
2020年の明るいニュース
世界がパンデミックに襲われ、公衆衛生と経済活動の両方が大きく損なわれた今年、果たして、明るいニュースはあったのか?確かに、一年前とは、景色が様変わりしてしまった。それでも、未来に希望を与えてくれる兆候はある。暗い一年だったからこそ、敢えてポジティブな3点を取り上げたい。
米国の民主主義が、踏みとどまった
全世界の注目を集めた米国大統領選が終わり、現大統領が敗北を認めないという異例の事態が起こった。しかし、先週、最高裁は、トランプ大統領が主張する激戦州の結果無効化にはくみしなかった。
いまだに暴動が起こっていることや、今回の選挙結果が示した米国社会の深い断絶は、バイデン政権の重い課題となる。しかし、パンデミックの最中、妨害を退けながら選挙が行われ、不正なく集計されたことは、米国の民主主義が、攻撃を受けながらも、機能し続けたことを示す。このこと自体は、祝福されるべきだと考える。
「半分水が入ったグラス」を「半分満たされた」と観るか、「半分なくなった」と悲観するか?この分かれ目で、本来の米国らしく、楽観主義を貫きたい。
ワクチンが迅速に開発された
先進国では、年内のワクチン接種が始まる。異例のスピードで開発され、認可されたワクチンは、高い効能を持つと言われている。通常は10年以上かかるとされる開発がこのような短期間で実現できたことは、驚異的だ。
今回のパンデミックでは、科学とエセ科学が錯綜したり、後になって科学的見解が書き換えられたり、庶民にとっては、何を信じていいのか迷うことが多かった。さらに、米国では、科学が政治に利用され、衛生の基本と言えるマスクすら、政治信条の諍いをあおる小道具となってしまった。
一方で、感染の早い段階からパンデミックが来ることを予見し、ワクチン開発に全力を尽くした科学者に敬意を表したい。その間、必死で医療体制を支える医療関係者への感謝を忘れてはならない。もちろん、輸送の課題や、どれだけの信頼を得られるか、ワクチン普及へ難題は残る。しかし、開発スピードと、年内接種開始は、科学の力を証明する明るいニュースに違いない。
グリーン革命が始まる
ESGやサステイナビリティ重視の流れは、2020年以前からあった。しかし、バイデン政権の誕生とともに、一気に加速することが明らかだ。日経が「グリーン地政学」と指摘するように、各国の利害がからみあう。
一方、企業活動においても、短期的な資本主義一辺倒からの卒業が本格化している。企業が環境やコミュニティに良い影響を及ぼすよう、本業の定義に立ち返り、ビジネスモデルを再設計する動きがある。
もちろん、この背景には、気候変動などのリスクがいよいよ差し迫っているという危機感がある。しかし、世の中の流れが「誰かがやってくれるから、恩恵をもらおう」から「みなで主体的に取り組もう」という心意気に変わったことは心強い。分岐となった2020年の意義があると言える。