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低炭素技術の輸出、EV投資等、未来の脱炭素経済大国インドネシアとの付き合い方

気候変動を切り口に様々なニュースを眺めていると日々新しい発見にあふれています。今回はEVバッテリーに必須の鉱物資源であるニッケル埋蔵量世界首位を誇り、人口増加、経済成長とともに存在感が増しているインドネシアについて、気になったことを書きとどめておきたいと思います。

インドネシアのことが気になったきっかけはThe Economistのカバー記事『Asia's Overlooked Giant - Can Indonesia live up to promise?(アジアの見落とされた巨人 - インドネシアは期待に応えられるか?)』です。

The Economist 2022/11/19

- Why Indonesia matters(なぜ今、インドネシアが重要なのか)
Indonesia is poised for a boom—politics permitting(インドネシアは好景気への準備が整った-政治的許可)
Indonesia’s tilt at King Coal - A major coal user signs a $20bn deal to help it reach net-zero emissions(インドネシアの石炭王への傾倒-大手石炭利用企業がネットゼロエミッション達成のために200億ドルの取引に調印)

The Economist

先日開催されたG20会議のホスト国ということもあり、今まであまり目立つ機会がなかったと言われる東南アジアのこの国の現状、そして今後の可能性が詳しく紹介されてます。トピックがあまりに多いので箇条書きで10点挙げてみます。

  1. イスラム教徒が大多数(約87%)を占める世界第3位の民主主義国家

  2. 世界第4位の人口(約2.76億人人口の26%が15歳以下で、毎年300万人のペースで増加、204年時点の予想人口は3.18億人)

  3. EVバッテリーに欠かせないニッケルの埋蔵量は世界の5分の1を占め首位。鉱物採掘だけでなく、2014年には未精錬鉱石の輸出を禁止し、国内でのバッテリー加工精製も可能にし、EVバッテリーのハブを目指している。

  4. EVメーカー(韓国現代、中国上汽通用五菱汽車(五菱))が今年工場進出、EVバッテリーメーカーの韓国LGエナジー、CATLが投資の意向。更に、テスラもジョコ大統領自ら工場誘致のアプローチ中

  5. 石炭火力発電から脱却するのを支援するため、インドネシアに対して日本や米国などの10の国・地域が、今後3~5年間に官民で200億ドル(約2兆8千億円)を出す金融支援の枠組みがG20サミット開催時に公表(現在はエネルギーの約6割を石炭に依存)。その他、G20の議長国を務めたことを機に、各国から714億ドル(約10兆円)の投資を集めたと言われてます

  6. 経済協力開発機構(OECD)によると、2040年にインドネシアのGDPが購買力平価ベースで7.5兆ドルへと成長し、中国、米国、インドに次ぐ世界4位の経済規模に成長することが見込まれている(40年時点で日本はGDP5.9兆ドルで世界5位)。

  7. 2021年にEコマースのGojekとTokopediaが合併して誕生したGotoの売上はインドネシアのGDPの3%、1億人以上の国民が電子決済からショッピングまで年間800億ドルを費やしている。

  8. 2024年に総工費約4兆円をかけ計画されているカリマンタン島東部「ヌサンタラ」への首都移転。フィンテックの企業が集積する都市を志向。

  9. 首都移転の背景として上げられているジャカルタがあるジャワ島への一極集中(国土の6%の場所に全人口の半数以上にあたる約1億5000万人が居住)。その他地盤沈下による洪水のリスク、巨大地震のリスク等

  10. 2036年の夏季オリンピックの新首都への誘致に意欲

もちろん全てバラ色という訳ではなく、2024年のジョコ大統領の任期終了後の後継者問題、製造業が弱いこと、技術力を持った人材不足等、課題は数多くあると思われます。ただ、例えばGojek創業者で現在38歳のNadiem Makarim氏のような人物を2019年から教育大臣に据える等、可能性を感じられるような兆しもいろいろなところでみられます。

いずれ経済規模で日本を追い越すことが見込まれているインドネシアですが、脱炭素・気候変動対策という観点で見ると、EV、EVバッテリー分野で投資を進める、或いは日本の低炭素技術を輸出し脱炭素への「移行」を進めるパートナーとして関係を深める等、その付き合い方含め、学べる点が数多くありそうです。

インドネシアのことに関してはお恥ずかしながら今まであまりに無知だったのですが、気候変動対策というグローバルな取り組みに関しては、あらゆる国からヒントや学びを得ることができるのではないかと感じてます。今後意識的にインドネシアの動向を注視していきたいと思います。

同じタイミングで掲載された以下の特集記事もインドネシアでの現地取材を踏まえ、現在・未来の姿に関してとても詳しく報じられています。


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