「誰からリストラする?」の女子大生が出した答えから5年目の日本は?(上)
5年前の女子大生たちの答えが、現代日本社会でリアリテイを増している
「あなたは入社15年目の管理職です。あなたには部下が10人います。1人をリストラしなければならない状況になりました。管理職のあなたは、誰からリストラしますか?」
という設問を出し、学生がそれぞれ回答メモを書いたあと、グループディスカッションした。ある女子大での授業の一環。人の能力のあるなしを見極めるのは難しい。だから部下のこれまでの業績を勘案・熟慮して、いちばん業績があがっていない人をリストラせざるを得ないという答えが学生から導かれるだろうと、設問を考えた時に想定していた
しかしその女子学生たちの「答え」は180度ちがっていた
「最も能力の高い人をリストラする」という
答えが圧倒的だった
この結果をもとに、女子学生たちとディスカッションした。なぜそう考えたのか?彼女たちはこう考えた
能力の高い人間は、いつかこの職場を捨てるだろう。彼らを職場に引き留め、気をつかって大事にしたにもかかわらず、辞めていったときの会社のダメージははかりしれない。とするならば、能力の高い人間を先にリストラすべきだ
1 一円でも利益を出すのが会社
利益を生みだせない経営者がいる
利益を生み出せなければ、会社から去る。どうしたら利益を生むのかを悩むのだったら、利益を生みだせる人に席を譲ったらいい。会社を経営するためには、利益を生み出さないといけないという価値観と能力が大事である
あるマッサージ事業の経営者と話をしていて、マッサージは儲かりにくい事業ですよねというと、その女性経営者から怒られた
利益をあげることがいちばん大事
そういう意識がない企業人が多い
日本の企業は、この30年、会社ごっこ、組織ごっこ、人材育成ごっこをしているうちに、失くした観点である。会社は、利益を生まなくてはならない。株主からしたら、会社経営が利益を生んでいなかったら、金をださない
「1円でも利益を出す。
利益のないことは会社の仕事ではない」
このマッサージ事業の経営者の言葉が、心に響く。会社の人材をみるとき、利益を生みだせている人なのか、利益を生みだせていない人なのかと考えないといけない。会社の「会社ごっこ」が拡がるようになって、利益を生みだせない人が社内に増えすぎた。一円も利益を生めない課長、部長、役員は偉くない、要らない
会社は利益を生まないといけない
それが、とても大事な観点。そんなの当り前だと思われるかもしれないが、そんな当たり前ができていない人、企業が実に多い
2 自己責任・結果責任がない人
なにが会社に利益を生む資源なのか?
会社のなかの商品・サービス、技術や生産や現場や人材を、その観点で、総点検しないと、会社は社会から機能不全となり、浦島太郎となって生き残れなくなろうとしている
コロナでテレワークが突然始まったが、コロナ5類に移行してコロナ禍前のスタイル「元ワーク」に戻そうとしているが
元ワークに戻しても、利益がでなかった
テレワークで社員が一堂に会することが少なくなり、コミュニケーションがとれなくなり、生産性や創造性が低くなったので、テレワークをやめて、出社ワークに戻そうとするが
どうして会社に行かないといけないの?
という社員の問いに答えられない。昔のワークスタイルかどうかは関係ない。利益をあげることができるかどうかが重要で、利益を生むスタイルを構築して、それが有効であれば、どんなスタイルでもいい。利益がでないやり方には、なんの意味がない。しかし会社において最も大切な
利益を生むという考えが欠落した
会社ごっこ・組織ごっこ・人材育成ごっこを進めるなか、コロナ禍となってテレワーク・リモート・オンラインという時空間の構造変化に伴い、価値観が変わり、Well‐Being(佳く生きる)を求めるようになった。それは佳き価値観への変化であり、悪いことではない
しかし、このWell‐Beingには、3つの条件がある。
まず第1条件は「自己選択」できること、第2条件は「自己決定」できること。その自分が決めた事柄に対して、第3の条件がある
自己責任・結果責任を持つこと
それが欠けている
業績が悪くなったら、その原因を社会・市場のせいにしたり、国の責任にしたりという空気が強くなっている。自らの業績を国や社会や市場のせいにするが、自己責任・結果責任を持たないといけない
3 現在を現在価値で生き残る
世界情勢が見えない、日本の先行きが見えないというが、それよりも
会社経営システム、オペレーションの
機能不全が激しい
一方、空前の円安、株高で、業績がいい会社もある。しかし人手が不足しているので、リクルート対策として、オフイスを移転したり、社員食堂を充実させたりする
たとえばこれまでの12時から1時まで1時間で昼食をとるという社員食堂をカフェテリアにして、コミュニケーションやランチミーティングしょうといっている。さらにリフレッシュルームや瞑想ルームなども作って、それが働き方改革だといっている。それで利益がでたらたいしたものだが
そんなもので、利益はでない
日本の企業がベンチマークするのは、アメリカのシリコンバレーの会社。カフェテリアやサロンやコミュニケーションルームやパーティールームが会社のなかにいっぱいあり、サロンで寝転がって寛いだり、ベットと一緒に仕事しているシリコンバレーのオフイスのシーンを見て、日本人は
イノベーションにはこんな空間が必要だ
そんな雰囲気を志向する
そんな空間でイノベーションが生まれる訳ではない。すごいアイデアや着想や発明が生まれているのは、飛び抜けた優秀な人材たちがシリコンバレーに集まってくるからである。天才級のスーパーエリートたちがぞろぞろいて、彼らが中心になって、すごいモノやコトを生みつづけている
利益を生んでいるからできること
日本は、シリコンバレーのサロンやパーティールームなど雰囲気や表面的なワークスタイルを真似しているが、その本質が理解できていない
アメリカや中国も、スーパーエリートが
引っ張っているのが現実
日本の人材が不足している
人材がミスマッチしている
なにがミスマッチしているのか?
30年ぐらい前に会社に入り、その会社の流儀・しきたりに過剰適合して、社内文化に耐えてきた人が、今の会社の経営者になっている
その経営者が社員を学び直しさせると言っているけど、そういう経営者たちこそ学び直すべきである。いや経営者は機能不全となっているならば、学び直すよりも、後任に席を譲るべきである
会社は過去に生きている訳ではない。未来に生きている訳ではない。
彼・彼女は昔、頑張っていた。彼・彼女は将来戦力になる。そりゃ、そうだろうが
会社は過去でも未来ではなく
現在を生きている
だから会社が現在を生きるためには、現在価値のある人が必要である。昔の名前で出ていますというような人も、未来に頑張るだろうという人も組織には必要だが
現在の会社を守り育てる人材が
いなければいけない
その人材が足りなければ、外からできる人材をそれ相応の報酬を払って雇うべきである。学び直しをして育つまでの余裕はない
そうすると、冒頭の5年前の「誰からリストラするのか」の女子大生たちが導いた答えは本質をついている。優秀な人を残して、優秀な人材を外から呼んでこないと、できない人の学び直しにばかり頼っていたら、会社はもたない
日本には、そんな持ち時間はないはず
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?