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八方美人はもう許されない

20世紀の大手企業は製品を大量に生産して、マスメディアを活用して、マス市場、つまり全員に向けたメッセージを発信してきました。

そんな中で、企業が事業活動とは関係のない方針、例えば政治的な見解を明確にすることは、異なる意見を持つ顧客の離反につながるリスクがあるため敬遠されてきました。

しかし経済が成熟し、価値観が多様になっている現代においては、自社の立ち位置を不明瞭にしたまま、市場から高い評価を獲得するするのは難しくなってきています。

それが、ミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイドさんが白人警察官に殺害された事件をきっかけに巻き起こった、黒人差別反対運動において顕著になっています。

これまでスターバックスは、個人の政治的な信条を店内で表明しないルールでしたが、今回の大きなうねりの中では、方針を転換せざるを得ない状況に追い込まれました。

すぐに方針転換を打ち出したのですが、国際的に影響力のあるアリアナ ・グランデ氏は、いまだにスターバックスを批判しています。

どの立ち位置を取るのかは各企業の自由ですが、曖昧にすることは難しくなってきている現状を、企業経営者は認識をする必要があります。

ネットフリックスやナイキなど、迅速に方針を打ち出した企業もありました。

アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは個人的な見解を強いメッセージと共に発信をし、一部の顧客層から高い評価を得ています。

そして、企業が価値観を明確に提示し、顧客を選択することは、悪いことばかりではありません。

日本では「お客さまは神様である」という社会通念が一般的になっており、そのため、モンスターカスタマーと呼ばれる節度を超えた不当な要求をする顧客にも対応をしてきました。

私自身もそういった状況を見かけ、不条理さにとても悲しい気持ちになったことが何度もあります。

自社の価値観を明示することは誰を大切にするかを決めることであり、特定の顧客と共に、従業員を守ることにもつながります。市場を狭めるというリスクをとった分、得られることもあります。

ただし、一点注意しなければならないことがあります。価値観を選択することは、異なる見解を持つ人と決別し、社会的な分断を進める要素も孕んでいるという観点です。

誰かを侮蔑したり、分断を進めることが目的ではないため、立ち位置を明確にしつつ、異なる価値観を包摂する優しさを持つことも忘れるべきではありません。

日本企業は、今回の差別撤廃運動を対岸の火事として捉えるのではなく、考え、積極的な行動を起こす機会だと捉えたいところです。

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