見出し画像

ポストコロナで再編されるアパレル業界とドンキホーテの台頭

新型コロナの流行が、消費者の買い物スタイルを変化が変化してることは間違いないが、パンデミック以降に業績を伸ばしているのが、ディカウントショップ「ドンキホーテ」のような業態である。ドンキホーテの親会社、パン・パシフィック・インターナショナル(7532)は、2020年6月期の売上高が前年比で126%、営業利益でも120%の好成績を挙げている。小売業全体ランキングでも、イオン、セブンイレブン、ファーストリテイリング(ユニクロ)に次いで、国内4位にまで伸びてきているのだ。

画像1

ドンキホーテ躍進の象徴的な事業といえるのが、2020年3月から展開しはじめている「オフプライスストア(オフプラ)」という新業態の店舗で、オフプラ第1号店は、都会からは外れた愛知県郊外の丹羽郡大口町にある。

オフプラのコンセプトは、有名アパレルブランドが過剰在庫として抱えている商品を安値で買い取り、正規流通よりも40~70%OFFの激安価格で販売するもの。このやり方は、バブル景気の崩壊期(1990年代)にも活況だったバッタ屋商法と同じビジネスモデルだ。経済の低迷期には大量の売れ残り在庫が放出されるため、それを上手に買い取れば、消費者から支持される激安販売が可能になる。

オフプライスストア(オフプラ)/ドンキホーテ

画像2

アパレル業界では、百貨店で販売される高級ブランドに代わって、最新の流行を取り入れながら低価格の商品を開発、短期のサイクルで販売する「ファストファッション」が2000年頃から台頭した。ファストファッションは、人件費の安い新興国で商品を大量生産することで、安い価格を実現させているのが特徴だが、売れ残りが生じると不良在庫を抱えてしまう欠点がある。

これらの売れ残り在庫は、何らかの方法で捌かなくてはいけないが、そのルートとして、米国では「Off-price store(オフプライスストア)」の業態が10年程前から流行り始めており、2018年の時点で6,000件を超すオフプライスストアがあると言われている。若い消費者の中では、これらのオフプライスストアを訪れて、アパレル、靴、バッグなど一点モノのお買い得商品を探すことが「トレジャーハント」として人気化している。

同様のビジネスは、米国の「thredUP」がeコマース事業として展開しているが、こちらもパンデミック以降の売上を伸ばしている。thredUPは、百貨店やファストファッションブランドが顧客から返品された新品同様の古着を安値で買い取り、定価と比べて50%~最大90%の激安価格で販売している。サイト上には、お買い得な服が毎日追加されるため、消費者がスマホで新着商品をチェックすることが、新たな買い物スタイルになっている。

thredUPがコロナ禍で発表したアパレル再販市場のレポート「2020 Resale Report」によると、消費者はコロナ危機により、アウトレット品や中古品(古着)への抵抗感が低くなり、アパレルの再販市場規模は、2019年の280億ドルから2024年には640億ドルに成長すると予測している。

画像3

Z世代に該当する24歳未満の若い消費者ほど、古着に対する抵抗感は無く、古着のコーディネートでファッションを楽しむことは、環境問題にも貢献できると考えている。同調査によると、18歳以上で古着を購入した経験のある女性は、2016年に45%だったが、2019年には70%にまで伸びている。

これら消費者の中で起きているのが、「スローファッション」という新たなトレンドで、無駄な服はできるだけ持たずに、気に入った服をできるだけ長く愛用するという価値観だ。そのためには、流行サイクルが早いブランドよりも、持続性が高い素材やデザインの服が好まれるようになっている。これは、大量の服が毎年使い捨てられていることへの反省でもあり、アパレルメーカーにとっても、従来のビジネスモデルを転換する必要性に迫られている。

■関連情報
ネット直販(D2C型)で展開される新興アパレルブランド
返品商品が清算されるアパレル業界の再流通ビジネス
原価率を公開するアパレルメーカーのブランド構築
スモール起業に適したヴィンテージアパレルの発掘

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を専門に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。また、JNEWS会員読者には、コロナ禍での副業の立ち上げ、経営者の事業転換や新規事業立ち上げなどの相談サポートも行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?