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『すずめの戸締まり』:ドイツのメディアも注目

ドイツでは『すずめの戸締まり』は2週間ほど前に上映がスタートし、そろそろ終了しようかというタイミングです。新海誠監督の今作はドイツのメディアの注目度が高ったのが印象的です。今回はそのあたりについて、情報をまとめてみます。

今作の世界的なヒットにより、制作元の東宝も増収増益を確保したそうです。

ドイツの映画業界誌『Blickpunkt:Film』によると、公開初週はチャート4位にランクインし、8万3689人を動員し、84万8745ユーロを売り上げました。翌週も5位と健闘し、動員数2万9828人、売上高36万4889ユーロの興行成績を積み増しました。2週分をあわせると、観客10万人以上、売上高100万ユーロ超えを達成したことになります。新海誠監督の過去作に比べると、筆者が過去にまとめた情報によると、およそ『君の名は。』は6.5万人、『天気の子』は7.2万人だったので、『すずめの戸締まり』はドイツでも過去最大のヒットになったと言って良いと思います。

今作で筆者が気になったのは、メディアの注目度です。

ドイツの新聞メディアでは、『フランクフルター・アルゲマイネ・
ツァイトゥング』、『南ドイツ新聞』に加えて週刊紙『ツァイト』が特集記事を掲載しました。ドイツ語圏の主要新聞メディアだとスイスの『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング』がありますが、検索しても特集記事は確認できませんでした。

新聞以外では、公共放送の文化チャンネル「3sat」が6分間にわたり取り上げてました。ベルリン国際映画祭での監督へのインタビュー映像のほか、日本の震災報道も交えて紹介し、現実に発生した震災をテーマにしている点を強調しています。

公共ラジオ放送の文化チャンネル「Dlf Kultur」は、ドイツ全土の映画館されている日本のアニメとしては、ポケモンも人気だし、「マリオ」も好調と前置きした上で、今作がアートしてそれらとは一線を画すと作品の魅力を紹介していました。

そして、ドイツ北部の公共放送「北ドイツ放送(NDR)」は、ラジオのニュース番組で作品のドイツ語音声を引用しながら、映画の公開を伝えていました。

もちろん、ドイツのアニメ専門雑誌『AnimaniA』も、独占インタビュー記事を掲載するなど力が入ってました。


ドイツのメディアが注目した理由について考えてみたいと思います。

筆者の知る限り、ドイツで日本のアニメ作品がここまで一般のメディアに注目されたケースは珍しいです。

注目されるきっかけとなったのは、やはりベルリン国際映画祭で最優秀賞の「金熊賞」にノミネートされたことでしょう。世界的な映画祭ですが、本国のドイツでは元から注目度が上がります。さらに、その熱狂が冷めやらぬ翌月に本作が上映開始された点も貢献したのかもしれません。


最後に、個人的な感想については深入りしないでおこうと思います。この『すずめの戸締まり』はドイツ語音声版で、ドイツ人の友人と一緒に見ました。鑑賞後にハーブティーを飲みながら、意見交換したわけですが、筆者はそもそも「3.11」を日本で経験していません。当日はベルリンにいました。今作は、日本人が震災のトラウマと向き合う作品だという見方があるようですが、筆者が感じたものは日本の日本人とは多少違うのかなとも思い、言葉にならないもモヤモヤを感じています。。。


タイトル画像:ドイツのアニメ専門雑誌『AnimaniA』の表紙(2023年4/5月・第3号)

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