セミナーレポート「『D2C "世界観"と"テクノロジー"で勝つブランド戦略』を考える」(Yappli主催リテールマーケティング Onlineセミナー)
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、日経主催で3月3日から開催予定の日経メッセ 街づくり・店づくり総合展が中止になりました。
リテールテックJAPAN枠で出展予定だったYappliさんが、3月3日より「リテールマーケティング Onlineセミナー」をFACEBOOK上で4日間に渡り開催しています。
オムニチャネル戦略や、これからのEC、小売の未来を語り合うセッションが盛りだくさん。企業のデジタル化を扱うテーマもあり、リテール業界に限らず、多くのデジタルトランスフォーメーションの壁にぶち当たっている人たちはぜひ見てほしいです。視聴URLはこちらから。
タイムテーブルはこちら↓のnoteをご覧ください。
日経COMEMOでは、いくつかのセッションをレポートしていきます。
このnoteでは、本日行われた「『D2C "世界観"と"テクノロジー"で勝つブランド戦略』を考える」のセッションをレポートします。
Yappliの金子さんをモデレーターに、講談社の碓氷早矢手さん、株式会社メディアインキュベート代表取締役の浜崎正己さんがゲスト登壇。
●碓氷早矢手(うすいはやて)
1995年講談社入社。広告営業、編集、販売、デジタル、生産管理、マーケティング、経営企画などを経験し、 現在は「ViVi」「with」「VOCE」「ミモレ」「FRaU」など、女性誌のブランドマネージャーを統括している。
●浜崎正己(はまさきまさき)
メディアの立ち上げと運用を支援するメディアインキュベートの代表取締役社長。メディアの成長を支援するメディアアクセラレータを運営している。
●金子洋平(かねこようへい)
株式会社ヤプリの執行役員CCO(Chief Communication Officer)兼エバンジェリスト
トークセッションのポイントを、ゲストの発言をメインに振り返ります。
D2Cの定義とは?
トークセッションは、ビジネスデザイナーとして活躍されている、佐々木康裕さんの著書『D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』を引用しながら進行。
日本では現在、バズワード的な扱いになっている言葉でもある「D2C」。まずはその定義からトークセッションがスタートしました。
ー浜崎さん
D2Cは、いろいろな言われ方をされていますが、私が一番「腑に落ちた」のは、実はD2Cは昔からあって「ユーザーと直接コミュニケーションをとって商品を作ったり届けたりすること」という説明でした。
ー碓氷さん
それぞれの好きに解釈すればいいと思いますが、「D2Cの波に乗っている」と言ったほうが、資本調達しやすい、いい人材を集めやすい、ということがあるので、自由な解釈で、使いたいタイミングで使えばいい言葉のような気もします。
D2Cは文字をそのまま解釈すると「コンシューマーとダイレクトにつながる」という意味ですが、先ほどの佐々木さんの本では、このように書かれています。
1.「ものづくり屋」ではなく、「テック企業」である
2.「間接販売」ではなく、「直接販売」する
3.「高価格化」ではなく、「低価格化」を志向する
4.「着実な成長」ではなく、「指数関数的成長」を遂げる
5.「プロダクト」ではなく、「ライフスタイル」を売る
6.「X世代以上」ではなく、「ミレニアル世代以下」をターゲットとする
7.「顧客」ではなく、「コミュニティ」として扱う
『D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』より
D2Cにとって重要な「世界観を伝えること」
ここで碓氷さんから、D2Cにとって最も重要だというキーワードが示されました。
「モノからコト」から「コト付きのモノ」へ
ー碓氷さん
「モノからコト」と言われ続けてきましたが、今のD2Cブランドは、売っているのは「モノ」ですが、それとセットになっている体験や裏側にある世界観がとても重要です。「ブランド」とひと言で言っても、それがどう定義されているものなのかは、なかなか伝わらないものです。実際の商業活動の結果「溜まっていく」ようなもので、一貫した体験を提供できているかどうかが非常に大きい。
ここで「体験」の例として、実際に碓氷さんがApple製品を購入したときの話を紹介。
Apple製品は、全国どこで買っても同じ値段で、均一のサービスが提供されています。しかし、日本の他のブランドなどは、価格もサービスも均一化されていません。選ぶほうもそれを負担に感じる。
理念の共有と会社の規模
均一のサービスを提供できたり、フットワークを軽くして事業を回せたり、そのためにはそれ以前の問題として「理念の共有」が必要だという話に。
ー碓氷さん
D2Cのこれからの課題の1つに「規模化」があると思います。従業員数が10人程度のうちは、「理念の共有」はそれほど難しいことではありません。しかし、100人を超えるくらいになると、だいぶ変わってくるのではないでしょうか。
ー金子さん
僕が入社したときは、従業員も10名程度で、例えば社長との距離も今よりずっと近い感じでした。でも、従業員が170名まで増えて規模が大きくなって、今から入社してくる人たちは、「急成長のメガベンチャーに入る」という意識があるかもしれません。そうなると、創業期からいるメンバーとの意識に差が出てしまうことは仕方がないような気もします。
D2Cにとって大事なことが「世界観」ならば、一貫したサービスを作り上げるためには、規模が拡大してそれが難しくなるための対策が必要になります。
ー碓氷さん
D2Cを拡大していこうとすると、一貫性を担保するために、製品作りだけではなく、プロモーションや店舗の運営など、バラエティ豊かな人材が必要になります。IT企業では、エンジニアを中心に、人材のバラエティがそれほどなくてもなんとかなる場合が多いのですが、ものづくりになるとなかなかそうはいきません。いろいろなことができるいろいろな人がいなければいけないので、そういう状態のまま規模化していくことは難しい。
ここで視聴者から質問。
D2Cブランドを50個から100個束ねる企業は、登場すると思いますか?
