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今治タオル騒動は、このままいくと必ず再発する

A「ノルマをこなすために大わらわなんだ。夏の怪物騒ぎで作業が大幅に遅れてるし・・・。」

B「よくまあ行政指導とか入らないね。あたしが警備員やってた頃はも少し余裕があったと思うけどなあ。」

外国人労働者「ハイ」(通りすがりに挨拶する)

A「ハイ」(挨拶を返す)

A「人手がね、アットーテキに足りねえのよ。せっかく仕事に慣れてきた外国人クビにしちゃったりするんだもの。」

B「なんで?」

A「知るかい。外国人が嫌いなんだろう。」

B「だれが?」

A「日本が・・・かな?」

『機動警察パトレイバー 第12巻 第13話レイバーの憂鬱<その2>』より


外国人実習生の問題で今治タオルが取り上げられた時、1991年に刊行された上記漫画のやり取りを思い出した。漫画では5つの主題に焦点を当てられているが、約30年前に指摘されている社会問題は、21世紀の現代においても1つも解決していない。


【主題となっている5つの社会問題】

①『ロボットによる労働者の削減』

②『外国人労働者の劣悪な労働環境と迫害』

③『合理化を推し進めた結果の現場の人手不足とそれによる不祥事』

④『無理やりな合理化で現場や中小の下請け企業の圧迫』

➄『組織の理屈ばかり重視する経営者』

列記して改めて見てみると、解決していないどころか、より複雑化して悪化している感すらある。


今治タオルの騒動は、非常に複雑に構造が入り組んだ問題だ。問題が起きたのは、今治タオルの下請け工場であり、今治タオル工業組合の組合員ではない。そのため、マネジメントが利きにくい状況であり、ベトナム人技能実習生の実態を今治タオル工業組合が把握していなかったというのも事実だろう。しかし、下請けだからといって、責任を取らなくても良いという話ではない。また、この手の企業の社会的責任と倫理観に関連した問題は、担当者や問題のある部署・事業会社だけに原因が起因することが少なく、組織や産業構造に課題があることが多い。そのため、ほとぼりが冷めたころに再発する。

私が大学院生時代に受けた講義で、現同志社大学の藏本 一也教授が「不祥事が出た時に、ビジネスや会社の在り方そのものを変えないと意味がない。不祥事が起きた企業は絶対に再発する。」とおっしゃっていたのを覚えている。その講義では三菱自動車の事例を取り上げていたが、残念ながら今治タオルも今回で2回目の事件だ。

10年前にも、今治タオル工業組合の下請け企業が外国人技能実習生を奴隷のように扱っている。その内容は、教養のある現在人が同じ人間にやって良いことではない。倫理観が、大航海時代にレジャーとして黒人奴隷を撃ち殺していた海賊たちと同じレベルだ。

2008年の事件では、タオル製造会社経営者が、中国人研修生3人に賃金を払わなかったことが起因となっている。未払い分の賃金を払うよう今治労働基準署から是正勧告を受け、3人に「約100万円ずつ支払う」と約束したにもかからわず、賃金が支払われることはなかった。同社は、あろうことか3人を中国・大連の空港まで連れて行ったが、そこで金を払わずに置き去りにした。3人は船で出身地の青島(チンタオ)や威海(ウェイハイ)に帰郷している。この問題を起こした会社は、現在も問題を起こした当時と同じ社長が経営を継続し、現在でも今治タオルの製造を請け負っている。

10年前の時と同じような対応しか、今治タオル工業組合がしないのであれば、同じような問題は必ず再発するだろう。これは今治タオルの問題だけではない。日本企業全体として、マネジメントレベルが世界基準に達していない、信用ならない国であると宣伝しているようなものだ。


後藤「子供の夢ってさあ。基本的には「運転手さん」になりたいんだよな。そういうのが、資本家の夢とだんだんかみ合わなくなってくんだ。」

南雲「資本家の夢ってなあに?」

後藤「給料のいらない従業員。」


先の漫画の別場面だ。

いい加減、経営者が「資本家の夢」から醒めないかぎりは、外国人技能実習生の問題は解決しないし、留学生も国内就職しないだろう。ましてや、高度な専門性を有した外国人人材が日本を選ぶことはない。組織の経営や運営に携わる人は、肝に銘じるべきである。


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碇 邦生(大分大学)

大分大学経済学部の講師(人的資源管理論)をしています。採用や育成などのタレントマネジメント、地方創生・地方発ベンチャーなどの話題を中心に取り上げていきます。自動車メーカーやシンクタンクを経て、30代で大学教員とジョブホッパーです。 ※日経のキーオピニオンリーダーに選出されました。

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