「楽天ケータイ」の勝算はなにか?

ついに13年ぶりの新規参入業者が現れた。楽天である。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29189260Q8A410C1TI1000/?n_cid=NMAIL007

楽天モバイルは、MVNO事業者として2014年10月に格安スマホサービスを開始した。その後、プラスワンマーケティングが運営するMVNO事業「FREETEL」を買収するなど積極的な事業展開を進め、現在では140万以上の加入者数(2017年11月発表資料より)を抱えている。そこからさらにアクセルを踏み込もうというのが、今回のMNO事業者としての参入表明である。

NTTドコモなどの通信事業者(MNO)から回線を借りて、独自ブランドとして事業を展開するのがMVNOである。大きなメリットは全国をカバーするための巨額の設備投資が不要なこと、デメリットは薄利多売のビジネスモデルになること。つまり、ローリスク・ローリターンの事業である。すでに顧客基盤を持っている企業が、回線獲得コストをコントロールしながら新たな利益創出ができる点では非常に魅力的である。

一方でMNOとなると、景色が全く変わってくる。なにしろ、設備投資の額が巨大なのだ。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mca/1060388.html

楽天も当初は6000億円の設備投資を予定しており、電力会社グループ(関西電力、中部電力との提携を発表済み)が保有する送電鉄塔、配電柱、通信鉄塔などを借り受けることでコストを抑えるようだ。もちろんこれは単年度で完了するものではなく、その後も継続的に発生する投資であり、5Gへの対応などでそのコストは嵩んでいく。

新規参入ではないが、新たなブランドと再スタートしたMNOに、Y!mobileがある。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140729/269417/

当初はヤフーが買収する形で進めることが発表されたが、後に撤回。ソフトバンクグループの傘下として運営されている。格安スマホと比較しうる料金体系を維持しながらも、店舗も含めたフルサポートがある安心感により、順調に加入者数を増やしている。

http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/1018922/022800071/?rt=nocnt

現在ではヤフーショッピングなどのECサービスとの連携、そして「Tポイント経済圏」を利用した囲い込み施策によりさらに攻勢を強めている。

 「グループのサービスを使う会員がたくさんいる。複合的なサービスを絡めて割安な価格、快適な接続を実現したい」。三木谷氏は9日、報道陣を前に意気込んだ。 武器は本業の楽天市場で擁する9千万人の顧客基盤だ。楽天IDを持つ会員に、メールなどで携帯の乗り換えを呼びかける。楽天市場でたまったポイントを携帯料金として使えるなど、競合大手にはない利点を訴える。

「楽天ポイント」vs「Tポイント」の戦争が、携帯電話事業にまで飛び火した格好だ。一番の勝算は何か? 楽天カード・銀行を活用した回線獲得コスト(特にMNP)の最小化である。

楽天IDと紐付いたクレジットカードが多く流通しており、ここには楽天経済圏「以外」の支払いデータが溜まっている。2014年には購買履歴を分析する米国Slice社を買収している。

https://www.slice.com/

もし「ポイントがたまるから」という理由で携帯電話の支払手段を楽天カードにしている場合、支払い明細をみれば「どの事業者を利用しているのか」がわかる。また、楽天にログインしているIDから「どのメーカーのどのモデルを利用しているか」までも判明する。これらの情報を分析することで「いつ購入したか」を推定することはそれほど難しくなく、いわゆる2年縛りのタイミングを推定することもできる。このタイミングでピンポイントに「乗り換えたら3万ポイントプレゼント!」というオファーを出したらどうであろう。心動くユーザーも多いのではないだろうか。

いずれにしてもやや硬直化したモバイルビジネスに新風が吹き、競争環境が生まれることは消費者にとって望ましいことである。楽天モバイルの今後に期待してやまない。

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