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中国でのChatGPTの反響と評価。Baiduも同様サービスを発表し今後戦国時代突入か

Twitterやtiktokでは昨年末からChatGPTの話をたくさん見てきたのですが、最近では新聞でも取り上げられるようになってきたんですね。

中国でも連日ChatGPTや他のAIツールについての記事や投稿を目にします。グループチャットに利用したり、翻訳に利用したり、仕事のアシストに使ったり。画像や動画をAIを使って生成することでお金を稼げますみたいな投稿も多々あります。

また中国ネット民の皆さんの質問の意地悪さや回答の面白さなどがバズっていたり、他の中華類似サービスと比較してどうなのかも議論が進んでいます。今回は実際使っているネット民の声や中国大手の取り組みなども紹介しましょう。

まず、海外のSNSなどをことごとくブロックしている中国でChatGPT使えてるんですか?のそもそもの疑問に対して。アメリカ政府による規制なのか、中国の法規制に従うものなのかはちょっとわかりませんが(日本ではメールアドレスだけでサインアップ可能ですよね?)、実は現在中国ではオフィシャルルートでのChatGPTの利用はまだできないです。

現状はClubhouseの時と同様、海外の電話番号がなければ登録することができないです。ただ、それでもみんな、なんだかんだの形で利用していて、利用方法は検索すれば山ほど解説が出てきます。

そして、使ってみての感想や意見、議論は日々SNSを覆いつくすほどあります。海外や日本のメディアで煽られてるのと同様に、文書の作成や自分の仕事がAIに取られちゃうなどの心配の他には、チューリング・テストに熱中している人も多いです。

(画像:Bilibiiliから)

ZhihuやWeiboなどはもちろん、BilibiliでChatGPTで検索すれば、AIによる詐欺防止や、ChatGPTへのさまざまな面白い質問の動画がたくさんアップされ、再生回数が数百万回なものも少なくないです。

(このキャプチャの2番目の「強AI 対戦 弱知バー」って動画の意地悪質問も絶妙な答えもめちゃくちゃ面白くてツボでしたので、中国語のわかる方はぜひ調べてみてみてください。)

(画像:Weiboから)

議論の中で最初に一気にバズったのは、「AIは27が3で割り切れないと主張し続けている」という投稿でした。

(画像:Weiboから)

「27を素因数分解すると素数はない」と回答。何を言ってるんだこいつ、という感じ。中国ネット民から「マジであり得ない」の声。さらに頑張ってチャットで説得したのにちょっと時間が経つとまた自分の主張に戻るという“騙しのChatGPT”がWeiboでトレンドに入るほどバズりました。

(画像:Zhihuから)

他にバズってたのは「なぜChatGPTが中国ではなく、アメリカで最初に開発されたか」について。真面目な質問には真面目な答えがきまして、その通りだと思う人が多かったです(上記の中国語をChatGPTでの翻訳で見てください)

ここで補足の情報ですが、中国ではChatGPTのような文章チャットの他、関連開発を行っている大手もけっこう多いです。以下は主要企業たちがどういった分野のAIツールを研究とリリースしているかの一覧表↓

(画像:Weiboから)

最もAIに力を入れてる百度では、文字や音声、画像、動画、バーチャルヒューマンなど幅広く事業展開をしています。テンセント、アリババ、バイトダンスもそれぞれのジャンルで力を入れてます。

そしてBaiduは先ほど(2月7日)ERNIE BotというChatGPTと対抗するサービスをリリースすると発表していました。発表で株価も上昇しています

画像:Weiboから

ただ、ChatGPTの性能をうけて、実際に携わっている各業界人からの生の声には中国ネット民たちもちょっとびっくりしています。

投資関係のネットメディアの情報にを訳すと以下のようなものでした(元ネタは参考資料に)

・ChatGPTの優秀な性能にソワソワしてると同時に困惑しているAIベンチャー企業の創立者がいます。自社製品と比べてモデルの規模から機能まで大きな差がある
・国内某IT大手の大型モデルと比べ、ChatGPTの回答のロジックと完成度は遥かに上であり、解答のスピードも上
・デジタルヒューマン開発企業の創立者による意見では、中国国内の技術では今のChatGPTと対抗できるまで少なくとも2年以上かかる
・中国はそれぞれの企業が自社のモデルをトレーニングして広告したら終わりになっていることが1番大きい問題であり、現実世界での実用が欠けてることはChatGPTに及ばない大きな課題だと業界関係者が指摘している
・アメリカからチップの制限がかけられてるからトップ企業も計算能力の面ではアメリカ企業には全然及ばない

素直に今は完敗を認めている感じ。ただ、技術はまだ勝てなくても資本の動きはえぐかったです。

(画像:Weiboから)

これは2/6の投稿ですが、ChatGPTに類似の技術開発が行なわれている各上場企業の株が爆上がりです。

また、ChatGPTブーム前から中国ではAIGC(AI作成コンテンツ)が注目されています。ネット民の間では一時的にAIによる絵描きが流行りでした。以前AI画像生成について紹介しましたね↓

そしてAIGCの市場規模も夢があるものになっています。

(画像:Weiboから)

中信建投証券の試算によると、AIGCが最も期待されるジャンルはライブ中継とゲームであり、どれも200億元以上の市場があるだろうと。また、画像と音楽ジャンルでは最もAIGCの比率が多く、半分以上の市場がAIによる作品で占められると予測されました。

その他にはセキュリティや安全性、またChatGPTを使うことがサイバーセキュリティの対策に非常に効果的なのではないかという視点でも議論がされているのが特徴的でした。

すでに国内外の企業がChartGPTを使ってテストしているとのこと。高度なハッキングなどへの利用ももちろん考えられますが、もっと簡単なウイルスメールなどフィッシング攻撃に活かされる可能性が注意されていました。

人間の文章を模倣することに長けていることから言語に堪能でない攻撃者にとって強力なフィッシングツールになる可能性があると。日本のみなさんも外国人から変な日本語のショートメールなどを受信した経験があるかと思います。

ChatGPTを使えば、フィッシングと正規のメールを見分けるポイントになりがちなスペルミスや変な書式のないフィッシングメールを容易に作成することができ、目的別に様々なフィッシングメールを作成できるのではないかと懸念が。そして、こういったことを真っ先に思いつきそうな人たちが中国にたくさんいるんじゃないかと笑

一方で、サイバーセキュリティの権威の人たちの中には、今までの人工知能を用いたセキュリティソリューションは宣伝よりもはるかに実用性が低く、マーケティングチームによって誇張されていて不満だったとの意見も多く、ChatGPTへの期待は大きいそう。セキュリティのアップデートへの活用はもちろん、運用プラットフォームからデータを取得してレポートを作成するなどの自動化にも活用されていくでしょう。

「サイバー脅威の状況を大きく改善する可能性」も「巧妙化するサイバー能力の危険な進化がまた一歩進んだ」のどちらとも言えそうですね。どちらにせよ、今後はこういったツール有りきで物事を考えるのが当たり前になりそうで、知らない使いこなせない、といったダメージが非常に大きそうです。

この分野は日本でも注目されていると思いますので、詳しい実例なども別途紹介したいと思います。ぜひフォローしてお待ちください!

(参考資料)


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