東京の検査数・陽性者数は確かなのか?把握しきれていない水面下での検査体制・陽性者管理の懸念
新型コロナの検査には医師や保健所が必要と認めた保険適用の行政検査と、それ以外の自費検査があります。検査を受けるハードルが高かった時期に比べれば、都市部を中心に自費による検査を行う医療機関や検査施設も増えたことにより検査数も急激に増加していると考えられます。しかし医療機関ではない検査施設や受診しなくても検体を郵送するような方法をとっている施設などでは検査結果が通知されるだけで、もし陽性だった場合の対応が本人任せになっていることもあるようです。また若年者は症状も軽く、1日発熱した程度で翌日には回復していることも少なくはないことから、適切な指示がなければ普段通りの生活を続けたり、時には会食やイベントなどに参加する可能性もあるかもしれません。
昨年11月頃から格安の検査施設が相次いでオープンし、郵送用の簡易キットがドラッグストアで購入できるようになりました。「いつでも・どこでも・誰でも・安価に検査が受けられる」ということで若年者を中心に利用者が急増しており、特に無症状の方が受けられるということで、帰省前やイベント参加の前など、安心材料として受検する方も少なくはないと思われます。
ただ検査が陰性であったからといってそれが安心材料にはならないという認識も必要です。
また最近の外来診療で感じることは、症状があり受診される、あるいは会食機会などで濃厚接触者と認定される特に若年者層の方々は、受診前に前述の簡易キットを利用していることが少なくはないのです。その方々の聞き取りの上で判明したことは「陽性になった知人は、簡易キットで陽性が判明したが、郵送した施設から何の連絡もなく、どうしてよいかわからなかったのでそのままにしていた」というような事例が複数あったことです。例えば、「陽性になっても医療機関を受診することなく会食をしていた」ということになります。このような事例は氷山の一角かもしれず、水面下で相当数の事例があったとすれば、検査の門戸が拡がった時期(=検査施設が相次いてオープンし、検査キットがドラッグストアで購入できるようになった時期)を踏まえると、最近の感染者の急増の一因となっているのではないかと推測します。
また、このような施設での検査数は東京都や厚労省が発表する検査数には計上されていないと思われます。しかも検査数は医療機関が委託する外注検査会社に匹敵するほどの検査数ともいわれていますので、現在公表されている検査数の数倍とも考えられます。また陽性者も前述の通り、すべて報告されているかどうかも不明確であり、真の検査数・陽性者数・陽性率はどの程度なのか、疑問が残ります。
感染症法の改正では民間検査機関に医療機関と連携するよう勧告し、応じなければ公表できるよう改める。具体的な連携では、あらかじめ検査を受ける人の同意を得ておき、検査結果が陽性だった場合に提携医療機関に結果を連絡することなどを想定している。医療機関側も民間検査機関からの連絡があれば迅速に受け入れる対応が必要になる。
これまで検査を受けられる施設が医療機関に限られていたことで陽性者の管理がしっかりとできていた反面、「いつでも・どこでも・誰でも・安価に検査が受けられる」検査体制には議論すべき問題点も散見されます。国や自治体はこのあたりをしっかりと検証すべきであると考えます。