見出し画像

通称と戸籍の名前が違う仕事人生のジレンマあれこれ

選択的夫婦別姓にまつわる最高裁の判決。私も非常にガッカリしていた人間のひとりです😩

婚姻に伴う女性の苗字の変更について、「旧姓を通称として仕事では使えばいいじゃん。それで終わりなのに何の問題があるの?」というご意見もあるかと思います。
が、「割と本名っぽい芸名」を通称として使っている自分からすると、それに近しい煩雑さが日々起こりまくっているので、
「名前が違うの、結構大変やで」というその内情を書いてみたいと思います。こういったトラブル、婚姻後の事業主女性にも起こりまくっているかと思います。

海外取引先との契約・事務手続きにおいて重大な手戻りが多発

特に海外との取引だと戸籍の名義と通称が違うことが致命傷になりやすく、
仕事で使っている名前の「Etsuko Ichihara」で契約書サインしたあとに戸籍の名前と違うことがわかって全部やり直しになり、国際便でわざわざヨーロッパに書類を送り直し、結構な額面のお金の入金が3ヶ月ほど大幅に遅延しました(しんどい)。

あと海外の取引先に航空予約や宿の予約を手配してもらう時にも割とヒヤッとすることがあります。「あれ、どっちの名前で予約されたんだ?」というのがわからず窓口で「そんな予約はない」と言われたり。
航空手配の時も、「パスポートの名義は!!!〇〇ですからね!!!」と先方に入念に念押ししないと「名義が違って乗れませんでした」となる可能性もゼロではないので毎度肝を冷やします。

画像2



またセキュリティの高い施設に入構したり、海外に来た目的を説明する場面がある時に「私の名前が現地のこのパンフレットにも掲載されている」と説明しなければいけないですが、
日頃仕事に使っているアーティストとしての活動名義とパスポートの戸籍名義が異なるため、公的に掲載されている実績が自分のものである、と証明するのにも一苦労。母国語&日本語圏の情報ベースならばまだ良いですが、慣れない言語だと難易度ダダ上がり。
私はアーティストで顔を出して活動してるのでまだマシですが、例えば論文投稿とか完全なるテキストベースでのお仕事だったりするとめちゃくちゃ大変だろうなと思います。

名前に紐付いた実績のリセット

技術特許を3件発明して知財を保有しているのですが、戸籍名義での出願が基本的に義務付けられているため、日本の法律婚で戸籍名が変わったらそれらもイチイチ変更しないといけないのか……と思うとゲッソリ。
事業主にとって「戸籍上の名義」を出さないといけない重要な公的手続きは、数え切れないほど多いです。

ただ煩雑なだけでなく、研究など業績の蓄積が必要な職種では、名字が変わることによりそれまでの業績が失われることにもなりかねず、キャリア形成や実績の上で大きな損失に……。

私生活に対するプライバシーの問題

活動名と本名ではなく、法律婚により氏名が変わった場合の女性事業主へのデメリットとして、プライバシーの問題もあると思っています。
「結婚は社会的なもの」とは言いますが、個人的にはゴリゴリのプライベートじゃないか……?と思うので(もちろん大々的にお披露目したい人もいるだろうが、仕事柄なるべく公表したくない人もいる、特に人気商売の人にとっては繊細な事情では)
正しく戸籍上の名前を取引先に出さないといけないことが多いビジネス上の事務手続きでいちいち「私は結婚しています!!お相手の苗字は〇〇です!!!」と宣言しなければいけないようなものに感じます。めちゃくちゃプライベート情報漏れますやん
さらには結婚のみならず離婚した時に「私は離婚しました!!」までいちいち取引先に伝わるのか……(嫌すぎる)
パートナーや婚姻の有無って、プライベートだしデリケートな場合もある情報だし、ある程度仲良くなってようやく「もし失礼じゃなければ……」って聞くレベルのことだと思うのですが、それがフツーの事務取引レベルでダダ漏れになるのって……(白目)。特に近い業界内かつ変わった名字だと「はは〜ん、相手は〇〇さんか〜」って推察できますし。

(なお英語圏のMrs.とMs.で女性だけ未婚・既婚でいちいち表記分けるのも良くないなと思ってました。『Mrs』って表記も『男の所持物、従属物』みたいなニュアンスに見えるし、、最近は女性蔑視として見直されつつあるようですが)

画像1

家父長制がまったくの悪だとは思わないし、時代が違えばそのおかげで自分の先祖が守られていた時もあったのだろう(そして今の自分が生まれたのだろう)ことは想像できるので、そういった価値観も尊重したいとは思います。
それに「結婚したら仕事は辞めて家のことに専念したい」と思っていたり、伝統的な結婚観・男女観に基づいた結婚を望む女性も相当な数いるだろうしそれが悪いわけでは全然ないのですが(だからこその『選択的』夫婦別姓なのですが)、
逆に自立して働くことを重要視する女性にハマらず重い足枷になる制度設計になっていて、現代の自立した女性の働き方の実情とあまりにも乖離があるよなあ、、と思うので、
「女性活躍」を本気で推進していくつもりがあるなら選択肢として用意してほしい、本当に解消してほしい点だな、と願っております。頼みます……!


【追記】記事拡散後、共感のお声を多数いただいたので、こういう声がある……という可視化のために引用させていただきます▼


ご覧いただきありがとうございます!頂いたサポートは新たな自宅エンタメの試作費に使わせていただきます😎