見出し画像

現場主義を経験すると、その経験が、他の職域でも生かせる

私の最初の現場主義体験

 日経COMEMOで、 #現場主義で得られたこと  という、意見募集を行っていたので、私の経験と、そのから私が感じていることや、現在活用していることについて、紹介したいと思っています。

 私のビジネス・パーソンのスタートは、花王株式会社の研究員としての仕事からでした。私は、今は、「マーケティング」「デジタル・トランスフォーメーション」「データ・サイエンス」などの仕事などを行っていますが、最初は「数学」と「数値シミュレーション」が私の仕事でした。

 当時の花王は、世界で最初のコンパクト洗剤「アタック」を市場に出してから、約5年経過した頃でした。5年経過しただけなのに、早くも私たちのヒーロー商品「アタック」の店頭価格が下がり始めました。そして、研究室の会議などで、当時のアタックの価格の低下の話題が良く出ていました。「あんなに技術を集結した商品も値段が下がると、下がるの早いね」などと。私は、そのような会話に入れず、ぼーっとしていました。すると、良く先輩たちが、「お店に観察に行こうね」と、何度もアドバイスしてくださいました。

 当時の私は、研究員であり、自分の研究の「仕事」と店頭で売られている「商品」との関係はきちんと理解しておらず、「お店の観察」の重要性は理解していませんでした。でも、時々お店に行き、花王の商品を意識的に見るようにし始めました。

現場体験が増えると、ビジネスのヒントも増える

 このような「お店の観察」を行い続けると、それまでお店で見えていた視点が、「商品」から「商品関係者」に広がっていきました。商品の陳列の棚の前を通り過ぎるお客様、商品を手に取ってくださるお客様、そしてその商品を並べてくださった店員。私が、見ている商品は、これらの関係者が残した、いわば足跡です。

 いつしか、私の興味は、「人間」に変わっていきました。なぜ、このお客様はこの棚の前を通ったのか?なぜ、このお客様は商品を手に取ったが、商品を「かご」に入れなかったのか?なぜ、このお客様は、商品棚の前で、立ち止まっているのか?

 まさに、「人間行動観察」、さらにはお客様がいない棚の前でも、「人間行動妄想」を行うようになりました。

花王では現場という言葉は良く聞き、教わった

 花王では、下記のいくつかの記事にあるように、「現場」という言葉を、消費者との関係でも、社員との関係でも良く使います。いわば、花王の中では、お店の観察という現場主義は、多くの社員が何も疑問を持たずに行う行動です。

 そして、私も花王に入社したからこそ、この現場主義の行動を、先輩から教わり、そして、自分の中に染み込ませることができました。

 私の在籍時代にも、私の時代の社長とも対話の時間もありました。やはり、現場で「感じて」、「考える」というのは、ビジネスにおいて、多くの気づきを与えてくれるものなのでしょう。実は、このことに気づいたのは、ビジネス・パーソンを長く行い始めた、40代後半頃で、この現場主義的な行動と、観察から得られる思考が、私の強みだと理解したのです。

デジタル・マーケティングでも現場主義を

 私は、花王での研究時代を終えて、花王でのデジタル・マーケティングの仕事につき、今は花王を離れて仕事をしています。しかし、私の新入社員時代の、現場観察から発展した、「人間観察」は生かされています。

 私のお気に入りの現場は、「電車の中」です。電車の中で、他の乗客が何をしているのかは、ついつい見入ってしまいます。

 例えば、花王時代の癖では、いまでも電車の中で女性がメイクを直していると、そのメイク方法やおこなっているメイクを観察してしまいます。

 さらには、電車の中でどんなメディアを見ているのかは、ついつい気になります。皆さんもお気づきのように、今や電車の中で雑誌を開いている女性は少なくなりましたよね。では、その雑誌を携帯しなくなった女性が、全員スマートフォンを開けているかといえば、そうでもありません。私は、これらを見ながら、「なぜスマートフォン開いているのか」「なぜスマートフォンを開けていないのか」などを考えるのが、癖になってしまいました。

 そして、この電車の観察は、私が花王時代にデジタル・マーケティングを行っていた時には、重要なデータでした。スマートフォンを開く乗客が増えた時には、花王のサイトのスマートフォン対応の強化などに取り組みました。

この現場主義は、今必要な行動かもしれない

 さて今は、多様性の時代になりました。私は、良くマーケティングの授業で、自分が普通でない、自分がメジャーでないと考えることが、マーケティングの視点で重要だと話しています。多様性よりも一様性の高い時代には、マス・マーケティングが主流で、ヒットの商品の開発が、マーケティングでの重要なテーマだったでしょう。

 しかし、多様性の時代には、「ヒット商品」という言葉には、あまり価値がなく、お客様が求めている商品を提供することが重要なテーマです。そのためには、お客様を固定概念なく、理解することが重要で、その理解の過程では、時々、自分の経験が邪魔をするのです。

 このお客様の観察は、まさに「現場主義」的な行動だと思うのです。

 現場に行けば、見たことない景色があります。現場に行けば、想像できない行動が存在します。この景色、行動を観察し、「なぜ」と考えることが、多様な時代のビジネスの重要なピースかもしれません。

 つまり、多様性の時代だからこそ、「現場主義」は重要で、私はその「現場主義」を実行できているからこそ、私の仕事の領域を変えても、ヒントのもらい方を知っているので、活動できていると思うのです。

 私が、「 #現場主義で得られたこと  」は、世の中から、ヒントのもらい方を体得したことなのでしょう。

もし良ければ、サポートをお願いします。今後の執筆のための、調査費用などに、有効に活用して、記事としてお戻しします。