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米中は本当に対立しているの?~資産運用インフラを巡り、ウォールストリートが中国にラブコール!?~

 最近、中国の研究者と話をする機会が増えつつあります。交流した中国の研究者の中には、熱心に日本の経済データで実証研究をしている方も存在します。個人的に不思議に感じたのは、彼らが、経済大国であり、経済成長が続く中国やアメリカの経済データでなく、日本の経済データを活用していることです。理由を、その中国人研究者の方に聞いてみると、

「日本は超少子高齢化の影響も重なり、経済力が低迷していった。日本の経験を研究することは、中国がこれからどうあるべきかを探るのに活かせると考えているからだよ」

との返答が返ってきました。なるほどなぁと関心する一方で、少し寂しさも感じました(もちろん、日本の経済データを活用する中国人研究者のすべての方がそう考えているかは別ですが)。そして、中国が日本を参考にしている影響もあってか(!?)、中国は猛烈に資産運用インフラの整備に励んでいるようです。資産運用インフラを整えるために、アメリカの金融機関の中国進出を緩和する制度設計も進んでいるようです。下記の記事にもある通り、世の中一般の認識としては米中の仲は対立しているイメージを持つことが多いですし、実際に米中間でそのような行動が見られます。しかし、米国の金融業界と、中国政府の関係性は少し違うようです。


なぜ、中国はアメリカ金融機関の進出を許すのか?

 下記に添付したFINANCIAL TIMESの記事を見ると、中国がアメリカ金融機関の進出を促したい背景が垣間見えます。中国は、産児規制を緩和して夫婦一組に3人まで認めるなど、子供の数を増やしたいと考えています。その理由は、日本以上の深刻な高齢化社会が待ち受けているからです。

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 当然ですが、高齢になりリタイアした後も、生活資金は必要です。しかし、今の中国にはライフサイクルに合わせた資産運用インフラが、他国に比べると脆弱と報道されています。このままでは、遠くない未来に途方に暮れる高齢者が増えるかもしれないと中国政府は考えて、他国の金融機関の進出緩和を行うことで国民の資産運用インフラを整備しようと考えているようです。ゴールドマンサックスの資産では、中国の個人資産の約60%は不動産で、約24%が現金または預金と算出しています。中国というと、個人投資家が株式市場に熱中しているイメージがありますが、とても意外な比率であり、歪です。仮に、不動産市場が崩れたら、個人資産に甚大な影響もでることでしょう。この歪みが、規制緩和によってどのように変化するのか注目です。また、日本もこれに近い個人資産比率なので、参考になることが多いと思うのです。

米中の政治リスク

 ただし、アメリカの金融業界と中国政府が懇意でも、両国の政府間は対立を感じるニュースが多いです。実際、アメリカのテック企業の多くは中国への進出を断念しました。金融業界だけは別となるのか…。今後の展開に注目ですね!


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崔真淑(さいますみ)

*冒頭の画像は、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』の画像より。無断転載はお控えください♪


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