平成の「敗北」・・・・・なぜ、リスクを取らないのか?

 平成の30年間に一人あたりGDPの順位、国際競争力などほとんどの指標で日本の地位が急落した。経済同友会の小林喜光氏が「敗北」と切り捨てるのはもっともである。

 それを受けて日本経済新聞論説委員の西條都夫氏も、リスクを取らない保守的な組織になったことが原因ではないかと述べている。私もその見方に賛同する。西條氏がいうように、考えられる他の要因は、その気になれば克服できたはずだからだ。

 だとしたら問題は、なぜ経営層がリスクを取らないのかである。その答はきわめてシンプルで、リスクを取るよりも取らないほうが本人にとってトクだからだ。ここでいう「トク」の中身は報酬や地位の安定だけでなく、社内での評判や人間関係(私の言葉でいうと承認)などが大きなウエイトを占める。リスクを取って失敗すれば、これまで血のにじむような努力をして築き上げてきた社内での評判、社員たちからの支持を失うだろう。事業の転換にしても統合にしても、たとえ失敗しなくても、それなりの「出血」は覚悟しなければならない。

 かりにリスクを取ることが会社にとって必要だとわかっていても、共同体型組織のなかで「承認」を失いたくないという意識が経営者を保守的にさせるのは当然だ。今さら晩節を汚したくないと思う人も多いと想像される。

 しかも、このような損得計算は経営者だけでなく、一般社員も同じである。いや、一般社員はもっとリスク回避的になるはずだ。それでは会社が変わるはずはない。承認のような目に見えない報酬を含め、リスクを取ったほうがトクな構造に変えなければ、元号が令和になっても平成の「敗北」はそのまま持ち越されるだろう。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43961980Z10C19A4TCR000/

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「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。

ありがとうございます。
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ohtahajime

同志社大学教授。専門は組織論。個人を重視する組織・社会づくりが研究テーマ。 新刊『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書、2019/2)のほか、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『なぜ日本企業は勝てなくなったのか』(新潮選書)、『個人尊重の組織論』(中公新書)など著書は30冊余。

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