再スタートすることを決めました。

10月以降にMentally社に残るのは、代表である僕1人と、Webメディアと、約1,500万円の借金だけです。ゼロどころか、マイナスからのリスタートです。

これまでMentallyはtoC(個人向け)サービスにこだわって事業を開発してきましたが、当面は僕自身の強みが生きて土地勘もあるtoB(法人向け)にピボットして、クライアントワーク(受託案件)でしっかりと収益を得つつ、事業開発を進めていく予定です。

あらためて、今回の挑戦と失敗に際して、Mentallyに可能性を感じて出資してくださった株主の方々や、Mentallyにビジョンに共感して入社・参画してくれたメンバーに対して、期待と信頼を大きく裏切る結果になってしまったことを強く反省しています。本当に申し訳ありませんでした。

『起業の失敗大全』によれば、「ベンチャーの失敗とは、初期の投資家が投資した金額以上の資金を回収できなかった場合、あるいは今後も回収できない場合を指します」と定義されています。

今回、Mentallyは倒産・清算したわけではないので、「資金を回収できなかった」と結論が出たわけではないですが、客観的に見れば「今後も回収できない」可能性が高い状態に陥っているわけなので、明確に失敗、いや大失敗だったと言わざるを得ないのが現実だと思います。

ここまで来たら、後に残された道は一つです。それは、創業者である僕自身が成功するまで諦めずに挑戦を続け、株主の方々にリターンをきちんとお返しすること。そして「Mentallyが再起を果たしたら、またMentallyで働きたい」と言ってくれているメンバーとまた一緒に働ける日が来るように、収益性の高い事業を立ち上げ、軌道に乗せること。これしかありません。

これは決して簡単なことではなく、マイナスからのリスタートである以上、これまで以上に過酷な道のりであることは間違いないですが、今回の大失敗から得た学びを糧に、次の挑戦に活かしていきたいと思います。

最後になりますが、10〜12月は法人向けにウェルビーイング経営・メンタルヘルスマネジメントを支援するサービスを開発・提供するためのリサーチ(ユーザーヒアリングなど)を進める予定です。ヒアリングに協力してあげてもいいよ、という方はぜひFacebookTwitterなどでDMいただけると嬉しいです。

1万字近くの長文にもかかわらず、最後までお読みくださりありがとうございました。

mentallyのロゴは「夜明け前に昇る太陽」をモチーフにしています。「日はまた昇る」と信じて、諦めずに挑戦し続けたいと思います。

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