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使い捨てされる新品同様衣類はどこへ行くのか?

 安価なファストファッションの流行や、ネットで購入した服を手軽に返品できる制度は、洋服の使い捨て消費を加速させている。

米国では、オンライン小売業者の返品送料負担額だけでも、2017年の時点で3,810億ドルもの規模があり、それが2020年までには5,500億ドルにまで拡大することが予測されている。特にアパレル分野では、オンラインで販売される商品の30%近くが返品されている。返品された商品は仕分け・検品されて、品質に問題が無いものは、同じサイトで再販売されるが、汚れや型崩れなどが生じた商品については、B級品や中古品として扱われることになる。

従来、アパレル業界で返品、売れ残った商品がどのように処理されるのかは非開示となっているが、最近は環境問題への配慮から、返品商品のリサイクルルートを開示することが、消費者からの支持率を高める上でも重要になってきている。

「thredUP(スレッドアップ)」は、米国で人気の高い古着専門のeコマースサイトだが、この中には大手のアパレル業者が返品対応した商品も含まれている。米百貨店チェーンの「Macy's(メイシーズ)」や「Stage Stores」では、thredUPとの提携により、返品された商品の一部を古着として再流通させていることを公表している。

売上が伸び悩むアパレル業界の中でも、古着は10代~50代以降の幅広い層で人気が上昇している。人気の理由は、新品の定価と比べて50%~最大90%の割引価格で好きなブランドの商品が購入できること。また、モバイルアプリによって、一点モノの古着を、新品と同じように見つけやすくなったこともある。thredUPのサイト内には、毎日3万点もの商品が追加されており、その中から掘り出し物を探すことには、新たなショッピング体験ができる楽しさがある。

このような節約志向のショッピングスタイルは、高所得者層の中にもみられる傾向で、thredUPによると、中古アパレルのリセール市場は、2017年には30億ドルに過ぎなかったが、2019年は70億ドル、そして2023年には230億ドルにまで成長することが予測されている。

thredUPで扱われる古着は、100%本物であり、偽ブランド品は含まれていないことが保証されていることから、百貨店としても提携しやすい。消費者の中では、サステイナビリティ(資源を無駄にしない持続可能性)の価値観が広がっていることから、返品された商品の廃棄率を減らして、再流通先を開示することは、販売者としての信頼性や透明性を高めたブランドイメージの向上に繋がるのだ。

世界的なトレンドとして、廃棄食材を減らすフードロス対策や、海洋に流出するプラスチックゴミへの対策から、使い捨てのプラ容器を流通禁止にする動きが広がっている。アパレル業界でも、1シーズン毎に服を使い捨てていくスタイルから、できるだけ長く着続けられる服を求める風潮が高まっており、「スローファッション」と呼ばれる、新たなファッション文化が浮上してきている。

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