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「再エネ普及のために消費者は何ができるのか?」の答えは 「コスト負担です」という話



皆さんがしている再エネへの応援

「再エネ普及のために消費者ができることは何か?」と問われることが多くあります。
直接的で確実なのは、ご自身のお住まいに太陽光発電を導入することでしょう。しかしこれができる方は限られています。そうなると、できることとしては、再エネを応援するコストを負担するということに尽きます。
そしてその点でいえば日本の電力ユーザーはすべて、再エネに対して相当の応援を既にしています。「私は何もしていないわ!」という方、ぜひ電気料金の検針票や領収書など普段チェックしてみてください。必ず「再エネ発電賦課金等」という一行が入っており、今年度でいえば、例えば1カ月の電力使用量が260kWhのユーザーの場合、負担額は年1万483円となる見込みです。(国民全体では、今年2兆7000億円程度)

電気料金と一緒に税金のようにとられるため、あまり意識されていませんが、この賦課金は、まさに再生可能エネルギーを応援するお金です。

仕組みを簡単に解説しましょう。
再生可能エネルギーへの投資を促すために、再エネ発電事業者さんが発電する電気は全量を固定の価格で20年間(家庭用の太陽光は10年)といった長期間買い取ることが、電気事業者には義務付けられています。
従来型の発電方法をうまく組み合わせて発電すると、例えばですが1kWhの電気を10円で発電できるとします。再エネはまだコストが高いので、太陽光発電でいえば制度開始当初、40円/kWhで20年間買い取ることになりました。太陽光パネルの価格下落などの状況に応じて、買取価格は毎年引き下げられますが、その再エネ発電事業が認定されたタイミングで買い取り価格は決まり、20年間固定です。
同じ電気という商品ですが、作り方によって原価が10円と40円のものがあり、40円の電気を全量買い取りなさいという制度です。

誰かがその差額(40-10=30円)を負担しなければなりません。それが「再エネ賦課金」であり、この30円で私たち消費者は再エネの環境価値を買い、そうやって環境価値にお金を払うことで再エネを応援しているわけです。再エネ賦課金は、小売事業者を経由して電気の消費者から回収され、再エネ事業者に支払われます。

図2

再エネ主力メニューを選ぶ

ただ、電気代と一緒に引き落とされる再エネ賦課金だけというのも再エネを応援している手ごたえがないという方もいるでしょう。そういう方には再生可能エネルギーの電気を主としたメニューを提供する事業者さんから電気を買うということも可能です。2016年に電力小売りが全面自由化された効果ですね。ただ、電気自体は物理的には電線の中で混ざるので自宅に届く電気が厳密に再エネで発電されているというわけではありません。この場合も基本的に、再エネを応援するコスト負担を許容するメニューを選ぶということになります。

なお、こうしたメニューを選ぶときにはぜひ「再エネを増やすことに実質的に貢献するメニュー」を選んでください。
実は先ほど「私たちが再エネ賦課金で環境価値を買っている」と書きました。
そうです。普通の電気よりもコストの高い再エネ導入のためにお金を出したのは私たち電力ユーザーなので、その再エネの環境価値(CO2を減らしたことの価値)は私たちのものです。
ではよくある再エネメニューはどうやって作られるのでしょうか?
「再エネ100%メニューのために、新たに再エネ発電所を作る」ということであれば、再エネ100%電気の調達が再エネ拡大に結び付くのですが、実はほとんどそうした再エネメニューはありません。
FIT買取期間が終わった安価な『卒FIT』電気を買い集めたり、非化石証書を購入するなどの手段でを買ってくるメニューがほとんどです。
FITの買取期間が終わり、安価に電気を提供してくれる再エネの電気は、それまで高い補助金を払ってきた消費者みんなが使いたいと考えています。
また、非化石証書とは、私たち電力ユーザーが再エネの応援のお金(賦課金)を支払ったことで手に入れた環境価値を有効活用するために作られた制度です。消費者は環境価値を持っていても仕方ありませんので、環境価値をブランディングに使いたい企業が買えるのは有効な制度です。但し、再生可能エネルギーを「増やす」ことや、CO2を「減らす」ことにも貢献しません。既に生み出された環境価値を取引しているだけです。

専門用語では「追加性がない」という言い方をしますが、これは「再エネを増やすという意義はない」ということです。これから再エネを増やすことに貢献したいという方には、メニューの中身や、売上の利用方法を必ず確認してください。

FIT電気とは何か、環境価値とは何か。とても複雑でわかりづらいので、消費者はもちろんですが、メディアや政治家の方も良く分かっておられないことがほとんどです。
細かいことを言わずに再エネを謳うメニューを選べばいいじゃない、再エネを応援するというムードに水を差さないで、という気持ちもわかります。ただ、追加性のない再エネメニューの方が安価なので、多くの消費者がそちらに流れてしまいがちです。そうなると再エネ開発にリスクをとって取り組む「ホンモノ」が市場から退出を余儀なくされることになりかねません
再エネの応援に選球眼とコスト負担を。



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温暖化・エネルギー政策の研究をしています。現実的な移行とサステナブルな未来を考えています。 国際環境経済研究所理事・主席研究員/筑波大学・関西大学客員教授/U3InnovationsLLC共同創業者・代表取締役。