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キュウリは曲がっているもの

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イタリア人のシェフが日本のスーパーに並ぶ野菜や果物を見て驚いた。「キュウリは曲がっているのが普通なのに、どうしてこんなにまっすぐなの?」と。日本では、まっすぐに揃った綺麗なキュウリでなければ、売れない。土や草などがついていたり、曲がっていたり、ゴツゴツしていたりしたら、敬遠される。イタリア人シェフはそのあとにこういった。「この日本の綺麗すぎる野菜は美味しいと感じられない。ましてやパックに入っていたら、良いものが選べない」と。

「旬」の食材を日本だけではなく、どこの国も大切にしていた。旬は月の3分の1で10日間。畑で野菜が収穫できるのが10日ぐらいからきている。だから「旬」が生まれた。かつて地域ごとに、旬ごとに、畑で野菜を収穫し、海や川から魚をとって、売ったり買ったり、近所どおしで分けあったりして、旬の食材を組合せて旬の料理をつくった。このように料理は地域文化そのものだった。

その「旬」が薄れてしまった。農業技術、梱包技術、輸送技術、冷蔵・保管技術、調理技術の進歩で、トマト、キュウリ、だいこん、キャベツ、たまねぎが一年中いつでも手に入る。ピーマン、ニンジン、なす、ブロッコリーもスーパーにいつでも並ぶ。並んでいなければ、どうしたんだろう、困るな、と思ってしまう。こうして食卓に「旬」がなくなる。

しかし料理の検索サイトでは意外なことがおこる。「旬」「節句」の時期になると、旬・節句の料理のアクセスが急増する。子どもに旬のものを食べさせたいという親の想いが今につなげられている。決して旬が忘れられたわけではない。

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雛まつりが近づいている。上巳の節句、つまり桃の節句には、ちらし寿司と蛤のお吸物が並ぶ。五節句や旬の食材などは今も日本の生活文化にうけつがれている。古代からの二十四節気に、5日ごとの七十二候を私たちは生活のなかに感じ意識することがある。地域によって調達できる食材がちがっていたから、同じ行事でも地域独自の料理がうみだされた。どこでも同じものが、いつでも食べることができるようになったのはありがたいが、地域ごとの季節ごとの多様な料理を守り、育てていきたい。

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イタリアに「イータリー」という食材専門店がある。日本にも進出しているが、店内にはスローフードの考え方にもとづくイタリアの魅力的な食材・食品が売られているだけでなく、調理の実演・食事ができる場である。「イータリー」にすごい食材絵図が売られている。季節ごとの野菜絵図、魚絵図。イタリアの地域ごとのオリーブ、パスタ、パン絵図と、イタリアの食材の豊かさ、地域の食文化の広がりに驚かされる。私たち日本が得たものと、失いかけていることがあることを、この絵図で感じた。この絵図をかつての日本では描けたはずだ。もう一度日本でこの食材絵図を描けるようになりたい。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26805050R10C18A2PE8000/

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