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令和世代の起業スタイルとギグエコノミーの新商圏

 時代は令和へと変わる中で、人々の価値観や生き方のスタイルにも転換期が訪れている。平成(1989-2019年)は、良くも悪くも、昭和の経済成長~バブルの影響を踏襲してきた時代であり、テクノロジーの面では、パーソナルコンピューター、インターネット、携帯電話、スマートフォンなどの普及が消費者の生活を大きく変えた。

その一方で、雇用の環境が大きく変化したのも平成の特徴である。アルバイトやパートなど非正規雇用者の数は、平成元年には817万人だったのが、平成29年には2036万人にまで増加している。一方、正社員の数は平成の31年間でほとんど増えていない。

平均年収の面では、非正社員(175万円)、正社員(497万円)という300万円以上の差があるが、正社員の給与水準も1997年をピークとして減少しており、現在の平均給与額は平成元年の頃と同水準である。その点では、労働者にとっての平成時代は「失われた30年」といっても過言ではない。

こうした社会背景の中、令和の時代には新しい生き方や働き方の価値観が築かれていくことになる。その指針となるのは、平成以降に生まれて、令和の時代に新社会人となる世代の生き方である。彼らはマーケティング業界が注目するジェネレーションZ(Z世代)と一致する。折しも2019年は、世界の人口統計で、1996年以降に生まれたジェネレーションZ(Z世代)が2019年には32%となり、それより一つ前のミレニアル世代(1981~1995年生まれ)の数を超す、節目の年となっている。

令和世代は、自分達の親がサラリーマンの雇用崩壊で苦しんできた姿を見ているため、収入を稼ぐことにも柔軟な発想や方法を取り入れるようになる。 雇用が不安定なことへの反論として、起業意欲が旺盛なことも特徴である。2000年頃から現在にかけては、20~30代の中からIT起業家として成功する者が多数登場したが、今後は10代の中からも起業の成功者は増えてくることが予測されている。

起業することのハードルは革新的に低くなっており、ネット上では多様な収益プラットフォームを見つけることができる。その中では、「フリーランス・エコノミー」、「シェアリング・エコノミー」、「オンデマンド・エコノミー」、「タレント・エコノミー」といった、従来の労働市場とは異なる、新たな働き方の経済圏が形成されている。これらは、フレキシブルな起業のスタイルでもあることから、「ギグ・エコノミー」という言葉でも集約される。

《ギグ・エコノミーの分類》

●フリーランス・エコノミー
…専門性のあるスキルで収入を稼ぐ
例:ライター、エンジニア、デザイナー等
●シェアリング・エコノミー
…遊休資産のシェアリングで収入を稼ぐ
例:自宅、別荘、マイカー、趣味道具などのレンタル
●オンデマンド・エコノミー
…労力の遊休時間で収入を稼ぐ
例:ライドシェア運転手、軽作業、介護、育児など
●タレント・エコノミー
…個性や才能で収入を稼ぐ
例:YouTubeやInstagramのインフルエンサー、オンライントレーダーなど

フリーランス・エコノミーの中では、「Upwork」のようなプラットフォームで、単価の高い仕事を効率よく受注して、月収1万ドル以上を稼ぐ若者が海外では出てきている。また、ユーチューバーとして数十万人規模のチャンネル登録者を獲得する者や、オンライントレーダーとして億単位の資産を築く者も、自分の才能を活かしている点では、タレントエコノミーの成功者といえる。

こうした新しいギグエコノミー圏の成功ノウハウは、10~20代の若者の中から次々と登場してきている。サラリーマンが最も堅実という常識の中で育った、昭和世代にとっては、彼らの生き方を冷ややかに批判するよりも、彼らの起業スタイルから学び、自分もギグエコノミーの住民になれる道を探ることのほうが、令和時代を賢く生き抜くためには得策なのかもしれない。常識と非常識の価値観は、時代の変化により逆転していくものである。

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