野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)
地域循環という国家戦略って、ありですか?
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地域循環という国家戦略って、ありですか?

野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)

20世紀はあらゆる地域が似通った街になり、個性がどんどん失われていく時代であった。日本のように小さな国土にこれほどまでも多様な自然と文化のあふれる国家にとって、地域のコモディティ化を進めることほど、ほんとうにもったいないものはない。

この記事では、ヒト・モノ・カネ・自然・文化などの資源を地域循環させることで、あらゆる地域を唯一無二の存在にしていくという国家戦略について考える。

現状: 地域経済は後退するばかり

次の記事では、地方の赤字路線が次々と廃線になるか、または自治体が公共インフラとして税金でカバーするようになってきていることを報じている。

公共交通の危機は、もちろん人口減が最大の要因ではあるが、学生の通学に売上を頼るなど、大人たちが自家用車を使ってしまうことも大きな原因であろう。

2050年までにカーボンニュートラルの実現が必須ななか、公共交通の利用率を大きく増やすことが求められる。公共交通を単なる資本主義の原理の中で廃線にするのではなく、カーボンニュートラル時代の交通システムを設計する必要がある。

課題: 地域は自分たちの資源が何かを知らない

地域経済を立て直すという話になると、すぐに観光客や企業の誘致ということを考えてしまいがちだ。日本各地がこのような施策に走り、また国もそれを資金的に後押ししたものだから、各地域が似たようなメッセージを発信し、顧客の取り合いを演じてしまった。それが、地方創生の最大の反省点である。

日本の地域でワークショップをすると、その土地ユニークなヒト・モノ・カネ・自然・文化などの地域資源のネタが、必ず豊かに出てくる。これを地域の資源をしっかり引き出し、そこから地域の未来の可能性を考えると、まったく違う地域ビジョンが生まれてくる。その地域ならではの大胆なビジョンが生まれたときに、地域の参加者たちの目の色も変わる。

着眼点: それぞれの地域循環を国家レベルで調整する

北海道大学の研究拠点が進めている、食とエネルギーの地域自律を実現するプロジェクトがある。私はこのプロジェクトの未来シナリオづくりと、各地域での社会実装のためのプログラムづくりを手伝っているのだが、これがなかなか面白い。

その地域の自然と一次産業を見ていくだけでも、その地域にしかない唯一無二のブランドをつくることができそうな個性的なコンテンツにあふれている。しかし現実的には、たとえば美味しい魚がとれる地域ほど、そのままの素材を出荷してしまうため、その地域の文化になりきれていないことなどもある。

北海道大学の研究グループの提案は、「それぞれの地域でどんな地域資源があるかを把握し、それらをそれぞれの地域で循環させることで、それぞれの地域に特有の産業と人財を育てる」ということだ。つまり、一次資源でブランド化するのではなく、特有の資源をその地域の中でのバリューチェーンとして育むことによって、産業と文化を育てることをめざすのだ。貝殻など、これまでごみにしていたものについても、できるだけゼロにする努力が、その地域ならではの文化を生むことになるだろう。

こういった地域循環をそれぞれの地域が徹底して進める、そんな「ユニーク化」を進める国家戦略、打てないものだろうか。

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野村恭彦(Slow Innovation代表 / KIT虎ノ門大学院教授)
「渋谷をつなげる30人」「京都をつなげる30人」などを数年間続けてきて、イノベーションは「スローフード」のように、プロセスを大切にし、人と人との関係性をつくり、小さな変化がさざ波のように社会を進化させていく「スローイノベーション」に向かっていくのだと実感しています