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「娯楽のUI」で任天堂のデザイナーから学ぶエンタメの真髄

去る4/27、UI Crunch「娯楽のUI」というイベントが開催されました。

任天堂のUIデザイナーの皆様が自社ゲームのUIデザイン手法を語る貴重なイベント。募集開始から大きく話題になり、参加倍率は38倍(!)で落選者が多発…という激戦でした。

© etsuko_ichihara

noteにて色々と詳細なレポートが上がっておりますので、イベントの全貌はこちらをご覧下さい。

https://note.mu/sakamichiyuki/n/ne7a1764119a9

「楽しさ・新規性ありき」のゲーム開発では明確にターゲットを決めない!?

会場の質疑応答において「任天堂のプロダクトのターゲットは大人から子供まで幅広いが、デザインや開発で意識していることは?」という質問があったのですが、その回答が個人的に衝撃でした。

© etsuko_ichihara

現場のデザイナーさんによると、なんと「ゲーム開発のターゲットにおいて5歳から95歳まで大人と子供を分けて考えてない」とのこと。

「子供は子供扱いが好きじゃないから、子供向け仕様にすると逆にバレる。子供の好奇心は強いので、大人より柔軟だったりもする。なのであまり大人と子供の線引きはしていない」……と断言されており、驚きました(多少のレベル設定等は考慮しているとは思いますが…)

課題ありきのWebサービスと、新規性や面白さありきの娯楽の違い

私はもともとヤフーのインハウスデザイナーとして数年勤務しており、利便性を重視するWebサービスのデザインをしていた者からすると驚くべき話。

サービス・プロダクト開発においてはペルソナ(想定ユーザー像)を設定するのが当然だと思っていたのですが、エンタメ・娯楽のプロダクトに関しては(少なくとも任天堂社内では)ターゲティングをしないそうです。

デザイナーさんいわく「Webサービスの場合は特定の誰かの課題を解決するためにマーケティングが大事になるけれど、ゲーム開発の場合は新規性や驚きが強い要素になるので、ターゲットは定めず面白さに全力投球する」とのこと。

ただ実際に、私も今まさにエンタメ系プロダクトの企画書を作っているなかで、本当にターゲティングがしにくくて悩んでいました。

「特定の誰のため」ということが決めにくく、ウンウン唸っていたのですが、娯楽や面白さ重視のものに関していえばそれで良かったのか!と目から鱗が落ちた瞬間でした。

世界中を笑顔に、ということだけ考える

ちなみに「5歳から95歳まで」という考え方は故・岩田社長が提唱していた概念だそう。現場のデザイナーさんにもその理念が徹底しているところに任天堂の凄みを感じます。

「世界中を笑顔に、ということだけ考えて、ターゲットは考えていない」と言い切るデザイナーさん。

スーパーマリオやポケモンをはじめ任天堂のゲームは世界的に人気がありますが、明確にターゲティングしないからこそグローバルに広がっていく側面もあるのかもしれません。課題ありきのワークフローではなく、楽しさ・面白さありきのワークフローに振り切って、私も世界中に波及する可能性のある娯楽を開発してみたいという野望が湧きました。

「娯楽」「エンタメ」を通して世の中を良くしていきたい、というデザイナーの皆様の志に触れて初心を取り戻せる、素敵な回でした。

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