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感染対策で世界の企業に広がるリモートワーク/在宅勤務

 新型コロナウイルス(2019-nCoV)の広がりは、世界のビジネス環境にも影響を与えている。中国では春節(旧正月)の休暇が明けた後も、企業に対して従業員の出勤を禁止とする通達を、武漢市の他にも、杭州市・上海市・広東省などの自治体が出している。ただし、在宅勤務による仕事は認められることから、リモートワークの環境を整えている会社と、そうでない会社とでは、今後の業績にも大きな違いが生じてくるとみられている。

しかし、一部のIT企業を除くと、中国で在宅勤務のノウハウは確立しておらず、リモートワークツールの準備ができていない、家庭環境によってネットは回線やPCが使えない、さらに、自宅で仕事をするペースが掴めないなど、中国現地では混乱が起きている。

一方で、外出をして病院へ行くこともままならない状況の中で、リモートワークは、生命線としてのインフラを担うようにもなっている。中国で普及しているメッセンジャーアプリ「WeChat」の法人版には、契約企業の従業員が体調を崩した時に、テキストやビデオチャットで、提携病院の医師に症状を相談できる機能「WeChat Smart Hospital」が用意されている。

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2019-nCoVの感染対策でも、在宅勤務中に体調が悪化した時には、病院に直接行くのではなく、まずはオンラインチャットで提携医師に相談をすることで患者同士の交差感染を防ぎ、適切な治療の受けるまでの時間が短縮される。

今回の感染被害が広がった要因としては、もともと中国では、国民1000人に対して医師の数が2人しかおらず、病院で診察を受けるまでに長時間待たなくてはいけないことがある。そのため、企業の福利厚生としてオンライン医療相談サービスに加入しておくことは、従業員の感染被害を減らして、業務への支障を生じにくくする策として有効であることが、実証される形となっている。

また、シンガポールでも、中国本土からの帰国者に対して14日間は会社に通勤することを控えて、在宅勤務で働くことを推奨している。企業側にも、在宅勤務で対応できない場合には、有給休暇や年次休暇として扱うことを求めている。米国政府も同様に、私用または出張で中国から帰国した者には、雇用者が在宅勤務または有給休暇の選択肢を与えることを推奨している。

企業の危機管理としても、感染の疑いのある社員には、出社禁止の指示を出して、在宅勤務に切り替えられる体制を構築することが急務の課題として浮上している。 これは、2019-nCoVに限ったことではなく、他の伝染病、テロ事件、自然災害にも通じる対策として、世界の企業に広がっていく可能性が高い。それは日本でも共通した方向性だが、総務省の調査によると、国内企業のテレワーク導入率は、2017年の時点で約13.8%と低い。

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フリーランスの業界では、好きな場所から働けるスタイルが普及しつつあるが、企業が実施する雇用型テレワークは、リモートツールの選択から従業員の時間管理やモチベーションの維持まで、円滑な在宅勤務のスタイルを定着させるまでには、多くの課題がある。

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