ー碓氷さん
出てくると思います。1つのカテゴリーで規模化していくよりも、複数の小さいブラント、例えば年間の売り上げが10〜20億円くらいのものを5個もっている企業が、勝ち上がれるということはある。その横展開のほうが、1つのブランドで100億円や200億円を目指すよりも、可能性があります。
リテールテックとメディアについて
雑誌の相対的な売り上げは落ちているものの、「ライフスタイル誌」に関しては、最近でもいろいろな雑誌が発売されています。リテールに関しては、雑誌の価値がまだまだ高いというお話に展開。
ー浜崎さん
メディアの価値を考えたとき、雑誌はブランドの世界観を作るのに向いている。リアルイベントもやっているので、具体的な顔が見えやすく、商品作りもしやすい。僕はメディアの1つの未来として、希望をもって見ています。メディアがプロダクトの一部を作っていくべきではないかと。
ー碓氷さん
講談社でも以前、雑誌の名前を冠した化粧品グッズを作ったことがありました。監修みたいな感じですよね。そういうお話をいただくことは、度々あります。
ここでまた、視聴者から質問。
ブランド切り口の「小雑誌」などはアリなんじゃないかと思うのですが、どう思われますか?
ー碓氷さん
あり得ると思います。実際に、1冊丸ごと協賛するようなものもあります。雑誌のテーマなどに合わせて協賛することで、自社の活動を表現したいというブランドは多い。そういった、雑誌への協賛の形が変わってきた感じはすごくあります。
さらに、ブランド自身が作ったものは、お客さんからは「カタログ」と受け止められてしまうが、雑誌に掲載された情報にはまだまだ価値がある、と碓氷さんは言います。
ー碓氷さん
おもしろいなと思うのは、アパレルに限らず飲食店なども、ネットにこれだけの情報があふれているのにもかかわらず、雑誌に掲載されたページに付箋を貼って、店頭に置いてますよね。つまり、雑誌のお墨付きに対して、価値を感じています。
まとめ
最後にお2人からまとめのコメント。
ー碓氷さん
今日の話をまとめると、まずD2Cでは、「お客さんと直接つながっている」ことと「世界観をもっている」ことが大切です。そして、必ずしもハイエンドな商品ではないものを、お客さんと直接つながることで適正価格にする。そういうことを戦略としてやる必要があります。
ー浜崎さん
起業してから僕がずっと言ってきたことなのですが、「全部をメディア化していく」こと。メディアは、僕の定義では「媒介としてつなぐ」もので、垣根がなくなり、その中にあるものがどんどんつながっていくようなイメージ。顧客とのダイレクトな関係が、ゆるやかに結ばれていき、真の意味で「D2C化」していくのではないかと。
セッションはこれで終了です。タイムテーブルは↓をチェックしてください。
オンラインセミナータイムテーブル
3月3日(火)
14:30〜 「ウォークスルー決済とカート付きレジゴー(スキャン&ゴー)」
店舗のICT活用研究所 郡司昇 イオンドットコム株式会社 安岡智史
3月4日(水)
11:00〜 「Post 2020 のEC&顧客体験を語る」株式会社フラクタ 河野貴伸
12:00〜 「実践!オムニチャネル戦略入門」 株式会社ビジョナリーホールディングス 執行役員デジタルエクスペリエンス事業本部本部長 ECエバンジェリスト 川添隆
青山商事株式会社 リブランディング推進室 室長補佐 藤原 尚也
13:00〜 リテールネクスト 広報・マーケ 立松紘子 x 元 某コスメブランド 担当者 山下さん
「シリコンバレー発 リテールテック企業 RetailNext ~実店舗 が これからのブランドを育てる。- EC と 実店舗 の 同じKPI化 の 重要性 - 」
14:00〜 株式会社COUNTERWORKS 竹信瑞基
「AIカメラやWiFi/beaconの行動分析ってぶっちゃけどうなの?利用者が語るリアル店舗におけるデータ活用入門」
15:00〜 株式会社ドリーム・アーツ (「Shopらん」)平井里佳
リアル店舗における「本部施策の徹底」と「現場の声の活かし方」
16:00〜 「リテールとソーシャルメディア」
アジャイルメディアネットワーク アンバサダー/ブロガー/noteプロデューサー 徳力 基彦
3月5日(木)
12:00-13:00 「アフターコロナのリテールマーケティングのヒントはライブにあり!(仮)」BBF安住祐一 /パルコデジタルマーケティング唐笠亮/インフォバーン田中準也/インフォバーン木村啓一郎
13:00〜 リテールネクスト 広報・マーケ 立松紘子 x 元 某コスメブランド 担当者 山下さん
「シリコンバレー発 リテールテック企業 RetailNext D2Cリアル店舗 や モール(ヤカタビジネス)の アナリティクス&インテリジェンスの重要性とは?- 世界・日本でも始まり始めた 新たな小売のカタチ -」
14:00〜 株式会社ダブルノット高林努「年商2000万円を目指す地方のECサイトの戦略(仮)」
14:30〜 講談社 碓氷早矢 x 株式会社メディアインキュベート 代表取締役 浜崎正己「『D2C "世界観"と"テクノロジー"で勝つブランド戦略』を考える」
16:00〜 株式会社サトー 平田和也 「次世代RFIDで世界が変わる バッテリーレスセンサータグを日本初披露!」
3月6日(金)
11:00〜 「外食産業の今」福崎俊章
14:00〜 Wrap-upセッション 振り返りまとめ・振り返り ヤプリ 金子・原田・島袋 (予定)
視聴URLはこちらから。