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カルロス・ゴーン氏騒動から、日本のビジネスパーソンが学ぶこと②:組織内トラブル編

カルロス・ゴーン氏の事件に関わってくるのは、誰もかれも非常に優秀な人々ばかりです。2017年にはトヨタを抜き、世界第2位の販売台数を達成させたビジネス界のリーダー達や日本を代表する法曹界の面々が全力を尽くしていますが、問題は解決するどころか一層混迷しています。非公式の場とはいえ、安倍総理が「社内だけで処理して欲しかった」とついぼやいてしまったという話も聞こえてきます。問題の解決、特に組織内での紛争の解決は非常に困難です。


諫言や衝突ができない組織はいつしか致命傷を負う

ゴーン氏の事件ほどではないにしろ、組織内における衝突や紛争、葛藤は大なり小なり日常的に存在します。これらの衝突や紛争は、上手くコントロールできれば、組織にメリットを生むが、一歩間違うと致命傷にもなりかねません。

衝突や紛争のコントロールの重要性は、歴史的にも古くから指摘されてきました。儒教は目上の者を敬うのが有名な特徴ですが、孔子は、君主が間違っていたら嫌がられても注意するのが臣下の務めであると説いています。また、古代中国の春秋時代の名宰相として評価の高い晏嬰は、上を憚ることなく諫言を行い斉国を繁栄に導きました。四書五経の1つである『礼記』にも「三度諫めて聴かれざれば、即ち、これを逃る」とあり、同様の言は「微子開(殷の紂王の兄) 人臣三度諫むれども聴かざれば、すなわちその義、もって去るべし」と司馬遷の『史記』にも認めることができます。

当然、行き過ぎた衝突や紛争は組織のパフォーマンスを下げます。2008年、4月2日に公開された、米国CIAが第2次世界大戦中に公開した敵国の生産性を下げる工作活動のマニュアル『Simple Sabotage Field Manual』には、「前回の打ち合わせの内容について再度疑問を持ち発言し、疑問を問う」「全てにおいて注意するべきで、いつも常識的に行動し、急いで処理すると後悔することになると話す」など、無用な組織内の衝突や諫言、紛争を起こすことで、妨害工作をするように記載されています。

つまり、人類は長い歴史の中で、組織内の衝突や紛争、諫言に葛藤といった「コンフリクト(Conflict)」を上手くマネジメントすることが組織の生産性を高め、持続可能な発展を保証するのだと理解してきました。にもかかわらず、現代においても、コンフリクトによる問題は後を絶ちません。

しかし、経営学では、どのように組織はコンフリクトを統制していくべきか、コンフリクト・マネジメントの領域で多くの知見を残しています。


コンフリクト・マネジメント

コンフリクト・マネジメントとは、対立や衝突を戦略的に活用して、組織変革や強化に役立てようとする手法です。コンフリクト・マネジメントでは、原因となる対立には3つの領域があると考えられています。

① 条件の対立:立場や役割の違いから来る対立

② 認知の対立:戦略や方針に対する考え方や価値観の違いから生じる対立

③ 感情の対立:「嫌い」「腹が立つ」といった感情面での対立

コンフリクト・マネジメントでは、「③感情の対立」になると解決が困難であると考え、「①条件の対立」や「②認知の対立」がこじれて「③感情の対立」になる前に対策を講じるという流れが基本になります(当然、基本なので例外や応用はあります)。

例えば、最初に双方の意見を出し合い、相容れているところと対立の原因となっている相違点を洗い出すことで、何が原因で対立しているのかを探るといった行動をとれます。そこから、双方が納得できる点を話し合ったり、意見を改善していくことで生産的な議論が可能になります。

また、対立が生じた時に、組織やプロジェクトの目標やビジョン、達成すべきミッションに立ち返り、そこから何を議論すべきかを整理することも有効です。


感情の対立を事前に防ぐことが最重要

コンフリクトを活かし、生産的なものにするためには「③感情の対立」が起きるのを防がなくてはなりません。しかし、不満や違和感をメンバーが押し殺してしまい、矛先を向けられた相手からは前触れなく感情の対立が生じてしまうことが少なくありません。そうすると、対立を防ぐために、当事者同士で腹を割って話してみようと言い出したところで、火に油を注ぐことになってしまい、余計に事態を悪化させることにもなりかねません。

もし、条件や認知の対立で解決できそうにない場合や、感情の対立にまで発展してしまった場合には、自分たちの力だけでなんとかしようとするのではなく、プロの力を借りることも有効な手段といえるでしょう。例えば、日本産業カウンセラー協会は、日本中に支部を持ち、相談役となる産業カウンセラーを紹介してくれます。

組織内のコンフリクトは、カルロス・ゴーン氏の事件が示す通り、優秀な人材が揃っていても簡単に解決できるものではありません。そういうとき、いきなり思いつめた行動に出たり、自分たちだけでなんとかしようとするのではなく、専門家の力を借り、うまくマネジメントすることが良い組織を作ることに役立つと言えるでしょう。

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