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バルミューダの上場は日本製造業の光

こんにちは。よなよなエール”愛の伝道師”の井手です。

16日に家電メーカーのバルミューダが上場した。ついにきたか!というのが率直な感想。数年前にバルミューダ社長の寺尾さんと講演や授賞式などのイベントでご一緒した時に製品開発やビジネスについての考えを聞いて、「これはもっともっと市場に受け入れられてメジャーになるに違いない」と思っていたからだ。

日本の家電メーカーはもう大分以前から元気がない。技術力は当然あるのだが、韓国を中心としたアジア勢にすぐ製品を模倣され、低価格とスピードで攻められどんどん家電市場から撤退していった。日本の家電メーカーと言えば一昔前は世界でも「顔」であった。私は高専出身なので学生時代は松下電器(現パナソニック)や日立、東芝と言えば憧れの企業で私のボンクラな頭では入社することさえ無理な存在であった。今はその勢いは残念ながらアジア勢に譲ってしまっている。

そんな日本を代表する大企業が光をさせない家電市場に社員100人程のバルミューダが快進撃を続けているというのは本当に凄いことであり、これこそが「イノベーション!」としか言いようがない。きっと大企業の方々もバルミューダの製品を今は徹底的にベンチマークしていることだろう。

以前寺尾さんと話をした時に驚いた言葉に「長い間、汎用品として価格競争しかしていない製品がねらい目なんです」と言っていたこと。マーケティングのセオリーで行けば、そこは一番参入したらイケナイ市場だし、競争で勝つのは価格競争力のあるトップ企業のみである。「なんでねらい目なんですか?」と聞くと「製品のイメージが固まっていて、それを誰も変えようとしない。私から見るとそんな製品には勝機が沢山あるんですよ」と返ってきた。

さすがー!のひと言である。バルミューダは工場を持たないファブレス経営の文脈で評価されることも多いが、それと関係もするが一番の凄さは「異端な思考」で世の中にない製品コンセプトを生み出すことなのだと思う。ファブレスなので経営資源を製品開発と人材に集中できるのは確かにそうだが、「異端な思考」という企業文化が無ければそれも不発に終わってしまう。業界の常識にとらわれず、しがらみもなく、競争の土俵を全く変えてしまうコンセプト設計こそがバルミューダの凄さであると思っている。いや、現時点で言うとバルミューダというよりも寺尾さんの凄さなのかもしれない。

このような「異端な思考」が生み出すイノベーションこそが日本の製造業をもう一度世界のもの作りの顔にする一つのモデルケースなのだと考える。突き詰めた究極の技術進歩もそれはそれで良いが、バルミューダの様な「異端な思考」から生み出される「世の中にないもの」こそが今の日本に、そして世界には必要なのだと思う。でもそれはなかなか難しいことではあるのですが。

ちなみに、日本のビール市場も家電市場と同じ状況に近づいていると思っていて、その中ではうちがバルミューダの存在なのかなと思っている。日本のビール市場では大きなくくりで言えば同質化された味のビールの戦いは「価格競争」が主戦場となっている。その中で「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」等の差別化された製品を武器に急成長を遂げているうちの姿は、バルミューダと重なる部分も多いと思う。少し異なるのは、うちはファンイベントや面白いWEBコンテンツなどのエンターテイメントを組み合わせることでファンの支持を広げているというところ。

私が寺尾さんに共感するのは、私もまた似たような異端児だからなのだと思う。そんな業界の異端児を増やしていくには、うちやバルミューダの社内から増殖させるのは一つの手であると思う。

10年後の日本の製造業で、そんな異端な会社が増えていると市場が活性化して面白いと思うのだがどうだろう?洗濯機や冷蔵庫も想像がつかないような進化をしているのではないか。そんな期待を胸に、まずはバルミューダの更なる成長を応援したい。