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地球の反対側で、和食店がミシュラン星付きレストランの半数を占める

今年5月に発表されたミシュランガイド・ブラジル版

掲載されている星付きレストランの軒数は18店舗。その点では、美食の国として知られ、800店舗近く掲載されている日本とは比較になりませんが、そこはまだまだ伸びしろがあると前向きに捉えるとして。

ここで注目すべきは、日本料理店がこの18店舗のうち、実に7軒を占めている点です。リストはこちらの記事を参照のこと:

この店舗数は、料理のジャンルとしての最多勢力となっています。地元・ブラジル料理店は6店舗で、続いてイタリアンは3店舗、フレンチが2店舗です。ただし2つ星を得ている3軒については、いずれもブラジル料理店となっています。

ブラジル最大の都市サンパウロは、ブラジル随一の美食都市と評されますが、ここに限定すれば、星付きレストラン12店舗の半数にあたる6店舗が、日本食料理店です。

その中には、本場・日本で培った腕を振るう日本人シェフのお店と、ブラジルらしい遊び心をもったコンテンポラリーな和食を提供する日系人シェフのお店の両方が含まれています。

普通の食生活がブランドを作った

元々サンパウロには、1980年代まで続いた日本移民の多くが集住し、日本人街と呼ばれたリベルダージ地区を中心に、多くの日本食のお店が軒を連ねていました。

移民の大半が農業に携わっていたことから、日本人にとっておなじみだったり、日本食に欠かせないような食材の生産も近郊で行われ、今でも続いています。市場に野菜を買いに行けば、まだ日本語が通じます。

各地の日系コミュニティで行われるお祭りでは、ブラジル人の口に合う「ヤキソバ」や「テンプラ」がふるまわれ、ブラジル人もそれが楽しみで、日本文化に興味が向けられるようになりました。ブラジル人が、最初から寿司や刺身を食べていたわけではないのです。

2000年代に入り経済成長で豊かになる一方、成人病が問題化し、健康的な食生活を求める人が増えました。その時に、魚や野菜を中心に脂っこすぎない「日本食は健康的」というイメージを抱くブラジル人が増えました。

ファストフードからミシュランガイドまで

そんな日本食文化の中でも爆発的にヒットしたのが「テマキ」です。

手巻き寿司をファストフード的に提供する店が急増したのが、今から10年くらい前のことでした。サンパウロに限らず、このブームは地方都市にも波及しました。

醤油皿もなく、シャンプーのようなポンプ容器で手巻きに醤油をかけて食べるスタイルのお店もあり、衝撃を受けたことがあります。こういうの、本当によく考えますよね。

若者が夜通し遊んだ後、最後の腹ごしらえにテマケリア(=手巻き屋さん)に立ち寄る。そんなスタイルがあったために、明け方まで営業する店もあったほどです。板前さんはブラジル人で、多くの店はカウンターで注文してささやかに並ぶテーブルで食べるという、本当のファストフード・スタイルでした。

ちなみに、普通の寿司ではなく「手巻き寿司」が流行ったのは、この円錐形の形がソフトクリームを連想させ面白く、しかも「健康的に腹を満たせるもの」が手軽に食べられそうだから、ということでした。

このように、一部では独自の進化を果たしたものの、日本食文化の下地が整っていたのがサンパウロです。

ブラジルの地方都市に商機あり

実はサンパウロでは今、ラーメンと居酒屋がブームとなっています。

こうしたお店も、食べに行くと最初は日本人や日系人が客層の中心でしたが、今ではブラジル人の方が多いとすら感じるほどに注目を集めるようになっています。

一方で、カレーライスのように未だにブームとはなっていない日本料理(?)もあります。

生活水準を考えると、サンパウロやリオ以外の地方都市からミシュランの星を得そうな日本料理屋はなかなか出てきそうにありません。

しかし別にミシュランガイド掲載を狙わずとも、ブラジルの美食界をけん引する日本食は、最大都市のサンパウロですでにそのブランドが確立されています

それを利用して、未だ広く提案されていない料理を提供したり、あるいは敢えてサンパウロを離れた地方都市で「手巻き」以外の日本食をビジネスとするのは、実はまだまだブルーオーシャンと感じています。


参考記事:ジェトロ・ビジネス短信「ブラジル・ミシュランガイド、日本食が存在感を強める」


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地球の反対側からお礼申し上げます!
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平野 司 @サンパウロ / tks brasil

ブラジル18年目。日本でIT企業に4年間勤務。首都ブラジリアのコンサル企業に26歳でインターンを経て転職。2015年サンパウロで独立。在ブラジル企業サポート / 進出支援 / 人材育成 / COMEMO by NIKKEI KOL / twitter:@tsukasahirano

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